2016.09.04  トライアル世界選手権 最終戦 イタリア イタリア

ボウ、ついに前人未踏のシリーズ10連覇。大偉業を達成

2016年9月3日(土)・決勝1日目  9月4日(日)・決勝2日目
会場:キアンポ  気温:32℃  観客:1万人
決勝1日目「トニー・ボウ、20個目のタイトルを獲得」

トニー・ボウ(Repsol Honda Team)が、自身20個目のタイトルを獲得しました。10個はインドアのタイトルで、そして今回、10個目のアウトドアタイトルを獲得。合計20個の世界選手権タイトルの大記録は、トニー・ボウにしか達成できないすばらしいものとなりました。

トニー・ボウ(中央)トニー・ボウ(中央)

トニー・ボウ(中央)トニー・ボウ(中央)

山の上に11個のセクションが設定され、スタート地点には第1セクション。合わせて12セクションを3ラップする戦いは、いつにもまして難しいものとされていました。しかしボウは、減点らしい減点をしません。圧巻だったのは第9セクション。ボウ以外の誰もが挑戦をあきらめ、5点のパンチだけもらって先を急ぐ中、ボウだけがトライして、1点2回、クリーン1回のすばらしいスコアを叩き出します。あわせて13点の減点は、2位のアダム・ラガ(TRS)に43点差。圧倒的な勝利でした。

トニー・ボウトニー・ボウ

トニー・ボウトニー・ボウ

6週間前に手首を骨折し、手術をして今大会に臨んだ藤波貴久(Repsol Honda Team)は、やはり手首の痛みに苦しみます。久々に目の前に見えてきたランキング3位。ライバルのアルベルト・カベスタニー(シェルコ)にはポイントで14点差をつけているのですが、必ずしも安全な点差とはいえません。

ハイメ・ブスト(Repsol Honda Team)は、ランキング5位争いの渦中にありました。しかしライバルのジェロニ・ファハルド(ヴェルティゴ)が表彰台に乗り、対してブストは5位。その差を4点縮められて、1点差まで詰め寄られてしまいます。

ハイメ・ブストハイメ・ブスト

藤波貴久藤波貴久

藤波は6位となり、内容的には不満の多いものとなりましたが、ライバルのカベスタニーは4位。その差を3点だけ縮められたにとどまりました。あと1戦、望みはつながりました。

ボウがタイトルを獲得した歓喜の反面、チームメートの2人は翌日の戦いに思いを巡らせていました。

決勝2日目「トニー・ボウ、最終戦を勝利で締めくくる」

明けて日曜日。土曜日同様、暑い一日となりました。

トニー・ボウは、第2セクションで5点となり、土曜日とは異なる展開で試合をスタートさせました。アダム・ラガ追撃を期します。

トニー・ボウトニー・ボウ

トニー・ボウトニー・ボウ

1ラップ目は一進一退。ラガとの今季のタイトル争いを再現するような、好勝負が続きます。この戦いに決着をつけたのは、チャンピオンを決めたボウでした。2ラップ目、ボウは8点で12セクションを走りきり、ラガとのリードを広げることに成功しました。

このまま試合は進み、ボウは今シーズン12勝目を挙げ、土曜日に獲得した2016年チャンピオンに華を添える形でシーズンを終えました。

トニー・ボウトニー・ボウ

トニー・ボウトニー・ボウ

チームメートの藤波貴久は、この日が最終決戦でした。ランキングポイント11点差で迎えた最終戦。この11点を守りきれば、ランキング3位が決まります。

土曜日に酷使した左手首は、この日は朝から激しい痛みで藤波を苦しめました。しかし藤波はこれによく耐え、最後の最後まで集中力を切らすことなく走りきりました。

序盤は表彰台争いをしていた藤波ですが、今回はさすがに表彰台争いは厳しかったのか、最終リザルトは5位となりました。ランキング争いのライバルであるアルベルト・カベスタニーは4位。ランキングポイントでは9点差で、藤波貴久はランキング3位獲得を決めました。2012年からランキング5位を維持していた藤波ですが、5年ぶりにランキング3位に返り咲きました。

