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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート vol.105 Rd.5 鈴鹿レビュー 予選での速さも決勝は変化するコンディションで苦戦 得られたデータをもとに次戦につなぐ

 SUPER GT第5戦の鈴鹿1000kmは、路面が湿った状態でスタートが切られたあと、雨が止んで次第にコースが乾いていくという、難しいコンディションのもとで行われました。

 一方、前日の予選では#64 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)がドライコンディションの中で3番グリッドを勝ち取り、決勝レースの序盤は、オープニングラップにして目の前の2台をオーバーテイクしてトップに浮上すると、その後もぐんぐんと後続を引き離し、4周目までには2番手に4秒差をつける圧倒的な速さをみせました。けれども、この頃になるとステアリングを握るバゲット選手はアンダーステアに苦しみ始め、8周目には2番手に後退。その後もずるずるとポジションを落とし、最終的に9位でチェッカーフラッグを受けました。

 #64 Epson NSX CONCEPT-GTのペースが伸び悩んだのは、最初の4周でタイヤのグリップが低下してしまい、ハンドリングのバランスが大きく崩れてしまったことに原因があったようです。さらにレース中盤からはハイブリッドシステムにトラブルが出てしまったことも、彼らが苦戦する一因となりました。予選であれだけの好走を見せてくれていただけに、この結果は大変、残念でした。

 7番グリッドからスタートした#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/オリバー・ターベイ組)は、小暮選手の力走によりぐんぐんと順位を上げていき、一時は優勝のチャンスも十分にあると思われました。しかし、ピットストップ中に作業違反などがあったことで2度のペナルティーを科せられて後退。さらには電気系トラブルにも見舞われて12位フィニッシュに終わりました。

 つまり、レース前半にして2台のNSX CONCEPT-GTがトップに立ちながら、いずれも次々と不運が降りかかって後退を余儀なくされました。#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)が40周目にはトップに浮上。この日のレースで首位に立ったNSX CONCEPT-GTは3台目。この時点では#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTが3番手につけていたほか、47周目には#8 ARTA NSX CONCEPT-GT(松浦孝亮/野尻智紀組)も4番手までばん回し、実にトップ4のうち3台がNSX CONCEPT-GTで占められる展開となりました。

  トップ争いをしているのが自陣営の1台だけの場合、この1台がアクシデントやトラブルに見舞われれば優勝のチャンスを失うことになります。けれども、この日はトップ4に3台が食い込んでいました。たとえ多少の不運があって1台ないし2台がつぶれても、残る1台は間違いなく表彰台に上ってくれるはずだし、うまくいけば優勝だって狙えるはずでした。

  ところが、#8 ARTA NSX CONCEPT-GTにはシフトトラブルが発生した上に野尻選手のコースアウトもあって遅れ、#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTは前述の通りペナルティーと電気系トラブルで後退。さらに、18番グリッドから鋭い追い上げを見せていた#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/武藤英紀組)は目の前でGT300クラス車両がスピンしたのに巻き込まれる格好となってクラッシュ、リタイアを余儀なくされました。

  結局、無傷で残ったのは#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTの1台だけでした。彼らにしても、セーフティカーラン中にピットストップを行ったことから給油のタイミングがずれてしまい、レース終盤は燃料をセーブするためにペースダウンを強いられ、悔しい5位に終わりました。上位を独占した序盤の展開とは一転して、とても残念な結果となってしまいました。

 とはいえ、ウエットコンディションとなったレース前半、NSX CONCEPT-GTが速さを示したことは前述の通りです。これは、エンジンをミッドシップしているがゆえに後輪にしっかりと荷重がかかり、これが滑りやすい路面で優れたトラクションを発揮した結果だったといえます。また、前回の鈴鹿プレビューでもお知らせした通り、コーナリング性能が高いNSX CONCEPT-GTはコーナーの多い鈴鹿サーキットを得意としています。つまり、前半戦の健闘は、ミッドシップならではのトラクション性能と優れたコーナリング性能が存分に発揮された結果だったと言えます。

  一方、その後でポジションを落としてしまったのは、信頼性不足に起因するトラブル、アクシデント、そしてペナルティーを受けたことが原因でした。いずれもミスと呼ぶべきことばかりで、今後はこれらのミスをいかに少なくしていくかが課題です。 特にこれらの課題については、技術的要素とレース運営面とに切り分け、各チームとHondaが一丸となって解決することで、残り3戦に向けて結果が出せるようにがんばります。

  2015年シーズンの残り3戦のうち、スポーツランドSUGOとオートポリスはコーナリング性能がものをいうサーキットです。この2戦で弾みをつけ、最終戦もてぎまで全力でシリーズを戦い抜きます。