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2016.03.17 ロードレース世界選手権 開幕戦 カタール カタールGP プレビュー

カタールGP プレビュー

会場:ロサイル・インターナショナル・サーキット 全長:5.380km
決勝:[MotoGP]22Laps [Moto2]20Laps [Moto3]18Laps

ロードレース世界選手権(WGP)開幕戦カタールGPが、3月17日(木)にドーハ郊外のロサイル・インターナショナル・サーキットにて開幕します。カタールGPは、2004年に第1回大会が行われました。その後、08年にはグランプリ史上初のナイトレースが開催され、世界的に大きなニュースになりました。カタールGPは、今年で13度目。ナイトレースとしては9度目の開催となります。

カタールGPは、フリー走行、予選、決勝日と、日没時間に合わせて午後6時からセッションが開始されます。しかし、3日間開催では走行セッションが深夜に及ぶため、11年以降は、ライダーやスタッフの体力的な負担を軽減するために4日間開催となりました。

今年は2月に公式テストがスタートしました。2月は、マレーシア・セパンとオーストラリア・フィリップアイランド、3月上旬には開幕戦カタールGPの舞台となるロサイルで行われました。

MotoGPクラスは、14年に共通ECU(エンジン・コントロールユニット)のハードウエアが採用されました。今年からはソフトウエアも共通となります。そのため、独自ソフトウエアを使用する「ファクトリー」と、共通ソフトウエアを使用する「オープン」に分けられていたカテゴリー分けは今年からなくなり、燃料タンクの容量(22L)、使用できるタイヤなど、全車共通となります。

Hondaは、Repsol Honda Teamからマルク・マルケスとダニ・ペドロサ、LCR Hondaからカル・クラッチロー、Estrella Galicia 0,0 Marc VDSからジャック・ミラーとティト・ラバトの3チーム5台が参加します。

今年のウインターテストは、マニエッティ・マレリ製の共通ソフトウエアで走行を開始しました。加えて、ブリヂストンからミシュランへとタイヤが変更されたことで、多くのテストメニューが待ち受けることになりました。

13年に史上最年少記録を次々に樹立し、最高峰クラスのチャンピオンに輝いたマルケスは、14年にはシーズン最多優勝記録となる13勝を挙げて2連覇を達成しました。昨年は、シーズン前半に思うような走りができず苦戦しました。しかし、後半戦は調子を取り戻し、最終的に5勝を挙げて総合3位につけました。今年は2年ぶり3度目のタイトル獲得に向けて、全9日間に及んだウインターテストでは最多周回数を刻み、2016年型「RC213V」のポテンシャルを引き出すことに取り組みました。

オーストラリア・フィリップアイランドではトップタイムをマーク。開幕戦に向けて最後の調整の場となるカタール・ロサイルでは総合4番手。マルケスにとっては完ぺきとはいえませんが、開幕戦に向けて大きく前進しました。限られた時間の中でのセットアップ。ライバルメーカーがマニエッティ・マレリ製のソフトウエアを知り尽くしているだけに、Honda勢のウインターテストは、そのソフトウエアでパフォーマンスを引き出すための学習時間となりましたが、カタールGPでは2年ぶりの開幕戦勝利を目標に全力で挑みます。

Repsol Honda Teamで11年目のシーズンを迎えるペドロサも、ウインターテストはソフトウエアとミシュランタイヤのパフォーマンスを引き出す作業に集中しました。昨年は、持病である右腕の手術のためシーズン前半に欠場するなど厳しいシーズンのスタートとなりましたが、シーズン終盤は2勝を挙げて総合4位へとランキングを上げました。今年は、念願のタイトル獲得に向けて闘志満々。マルケスとともにチャンピオン獲得に期待が寄せられています。

LCR Hondaで2年目のシーズンを迎えるクラッチローは、Repsol Honda Teamの2人と同じスペックのマシンでウインターテストに挑みました。マレーシアテストでは総合6番手、オーストラリアテストでは総合3番手、カタールテストでは総合7番手とHonda勢ではマルケスに続く結果を残しました。昨年は第3戦に3位表彰台を獲得するなど活躍し、総合8位。2年目の今年はMotoGP初優勝とチャンピオン争いを目指します。

MotoGPで2年目のシーズンを迎えるミラーは、LCR HondaからEstrella Galicia 0,0 Marc VDSへと移籍しました。新規一転で挑むシーズン。今年は開幕前のモトクロストレーニングで右足を負傷、マレーシアテストをキャンセルしなければならず、オーストラリアとカタールのテストも完調ではありませんでしたが、足の回復につれて元気ある走りをみせてくれるに違いありません。

