2016.04.10  トライアル世界選手権 開幕戦 スペイン スペイン

トニー・ボウが、負傷をおしてポイントリーダーとなる

2016年4月9日(土)・決勝1日目  4月10日(日)・決勝2日目  会場:カル・ロザール
決勝1日目「トニー・ボウが、地元の開幕戦で準優勝」

2016年開幕戦のスペインはバルセロナ近郊カル・ロザールで開催され、1日目の決勝でボウが2位入賞を果たして、10連覇を目指す長い戦いをスタートさせました。この戦いの直前にボウは肩のじん帯を痛めていました。そのため今回の2位入賞は、万全の体制でなかったことを考慮すれば、勝利に匹敵する収穫でした。戦いを終えたボウには、満足の笑みがみられました。

トニー・ボウトニー・ボウ

トニー・ボウトニー・ボウ

この日のオープニングセクション、ボウはクリーンを連発していきますが、肩の痛みは小さくなく、苦痛の表情が見て取れました。2ラップ目、負傷の影響で右腕がしっかりと動かず、2つの5点を取ったボウは、4位から6位に落ちてしまいました。

3ラップ目、優勝を目指したいのはもちろんですが、この状況では一つでも上の順位を狙いたいところ。できれば表彰台は死守したいボウの3ラップ目は、気合が入りました。そしてボウは、驚異的な走りをみせました。減点はたったの2点。この日のベストラップとなりました。これで順位もジャンプアップ。総合では、わずか1点の差で勝利を逃すことになりましたが、見事2位を獲得しました。獲得した選手権ポイントは17点。シーズン終盤のタイトル争いでは、今回のポイントが、必ずや重要な得点となってボウの戦いを助けてくれるに違いありません。

トニー・ボウトニー・ボウ

ハイメ・ブストハイメ・ブスト

ボウの若きチームメートであるハイメ・ブストは、いい思い出と、少しほろ苦い思い出を作りました。1ラップ目の減点はたったの2点。それはボウが3ラップ目にたたき出したベストラップと同点です。2番手がジェロニ・ファハルド(ヴェルティゴ)の6点でしたので、ブストの2点がひときわ輝いていました。2ラップ目も、ブストは8点で回り、アルベルト・カベスタニー(シェルコ)に4点差をつけ、ここまでの結果でトップとなります。

しかし初めての勝利も、初めての表彰台も達成することはできませんでした。3ラップ目、ブストは2つの5点と3点で順位を落とし、結果4位に終わりました。あと3点で表彰台という点差だっただけに悔しいものとなりました。

藤波貴久(Repsol Honda Team)は、ミスの多い一日となりました。トップ6がいずれも5つ以下の5点で試合をまとめたのに対し、藤波には7つの5点がありました。トップと17点差は大差でしたが、日曜日にばん回する意気込みです。

決勝2日目「トニー・ボウが、トップの座に返り咲く」

一夜が明け迎えた決勝2日目、肩の負傷が劇的によくなるはずはないのですが、この日のボウの戦いぶりは驚異的でした。3ラップの減点は、それぞれ1桁。3ラップともに1桁減点をマークできたのはボウだけです。土曜日の接戦とは一転して、この日は2位アダム・ラガ(TRS)にダブルスコア以上の差をつける、ボウらしい勝利となりました。

ハイメ・ブストハイメ・ブスト

藤波貴久藤波貴久

しかし、その戦いは決して楽なものではありませんでした。土曜日に酷使した肩は、痛みを増していました。それでもボウは、その痛みに打ち勝ってクリーンを築く術を身に付けていました。3ラップを通じて、ほぼパーフェクトに近いリザルトを見ると、ボウが右肩を痛めているとは想像できないほどでした。

土曜日が2位、日曜日が優勝ということで、ボウはランキング争いのトップに立ちました。昨日優勝のカベスタニーが7位となるなど、ランキング争いは早くも波乱。ボウだけが、頭一つ出てリードすることになりました。

ブストは藤波と同様に、昨日よりミスを増やしてしまいました。2人とも、ボウにならって表彰台を目指して戦ったのですが、その目標はかないませんでした。ブストは土曜日のような満足のいく走りはできませんでしたが、それでも4位。ランキング争いでは、カベスタニーに3点差の4位につけました。まだシーズンは始まったばかり、上り調子の若手には、大きな期待が集まっています。

藤波貴久藤波貴久

藤波は表彰台の可能性を持ちつつも、終盤のミスで5位となりました。ランキングは土曜日の順位から変わらず7位。しかしランキング5位まではわずか2点差となっています。

Repsol Honda Teamの次の戦いは、4月23日(土)、24日(日)に日本大会で行われます。

決勝1日目コメント

トニー・ボウ(2位)
「体調が万全ではなかったので、今日の結果はこれ以上にないものだと言えます。戦いはとても厳しいものでしたが、状況は回復に向かっていることがわかっているので、とにかく今回はがんばりました。チームドクターのテリカブラス氏に感謝です。じん帯を痛め、肩を脱臼したにもかかわらず、こうしてマシンに乗っていられるので。そして、3ラップ目は自分にとって大きな自信となりました。もう一日がんばって、日本大会までに回復の時間を取り、そして今シーズンをいかに戦うかを考えたいと思います。まずは、あともう一日、1位か2位を獲るためにがんばります」

ハイメ・ブスト(4位)
「1ラップ目と2ラップ目は、ほんとうに乗れていました。こんな感覚は人生で初めてでした。ところが3ラップ目に罠が待っていました。ブーツでテープを切ってしまったり、いくつかのミスがあり、好調を維持することができませんでした。とても悔しいですが、明日はよりよい結果が出るようにしたいと思います」