藤波貴久藤波貴久

藤波貴久藤波貴久

チームの若手であるハイメ・ブストには、苦しい最終戦となりました。1ラップ目にミスが重なって、開幕戦から維持していたランキングを最後の最後に落として、最終的には6位でシーズンを終えることになりました。若いブストには、なお修業を積んで、さらに大きな目標に向かってがんばってほしいところです。

ハイメ・ブストハイメ・ブスト

さて2016年のアウトドアトライアル世界選手権は終了しましたが、Repsol Honda Teamの活動はまだ終わっていません。来週末にはトライアル・デ・ナシオンがフランスで開催されます。チームからは、トニー・ボウがスペインチーム代表として、藤波貴久が日本チーム代表として出場します。

決勝1日目コメント

トニー・ボウ(優勝)
「今日は、本当に特別な日になりました。チャンピオンシップを獲得するというのは、いつだってすばらしいものです。しかし今年は、シーズン開幕直前に背中をケガして、苦しい戦いを続けなければいけませんでした。しかし終盤になって、調子は徐々に回復し、これまでの中でも最高のシーズンを送ることができました。これはチームのみんなの努力のおかげです。本当に感謝したいと思います。これ以上よい夢を見ることはできないでしょう。そして私は、まだまだ成長を続けていると確信しています。明日、そして来シーズンと、成長し続けたいと思います」

ハイメ・ブスト(5位)
「今日は複雑でした。序盤は、いい調子でトライを進められたのですが、その後、簡単なセクションで失敗したりして、好調を台無しにしてしまいました。2ラップ目に少し調子を取り戻し、3ラップ目になんとか5位のポジションを得ることができました。今日は私の小さな頃からのアイドルであるトニー・ボウが勝利を飾り、チャンピオンを決めました。彼はまだまだ、多くの勝利を獲得していくことでしょう。偉大なライダーと一緒に活動できて、私は幸せです」

藤波貴久(6位)
「本当に過酷な一日となりました。きつい一日になるだろうということは想定していたのですが、それをはるかに超えるきつさでした。セクションは難しかったですし、しかも時間もありませんでした。試合が始まってしばらくはよい走りができていましたが、それも時間の問題でした。右手の痛みもあったのですが、それ以上に全く集中できない走りになってしまいました。しかし結果は6位で、ランキング3位争いのライバルの(アルベルト)カベスタニーにまだアドバンテージを持って最後の戦いに臨めます。これはまだラッキーなことだと思います。今日はトニー(ボウ)がすばらしい記録を打ち立ててタイトルを獲得しました。おめでとう! トニー」

決勝2日目コメント

トニー・ボウ(優勝)
「今日は厳しい戦いとなりました。集中力を欠いていたのかもしれません、試合序盤にミスを犯して、それが私を苦しめました。しかし2ラップ目、調子を取り戻してリードを築き、最終戦に勝利をすることができました。これは大変に幸せなことでした

そして今日は、我らチームの誇り、『Fuji』藤波貴久のランキング3位獲得が決まった日でもあります。彼は手首を負傷して、大変な最終戦を迎えました。この夏、彼はここイタリアでランキング3位を獲得するために、あらゆる努力を重ねてきました。Fujiがチームにいることは、我々の大きな力です。おめでとう、Fuji。

シーズンが終わって、来週はトライアル・デ・ナシオンです。これは特別なレースです。私たちはこの特別な大会を楽しみたいと思います」

藤波貴久(5位)
「ランキング3位です。今は本当にわくわくした気分を味わっています。もう長いこと、このポジションから遠ざかっていましたからね。今回は手首の骨折があって、とても厳しい戦いとなっていましたから、その喜びはひとしおです。大会中は、手首の痛みとの戦いでした。今回はドクターにもパドックに入ってもらい、手首のケアをしてもらいながらの戦いでした。ドクターはもちろんですが、今日の日のためによい仕事をしてくれたチームのみんなに本当に感謝です。トニーのタイトル獲得と合わせて、ランキング3位獲得はチームにとっても、とても重要な結果だと思います。モンテッサにとって、Hondaにとって、HRCにとって、そしてもちろんRepsol Honda Teamにとってもです! 久々のランキング3位は、本当にうれしいです。来年も、いや来年は、もっと上を目指します」