チームメートでMotoGPルーキーのラバトは、全9日間のテストでマルケスに次ぐ周回数を刻みました。MotoGPマシンに慣れることを最大の目標に、ウインターテストに取り組みました。おととしのMoto2チャンピオンで昨年総合3位のラバトは、デビューシーズンに向けて気合満点です。ミラーとともに、Estrella Galicia 0,0 Marc VDSの2人の若いライダーに熱い視線が集まっています。

CBR600RRのHondaエンジンを搭載して行われるMoto2クラスは、今年も戦いが白熱することが予想されます。その中で最も注目を集めているのが2年連続チャンピオンを目指すヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)と昨年総合2位のアレックス・リンス(Paginas Amarillas HP 40)です。そしてウインターテストで好調だった、昨年総合4位のサム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)と総合6位のジョナス・フォルガー(Dynavolt Intact GP)も注目されています。

Moto2クラスで5年目のシーズンを迎える中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)もテストで好調な走りをみせました。スペイン・ヘレスではトップタイム争いに加わり、開幕直前のロサイル・カタールでも上位3選手とトップタイムを争いました。ヘレス、ロサイルともに自己ベストを更新しているだけに、開幕戦から表彰台が期待されています。中上のチームメートとしては、ラタパーク・ウィライローが参戦します。

Moto3クラスは、おととしのアレックス・マルケス(Estrella Galicia 0,0)、昨年のダニー・ケント(LEOPARD Racing)に続き、3年連続でのタイトル獲得が期待されます。アレックス・マルケスは昨年からMoto2クラスに参戦、ケントも今季はMoto2クラスに昇格していますので、それに続くルーキーの戦いに注目されます。

昨年、総合3位のエネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)、総合5位のニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)、総合7位のホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)、そして総合16位のリビオ・ロイ(RW Racing GP BV)がウインターテストで好走をみせました。

また、Moto3クラスでは新チームのHonda Team Asiaから尾野弘樹とカイルール・イダム・パウィが参戦します。ウインターテストでは、マシンのセットアップに多くの時間を費やしました。2年目の尾野とルーキーのパウィには、初表彰台と初優勝の期待がされます。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP)
「新しいシーズンがついにスタートしようとしています。とても楽しみです。2週間前に行われたテストでは、最後にセットアップを大きく前進させることができました。特に最後のスティントでは、夜も遅く露も落ち始めていましたが、マシンはとても快適でした。レースを想定すればポジティブなことでした。まだ思っている状態には達していませんが、セットアップはまだ改善の余地があります。ロサイルのレイアウトは僕たちのマシンと相性がいいとは言えないかもしれませんが、過去にRC213Vで表彰台に立ち、優勝を飾ったことがあります。そのため、日曜日は最善の結果が出せるように戦います。今年はレースディスタンスにおけるタイヤのパフォーマンスや、新しい電子制御に対するマシンの反応など予想できないことがいくつかありますが、Hondaも僕も、そしてチームも一生懸命取り組み続けます。シーズンがスタートするのがとても楽しみです」

ダニ・ペドロサ(MotoGP)
「ポジティブな気分でカタールへ向かうことができます。テストは完全に満足のいくものとは言えませんでしたが、電子制御において前進することができました。シャシーのセットアップとタイヤに関しては、さらなる改善が必要です。テストに比べて今週末はうまくいくことを願っています。まだ思っていたところに達していませんが、ポジティブな気持ちで開幕戦を迎えられるのは大事なことです。今年はいろいろな変更があります。これまでに比べたら、少なくとも最初は、パフォーマンスをうまくバランスさせることが重要だと思います。ロサイルはあまり得意なサーキットではありませんが、これまでに5度表彰台に上がったことがあるので、集中力を維持し、マシンのセットアップを進め、この状況から最大限の力を発揮できるようにがんばります」

カル・クラッチロー(MotoGP)
「カタールの最終テストは悪くありませんでした。しばらく壁にぶつかりましたが、3日間を通じて、チームはとてもいい仕事をしてくれました。そして、少し進むべき道が見えてきました。フィリップアイランドのテストは結構うまくいきました。ミシュランのタイヤ、そして新しい電子制御のパッケージに、いい意味で驚きました。そういう点では、開幕戦に向けて準備は整っています。新しいシーズンをスタートさせるのがとても楽しみです」

ジャック・ミラー(MotoGP)
「カタールテストのデータを検証する時間があったので、今週の開幕戦ではマシンのどこを改善する必要があるのかが分かりました。また、カタールテストを終えてから、足首のリハビリの時間があったので、今はさらに動きやすくなりました。1週間トレーニングをきっちり行ったので、調子はとてもいいです。新しいシーズンのスタートがとても楽しみです」