藤波貴久(7位)
「1ラップ目に、私のスコアがハイメ(ブスト)のそれよりも悪かったのを知って、今日のハイメは調子がいいと思いました。彼の走りをみながら、同じように走ろうとがんばってみたのですが、最終セクションで大きな失敗をしてしまいました。最終セクションは簡単といってもいいものだったのですが、持ち時間が気になってしまい、それで集中ができず失敗し、5点となってしまいました。今日は7位という結果でしたが、それほど気にしていません。ところどころでいい走りができたし、それに世界一のスタッフに恵まれているから、明日はきっとうまくいきます」

ミケール・シレラ監督
「今日のチームのリザルトは、満足のいくものだったと思います。トニー(ボウ)は負傷をおして2位の結果をつかんでくれました。3ラップ目には、かなりの痛みがあったと思いますが、すばらしいスコアを残してくれました。明日は肩の状況が少しでもよくなって、楽な戦いをしてくれることを望んでいます。藤波は、3ラップ目に入るまでは、もう少しよい結果を残せるのではないかと思っていましたが、ミスが多すぎました。経験豊富な彼のことですから、明日はきっと改善してくれるはずです。ハイメ(ブスト)の活躍、特に1ラップ目は我々としても驚くべきものでした。2ラップ目もすばらしかったです。最終的にはミスをして後退してしまうことになりますが、それがルーキーたるところでもあります。惜しい結果から学んでもらい、よりよい結果を残してくれることを望んでいます」

決勝2日目コメント

トニー・ボウ(優勝)
「土曜日は、苦痛の夜を過ごしました。日曜日は、痛みは少し増していましたが、我慢するしかありませんでした。今日の私の走りはライバルの(アダム)ラガと、最高レベルの勝負ができるものとなりました。肩がこんな状態で、どうしてこんな走りができたのか、不思議なくらいです。昨日から今日にかけて、4つのセクションで難度が増しました。これはよかったと思います。特に第6セクションの変更はすばらしかったです。私はここを3回ともクリーン、ラガは3回とも5点だったのです。今回は、肩の負傷もあって選手権のトップを奪うことは考えていなかったのですが、結果的にそれができて、本当に満足のいく開幕戦となりました」

ハイメ・ブスト(4位)
「昨日とはまるで違う戦いでした。すべてがひどかったです。結果は4位と昨日と同じですが、内容的にはまるで異なるものとなってしまいました。1ラップ目から、びっくりするようなミスをたくさんしてしまいました。今は次の日本に向けてしっかり準備して、よりよい結果が出るのを望むばかりです」

藤波貴久(5位)
「今日よかったことといえば、5位に入れたことくらいでしょうか。6位となってしまう可能性もあったと思います。トップ争いをする上で、テクニック的な問題などはないと思っています。すべてはメンタルに問題がありそうです。それでも、昨年よりは格段にいい状態となっています。それが結果に結びついていないところが問題です。今日は3位になれていた可能性もありましたが、達成できませんでした。2週間後の母国GPには、問題を解決して心身ともにベストの状態で挑みます」

ミケール・シレラ監督
「いろいろと信じられない週末になりました。トニー(ボウ)の勝利とランキングトップは、想定外のうれしい結果でした。選手の金曜日には、果たしてここを走ることができるのかさえ、あやぶまれていたのです。昨日の2位も、そしてもちろん今日の優勝も、望外の好結果でした。(ハイメ)ブストと藤波については、昨年のランキングを向上させると思えば、今日の結果は問題点が多いというべきでしょうが、次は日本への遠征となります。彼らはこの遠征で、なにかをつかんでくれるのではないかと思っています。今はこの数日間、トニーの肩について尽力してくれたスタッフに、そしてすべての皆さんに感謝を捧げたいと思います」

決勝1日目
順位 No. ライダー マシン ラップ1 ラップ2 ラップ3 総減点 クリーン数
1 4A.カベスタニーシェルコ10462029
21トニー・ボウHonda71222129
32A.ラガ TRS71152330
4 6ハイメ・ブストHonda28162629
5 3J.ファハルド ヴェルティゴ62032928
6 9J.カサレスベータ127113027
 
75藤波貴久Honda175153727
12 24 オリオール・ノゲイラHonda289 19 56 20
17 10エディー・カールソンHonda2122 206816
21 22 カルレス・デ・カウデンバーグHonda5251 41 144 5
決勝2日目
順位 No. ライダー マシン ラップ1 ラップ2 ラップ3 総減点 クリーン数
11トニー・ボウHonda 3 5 2 10 30
2 2 A.ラガ TRS 5 11 8 24 28
3 8 J.ダビル ヴェルティゴ 10 19 10 39 21
4 6ハイメ・ブストHonda 18 12 15 45 23
5 5 藤波貴久 Honda 15 17 15 47 22
6 3J.ファハルド ヴェルティゴ 20 13 16 49 22
 
12 10 エディー・カールソン Honda 41 12 16 69 17
16 24 オリオール・ノゲイラHonda 29 25 28 82 14
20 22 カルレス・デ・カウデンバーグHonda 37 42 38 117 10
ポイントランキング
順位 ライダー マシン 総合ポイント
- 1 トニー・ボウ Honda 37
- 2 A.ラガ TRS 32
- 3 A.カベスタニー シェルコ 29
- 4 ハイメ・ブスト Honda 26
- 5 J.ダビル ヴェルティゴ 22
- 6 J.ファハルド ヴェルティゴ 21
 
- 7 藤波貴久 Honda 20
- 14 エディー・カールソン Honda 4
- 15 オリオール・ノゲイラ Honda 4

トニー・ボウ

トニー・ボウ

トニー・ボウ

ハイメ・ブスト

ハイメ・ブスト

藤波貴久

藤波貴久