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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.108 Rd.7 オートポリス プレビュー タイトル奪還への布石 最終戦で栄冠を掴み取るために

 今シーズンも残すところ、あと2戦となりました。第7戦はオートポリスが舞台となります。

 山の中腹に建てられたオートポリスはコースの高低差が大きく、また比較的ハイスピードなコーナーが続くレイアウトが特徴です。この点、基本的にはNSX CONCEPT-GTにとって有利なコースといえますが、シーズン終盤に行われる今回のレースでは、ハンディウエイトの影響が大きくのしかかることが予想されます。

 ご存知の通り、SUPER GTではチャンピオンシップポイント1点につき2kgのハンディウエイトが課せられます。ただし、シーズンの終盤2戦に関してはルールが異なり、最終戦の1つ前(今年でいえば、今回の第7戦オートポリス大会)ではハンディウエイトが1点につき1kgに軽減されるほか、最終戦(第8戦もてぎ大会)では完全に撤廃されます。

 ここでランキング上位の獲得ポイントを見ると、ポイントリーダーのライバルは51点を獲得しているので、ハンディウエイトは51kgとなります。ただし、このうち50kg分は燃料リストリクターを絞ることに置き換えられるため、実質的に1kgのハンディウエイトでオートポリス大会に臨むことができます。

 一方、ランキング2位は第6戦SUGO大会で優勝した#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)です。彼らの獲得ポイントは50点にわずかに届かない49点のため、燃料リストリクターは絞られず、49kgのハンディウエイトを搭載しなければなりません。

 

 この事情はランキング3位から8位までのチームも同様で、オートポリス大会では45kg〜31kgのハンディウエイトが課せられます。

 これまでも説明してきた通り、50kgのハンディウエイトを積むことと、50kg分に相当する燃料リストリクターによる規制は、性能面に与える影響が同等であることが本来の姿ですが、燃料リストリクターを絞る方法では確かにエンジンパワーが削減されるものの、例えば、タイヤにかかる負荷が小さくなるためにロングランでは有利といった具合に、影響の出方は完全に同一とは言えません。

 一方、ミッドシップとハイブリッドシステムを採用するNSX CONCEPT-GTの最低重量はライバルに比べて57kg重く設定されているため、ライバル勢のハンディウエイトが増えれば増えるほど、この重量差が相対的に見えにくくなりますが、もともと最低重量が重いNSX CONCEPT-GTにとっては、実際に50kgのハンディウエイトを積むよりも、燃料リストリクターで絞られた方がタイヤへの負担ははるかに小さくなり、パフォーマンス的には有利となります。

 この点、49kgのハンディウエイトが課せられる本大会は、NSX CONCEPT-GTにとって一番厳しい状況と言えるでしょう。

 とはいえ、ルールはルールです。決められたルールの中で精一杯戦って勝利を追い求めることが私たち競技者の使命です。幸い、オートポリス大会に先立ってタイヤテストが実施され、ここに#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTも参加しました。49kgのハンディウエイトを搭載した状態でセッティングの最適化を図り、予選と決勝で持てる力をフルに引き出せるようにテストを行いました。

 今シーズンのタイトルを獲得するためにも、オートポリス大会で#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTがポイントリーダーを上回るポジションでフィニッシュし、“自力チャンピオン”の可能性を残した状態で最終戦もてぎ大会に臨めるように戦います。もっとも、もてぎ大会での戦いをより有利に進めるためには、1台でも多くのNSX CONCEPT-GTが上位入賞し、ライバルに大量ポイントを奪われないようにすることも重要となります。言い換えれば、Honda勢が上位に食い込むことが、#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTへの援護射撃となるのです。

 この点、オートポリス大会での活躍を最も期待しているのは#64 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)です。#64 Epson NSX CONCEPT-GTはハンディウエイトが3kgと軽い上、今シーズン、彼らが使用するダンロップタイヤは長足の進歩を遂げました。これまではさまざまな不運のため、好成績を残せませんでしたが、歯車がしっかりとかみ合った戦い方さえできれば、彼らには大きなチャンスがあると考えています。

 マシンの仕上がりで言えば、#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/オリバー・ターベイ組)にも期待しています。特にシーズンの中盤以降は優れたパフォーマンスを発揮し、第6戦SUGO大会でも十分に上位入賞が狙える展開でしたが、ペナルティーなどにより、残念ながら7位に終わりました。オートポリス大会では、これまでのうっぷんを晴らすような活躍をしてくれると信じています。

 冒頭でも述べた通り、今シーズンも残すところ2戦となりました。Hondaはタイトルの奪還を目標として遮二無二で戦いますので、是非ご期待ください。