ティト・ラバト(MotoGP)
「カタールのテスト最終日はあまりうまくいきませんでした。転倒が多く、マシンの信頼性も欠けていました。そこでデータを検証することに時間を費やしました。改善できる部分を特定できたと思います。これはポジティブなことです。自分自身は強さを感じていますし、シーズンをスタートする準備もできています。プラクティスセッションと予選セッションでライダーがコース上にたくさんいるときに、さらに学んでいける自信があります。開幕戦の目標はすべてのセッションで前進し、日曜日のレースで最高の走りをすることです」

Moto2 コメント

ヨハン・ザルコ(Moto2)
「新しいMoto2クラスのシーズンが始まるのがとても楽しみです。今年は自分にとって全く違うシーズンとなります。全員が開幕戦に向けて準備が整っていると思います。再びタイトルを獲得することはとても難しいことです。一度タイトルを獲得すると、また獲得したくなります。またチャンピオンを手にしたいというモチベーションは、とても上がっています。それを達成することができれば、将来、さらに強くなれると思います。その将来とはMotoGPのことです。Moto2クラスのトップライダーにチャレンジすることを楽しみにしています」

アレックス・リンス(Moto2)
「チームと、チームのパートナーであるオーリンズ、そしてカレックスをとても誇りに思っています。最後のカタールテストだけではなく、ヘレスでも多くのパーツをテストすることができ、すばらしい仕事をすることができました。調子はいいです。最初のレースウイークに向けて準備は整っています。ここまで、いいペースがあります。さらに前進できるよう、フリー走行でもこの調子でがんばります。シーズンが始まるのがとても楽しみです」

ジョナス・フォルガー(Moto2)
「カタールテストでの力強いパフォーマンスに非常に満足しています。またチームの仕事にも非常に満足しています。すべてのセッションでとても速く走ることができました。そのことはパッケージがとても高いレベルに達しているということを証明しています。もちろん開幕戦に向けて最後のテストでトップタイムをマークできれば、さらによかったと思いますが、主に安定性に焦点を当ててきました。おかげで、とてもいい仕事をすることができました。自信を持ってチャンピオンシップをスタートさせるためには非常に重要なことです。今週末の開幕戦ではこの調子で仕事を続けられることを願っています」

中上貴晶(Moto2)
「スペインのヘレス、そしてカタールのロサイルと、これまでにない内容でテストを消化することができたと思います。ヘレスでもロサイルでも自己ベストを更新できました。スタッフとのコミュニケーションもうまくいっています。今年は開幕戦でいい結果を残し、波に乗りたいです。ウインターテストの成果を発揮できれば、結果はついてくると信じています」

Moto3 コメント

エネア・バスティアニーニ(Moto3)
「今年も強いライバルがたくさんいます。そのライバルたちとの戦いは容易ではありません。しかし、ウインターテストはとても順調でした。マシンのセットアップも進み、とても快適に乗ることができました。ベストタイムだけではなく、レースシミュレーションのペースにも満足しています。シーズンに向けてすべて準備は整っています。あとは開幕を待つばかりです」

ニッコロ・アントネッリ(Moto3)
「新しいシーズンが始まるのがとても楽しみです。最後のテストでは初日のセットアップに戻したことでタイムが上がりました。スピードは重要ですが、それよりもマシンのいい感触が見つけられたことが、とてもうれしいです。マシンは快適です。日曜日はいい結果で終わりたいです」

ホルヘ・ナバロ(Moto3)
「とてもいいプレシーズンだったので、シーズン開幕戦のカタールに向けて、いいぺースがあると思います。そして強さもあります。バレンシア、ヘレス、そしてカタールでは上位に入ることができました。しかし最も大事なことは、テストで必要なデータをすべて集めることができたことです。いい形で仕事を終えることができました。自分のライディングスタイルも、マシンのセットアップも改善することができたと思います」

リビオ・ロイ(Moto3)
「これほどまでに強さを感じたことはありません。最後のテストでは自己ファステストを出すことができました。今週末のグランプリへ向けて大きな自信になりました。チームを誇りに思いますし、チームも僕を誇りに思ってくれています。ペースもリズムも感触も、とてもいいです」

尾野弘樹(Moto3)
「スペイン・ヘレスでは、フロントのフィーリングが完ぺきではなく、思うように走ることができませんでした。転倒もあり、満足のいく内容ではありませんでした。カタールでは、フロントのフィーリングは改善されたのですが、今度はコーナーの立ち上がりでグリップせず苦労しました。満足いく内容ではありませんでしたが、ほかのHondaライダーのデータを参考に、最終的にはいい方向に向かったと思います。開幕戦では、ウインターテストの課題を解消して、ベストな状態で決勝に挑みたいです」