モータースポーツ > SUPER GT > GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート > vol.102
タイ大会を間に挟んだ関係で、日本国内では3カ月ぶりとなるSUPER GTが8月8～9日に富士スピードウェイで開催されます。数えて第4戦となるこのレースは、シーズン中盤戦の展開を占う上でも、チャンピオン争いを考える上でも非常に重要な一戦となります。
今後1カ月半の間に富士、鈴鹿、菅生と3大会が立て続けに開催されます。ここで波に乗れれば3戦連続で好成績を挙げられるかもしれませんし、逆に乗れなければ3戦とも不本意な結果で終わってしまうかもしれません。そしてこの3連戦が終わると、残るは終盤戦のオートポリスともてぎのみ。つまり、チャンピオンシップの締めくくりとなる最後の2戦をどのような形で迎えられるかは、これからの3連戦で決まるといえるのです。
Hondaにとって、この3連戦はとりわけ重要です。ミッドシップ・レイアウトやハイブリッド・システムを採用している関係で、レギュレーションで定められたNSX CONCEPT‐GTの最低重量がライバル勢より57kg重くなっていることは以前にもご説明しました。NSX CONCEPT‐GTがライバルたちよりも57kg重いことは厳然たる事実であり、これがマシンのパフォーマンスにさまざまな影響を与えていることもまた否定のしようのない事実です。このため、たとえば開幕戦や最終戦のように、ハンディウェイトが0kgで戦うレースでは、57kgの重量差がダイレクトに作用し、相対的な戦闘力はどうしても低下してしまいます。反対に、各チームのハンディウェイトが積み重なってくるシーズン中盤戦は、57kgの影響が相対的に弱まり、Hondaにとっては有利な状況と言えるでしょう。実際には、有利になるのではなく、不利の度合いが小さくなるだけの話ですが……。
また、この3連戦には鈴鹿と菅生という、コーナーリング性能が大きくものをいうサーキットが2つ含まれている点もHondaにとっては重要です。いまやストレートスピードはライバル勢に匹敵し、富士でも十分に上位入賞が狙えるようになっているNSX CONCEPT‐GTですが、それでも、私たちが得意としているのが鈴鹿や菅生のようにコーナーが連続するサーキットであることは間違いありません。その意味でも、これから始まるシーズン中盤戦は、Hondaの今シーズンを左右する重要な戦いになるといえるのです。
次の第4戦ではシーズン2基目のエンジンを投入することになりますが、この新エンジンはパフォーマンス面だけでなく、信頼性のさらなる向上も図られた自信作です。この新しいエンジンを武器にして、中盤戦をより力強く、そしてより確実に戦っていくつもりです。
第4戦の舞台となる富士スピードウェイでは、今年すでに第2戦が開催されており、どのような勢力分布図であるかが明らかになっています。この第2戦では、NSX CONCEPT‐GTはストレートでは速かったものの、ツイスティーなコーナーが続く第3セクターでは本領を発揮することができず、予選は7番手、決勝でも4位がHondaの最上位と苦戦を強いられました。これについては、徹底的なシミュレーションによって原因を解析した結果、その克服に一定の目処が立ちました。
ストレートが速くてコーナーが遅いと聞くと、ダウンフォースが不足していると考えるのが一般的でしょう。たしかに、ダウンフォースを増やすことでコーナリングスピードを上げ、全体的なペースアップを図るというのもひとつの解決方法です。しかし、これではストレートスピードが低下するのは目に見えていますし、そもそも現在のレギュレーションでは空力パーツを独自に開発することが許されていません。したがって、エアロダイナミクスには大きく手を入れない形でこの問題を克服しなければいけないのです。
私たちは、前述したようにシミュレーションを徹底的に繰り返すことで、メカニカル・セットアップを中心とした変更によってリアのスタビリティを向上させる方法を見つけ出しました。これであれば、ストレートスピードをほとんど低下させることなく第3セクターのペースを上げることができるので、ラップタイムの短縮には非常に効果的であると考えています。
こうした改良と、レースをミスなく戦いきるチーム運営を徹底できれば、第4戦富士大会では複数台を上位に送り込めるはずです。レースが開催される8月上旬は夏休み真っ盛り。是非、皆さんお誘い合わせの上富士スピードウェイに足を運んでいただき、5台のNSX CONCEPT‐GTに熱い声援をお送りいただきますようお願い申し上げます。