ハイメ・ブスト(7位)
「今日はちょっと悲しい一日になりました。毎ラップともにミスが多く、そしていい調子で走ることができませんでした。難しいセクションではよい走りをしていても、簡単なところでミスをしてしまい、そして順位を落としてしまいました。望む結果にはなりませんでしたが、このチームでシーズンを1年間戦えて、私は幸せ者です」

ミゲール・シレラ監督
「トニー(ボウ)の20回目のタイトル、19回目のメーカータイトル。すばらしい記録が残りました。しかしその陰には、多くの人の多くの仕事がありました。今はすべての人に感謝したいと思います。トニーについては、どこまでこの記録が続くのか、我々の想像が及ばない強さを持っていると思っています。藤波(貴久)とは、彼のすべての世界選手権キャリアを共に戦ってきました。そして今年、再びランキング3位に返り咲いたその実力は、本当に不屈の精神というほかはありません。彼もまた、その力が衰えることなく、今後も戦い続けるに違いありません。ハイメ・ブストは、若いライダーです。これからいろんな経験を積んで、この失敗を教訓としていかなければいけません。シーズン序盤のハイメは本当にすばらしかった。この調子がシーズン終盤まで維持できるようになれば、ハイメにとってチームにとって、すばらしいシーズンとなることでしょう」

決勝1日目
順位 No. ライダー マシン ラップ1 ラップ2 ラップ3 総減点 クリーン数
1 1 トニー・ボウ Honda 6 2 5 13 26
2 2 A.ラガ TRS 20 18 18 56 16
3 3 J.ファハルド ヴェルティゴ 24 39 23 86 8
4 4 A.カベスタニー シェルコ 28 28 33 89 9
5 6 ハイメ・ブスト Honda 41 33 17 91 15
6 5 藤波貴久 Honda 30 38 29 97 8
 
13 24 オリオール・ノゲイラ Honda 49 35 45 129 2
15 10 エディー・カールソン Honda 49 50 49 148 2
決勝2日目
順位 No. ライダー マシン ラップ1 ラップ2 ラップ3 総減点 クリーン数
1 1 トニー・ボウ Honda 15 8 13 36 23
2 2 A.ラガ TRS 16 18 16 50 23
3 3 J.ファハルド ヴェルティゴ 23 13 19 55 17
4 4 A.カベスタニー シェルコ 28 17 12 57 14
5 5 藤波貴久 Honda 25 22 20 67 12
6 18 M.グラタローラ ガスガス 31 23 27 81 12
 
7 6 ハイメ・ブスト Honda 40 24 21 85 12
13 24 オリオール・ノゲイラ Honda 40 44 41 125 9
15 10 エディー・カールソン Honda 40 46 41 127 4
ポイントランキング
順位 ライダー マシン 総合ポイント
- 1トニー・ボウHonda289
- 2A.ラガ TRS252
- 3藤波貴久Honda190
- 4A.カベスタニーシェルコ181
5J.ファハルドヴェルティゴ173
6ハイメ・ブストHonda168
 
- 12エディー・カールソンHonda61
15オリオール・ノゲイラHonda32
- 17小川友幸Honda14
決勝1日目

トニー・ボウ(中央)

トニー・ボウ

トニー・ボウ

トニー・ボウ(中央)

トニー・ボウ

トニー・ボウ

ハイメ・ブスト

藤波貴久

決勝2日目

トニー・ボウ

トニー・ボウ

トニー・ボウ

トニー・ボウ(中央)、藤波貴久(右)

トニー・ボウ

藤波貴久

トニー・ボウ(中央)、藤波貴久(右)

藤波貴久

ハイメ・ブスト