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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.100 Rd.3 タイ・レビュー コーナリングの速さを生かしてタイでの栄冠を目指す 不確定要素が多いコースでどれだけポイントを稼げるかがカギ

 SUPER GT第3戦は昨年初開催となったタイ・ブリーラムのチャーン国際サーキットが舞台となります。

 昨年は10月に第7戦として開催されたタイ大会ですが、今年は6月に第3戦として実施されることになりました。これは、オープンから2年目を迎えた同サーキットにおいて、10月30日〜11月1日の日程で世界ツーリングカー選手権(WTCC)が開催されることになったことを受けて変更されたものです。もしもスーパーGTが昨年と同じ10月にタイを訪れていたら、チャーン国際サーキットは月に2回も国際的なレースを開催することになります。これは、まだ誕生して日の浅いサーキットにとって大きな負担になると判断したGTアソシエーションが日程の変更を提案し、最終的に6月に落ち着いたものです。日本の6月は梅雨の時期にあたるため、レース開催に向いているとはいえません。また、一昨年まで行われていたマレーシア大会も同じ理由から6月開催でしたので、シリーズとしてもこれが自然な流れなのかもしれません。

 では、6月開催となって天候はどうなるのでしょう?基本的には赤道に近いタイが舞台のため、日本のように季節によって気温が大きく変化することはありませんが、それでも気温は10月よりも6月のほうが暑いと聞いています。一方、空模様についていえば一般的に言ってタイの10月は不安定ですが、6月はそれよりも安定しているようです。実は、10月のブリーラムでは毎日のように夕立が降るのが当たり前で、昨年のように3日間を通じて強い雨に降られずに済んだというのは、とても幸運なことだったのです。いずれにせよ、暑さ対策に関しては昨年以上に入念な準備をする必要がありそうです。

 昨年のタイ大会では、予選で#8 ARTA NSX CONCEPT-GTが4番グリッドを、そして#32 Epson NSX CONCEPT-GTが5番グリッドを獲得。残念ながら決勝では、#32 Epson NSX CONCEPT-GTは他車との接触がきっかけとなってリタイア、#8 ARTA NSX CONCEPT-GTもタイヤがパンクした影響でボディカウルを破損し、同じくリタイアを余儀なくされました。また、7番グリッドからスタートして決勝での追い上げが期待されていた#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTにはブレーキトラブルが発生して12位に後退。結果的にHonda勢の最上位となったのは9番グリッドからスタートした#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTの5位でした。

 それでは、今年はどんな展開が予想されるのでしょうか? 2014年と2015年ではNSX CONCEPT-GTのエアロダイナミクスが大きく改良されているため、チャーン国際サーキットとのマッチングに関しても変化が起きる可能性が高いと見られていますが、第2戦富士大会までを終えた段階では、それがどのような影響をもたらすかを正確に予想するのは難しいと言わざるを得ません。なぜなら、タイではハイダウンフォースの空力セッティングを用いますが、ハイダウンフォースを使った開幕戦岡山大会はウエットレースとなったため状況が大きく異なりますし、第2戦富士大会では当然のことながらハイダウンフォースではなくローダウンフォースを使用したので、こちらも予想する材料としては適していません。もちろん、テストにおけるハイダウンフォース・セッティングデータはありますが、これがどの程度、タイ大会での展開を予想するのに有効かは、なんとも言えない部分が残っているのです。

 もっとも、チャーン国際サーキットは高速コーナーから低速コーナーまでがバランスよくミックスされているので、高速コーナーでの速さが際立つNSX CONCEPT-GTにとっては基本的に得意なコースといえます。今回もこの得意な部分を生かしつつ、1周走りきったときにいかに速いラップタイムを刻めるようなセッティングにするかが、勝敗を分ける鍵を握っていると考えています。

 ところで、シーズン全体を見渡すと、中盤戦以降は鈴鹿、菅生、オートポリスとNSX CONCEPT-GTが得意とするコースが続きます。こうしたサーキットについてはしっかりしたデータが手元にありますし、かなりはっきりとした予想が立てられます。その一方で、ご存じの通りシーズン終盤戦はハンディウェイトが半減もしくは全廃されるため、vol.99のRd.2 富士レビューでご説明したように、もともと最低車重がライバルより重いNSX CONCEPT-GTは相対的に厳しい立場に追い込まれます。裏を返せば、ハンディウェイトが半減される第7戦オートポリスより前に、ある程度のリードを築いておくことが、私たちがタイトルを奪還する上で重要ということになります。そのためにも、不確定要素が少なくないタイ大会で着実にポイントを積み重ねることが大切といえるでしょう。

 私たちHonda陣営は心をひとつにし、タイの暑さを跳ね返すような熱戦を繰り広げてきますので、皆さんにも5台のNSX CONCEPT-GTに熱いご声援をお送りくださいますよう、心からお願い申し上げます。