モータースポーツ > SUPER GT > GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート > vol.111

GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.111 Rd.8もてぎレビュー #100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTがトップと1.4秒差で3位表彰台を獲得 念願のタイトル奪還はならず、シリーズ3位に終わる

 ツインリンクもてぎで行われた最終戦では、予選で#64 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)が2番手、#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)が3番手に入る好スタートを切ったものの、決勝レースでは#64 Epson NSX CONCEPT-GTに不運が重なって優勝戦線から脱落。一方の#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTは大激戦の末にトップと1.4秒差の3位でフィニッシュしました。念願のタイトル奪還には届かず、ランキング3位でシリーズを終えました。

 

 #64 Epson NSX CONCEPT-GTと#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTが予選で上位グリッドを獲得できたのは、ウエットコンディションでNSX CONCEPT-GTが優れたトラクション性能を発揮したことが大きな要因となりました。

 

 一方、トラクション性能と並ぶNSX CONCEPT-GTのもう一つの武器は高いコーナリング性能ですが、もてぎはストップ&ゴーが続くコースレイアウトで、優れたコーナリング性能を有効に活用するのは困難です。それどころか、NSX CONCEPT-GTは規則によってライバルより車重が重く設定されており、このためタイトコーナーからの立ち上がり加速では不利となります。つまり、もてぎは決してNSX CONCEPT-GTが得意とするコースではないのです。

 

 そうした中、#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTが首位と僅差で3位フィニッシュを果たしたことは、チームとドライバーが一丸となり、持てる力をすべて振り絞った結果だったと言えます。彼らの健闘に心から拍手を贈りたいと思います。

 それにしても激しい戦いでした。レース中盤の26周目にGT500車両の1台がクラッシュしたため、コース上にマシンの破片が散乱。これを回収するためにセーフティカーが出動したことが、激戦の引き金となりました。このとき、GT500車両の大半がピットストップを終えていたため、ここから53周目にチェッカーフラッグが振り下ろされるまで、まるでスプリントレースのような様相をていしたのです。しかも、一団となってトップ争いを繰り広げる6台のGT500車両が、こちらも激戦を演じるGT300車両の集団に次々と追いついていった結果、ときには10台から20台のGTカーが2ワイドや3ワイドになってコーナーに進入。あわや大クラッシュかというシーンが何度も見られました。

 

 決勝レース当日は、朝から昼前後まで断続的に雨が降るあいにくの空模様となりましたが、もてぎに詰めかけた3万3000人のSUPER GTファンには、シーズン最終戦を心から楽しんでいただけたことと確信しています。

 

 一方で、前述したセーフティカーランは、#64 Epson NSX CONCEPT-GTと#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/武藤英紀組)の2台に予想もできない不運をもたらしました。

 

 まず、ピットストップを引き伸ばしていた#64 Epson NSX CONCEPT-GTは、セーフティカーランが始まったときにはトップに浮上していましたが、セーフティカー出動と同時にピットレーンがクローズとなったためにピットストップを行うタイミングを逸してしまいます。しかも、セーフティカーに続いてスロー走行している間にそれまで築いていたリードを失った結果、ピットレーンがオープンとなった直後にピットストップを行うと8番手へと後退。さらに、このときの動揺が残っていたのか、セーフティカーラン終了後の32周目には3コーナーでコースアウトを喫し、最後尾へと転落しました。些細なことをきっかけにどんどん流れが悪くなり、最終的に思いがけない結果を招く典型的な例と言えるかもしれません。

 実は、当初の戦略に従えば、#64 Epson NSX CONCEPT-GTはセーフティカーラン前にピットストップを行うことになっていました。ところが、ピットが隣接するチームが同じ周にピットストップを行うとの情報がもたらされたため、1周ピットストップを遅らせることにしたのです。その意味では、極めて不運な展開だったと言えます。

 

 不運に見舞われたのは#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTも同様です。彼らはセーフティカーラン前にピットストップを行っていましたが、コースに復帰したとき、ピットストップを先延ばしにすることで大きなリードを築いていた#64 Epson NSX CONCEPT-GTの直後につく形となりました。つまり、一時的に周回遅れとなったわけですが、彼らがピットストップを行えば#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTは自然にトップと同一周回に復帰できたはずです。ところが、この状態でセーフティカーランとなったため、#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTの直後にはトップと同一周回の2番手以降がずらりと並ぶ形になりました。その後、#64 Epson NSX CONCEPT-GTは前述のとおりピットストップを行いましたが、#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTが周回遅れであることには変わりありません。こうして、彼らが上位に返り咲く道は、事実上、閉ざされてしまったのです。その後は非常に速いペースで周回を重ね、トップと同一ラップとなるところまでばん回しましたが、結果的には8位と大変悔しい結果に終わりました。

 

 #8 ARTA NSX CONCEPT-GT(松浦孝亮/野尻智紀組)と#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/オリバー・ターベイ組)は予選でタイヤチョイスに失敗。これが響いて14番グリッドと15番グリッドから追い上げる形となり、#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTは7位、#8 ARTA NSX CONCEPT-GTは11位でフィニッシュしました。

 

 最後の最後まで優勝争いを演じた#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTはトップに約1.4秒遅れでチェッカーフラッグを受けました。これにより11ポイントを加算して通算60ポイントを獲得。山本選手と伊沢選手はチャンピオン争いのドライバー部門で3位となってシーズンを終えました。

 

 結果的に目標としていたタイトル奪還を果たすことができず、ファンの皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。また、シーズンを通じて5台のNSX CONCEPT-GTに熱い声援をお送りいただいたことに、改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。