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SUPER GT

総合力を発揮しきれなかった2015年シーズン 来季の雪辱を期し、NSX CONCEPT-GTの開発に取り組む(1/2)

ハード面、ソフト面ともに磨き続けた2015シーズン
来季への課題も見えてきた

 2015年シーズン、Hondaはミスをなくして取りこぼしを防ぎ、5台のNSX CONCEPT‐GTが毎戦、確実に完走することをテーマに据えてSUPER GTに挑みました。

 しかし、シーズンが終わった今振り返ってみると、そうした目標を必ずしも達成できなかったという反省が残ります。まず、ハードウェア面で言えば、2015年シーズンのNSX CONCEPT‐GTは前年度よりも確実に速くなっていました。ただ、ライバル陣営も同じように進歩していたため、マシンのパフォーマンスだけで彼らを凌ぐところまでは到達していませんでした。その意味では、私たちの努力がまだまだ足りなかったと言えるかもしれませんし、目標の設定に不十分な部分があったとも言えるでしょう。この点はプロジェクトをあずかる責任者として大いに反省しなければいけない点だと考えています。

 ハードウェア面では、狙いどおりの信頼性を実現できなかったことも反省点として残ります。もちろん、こちらもマシンのパフォーマンス同様、前年度よりも確実に前進していましたが、シーズン中に何度かトラブルを出してしまったのも事実です。2016年に向けては、このようなことでポイントを取りこぼすことがないよう、信頼性をさらに向上させなければいけないと思いを新たにしているところです。

 いっぽうで、チーム側もレース中にミスを犯してペナルティを科せられることがあったほか、ドライバーのミスでアクシデントを引き起こしたこともありました。もちろん、ミスはだれにでも起きうるという前提でこうしたミスを招く原因をひとつずつ潰していき、確実にフィニッシュできる体制を築かなければタイトルに手が届かないのも事実です。その意味では、なにが起きたかをつぶさに検証し、それらの再発を防ぐ対策を講じなければならないことは言うまでもありません。

ここ一番の大勝負で勝利した
100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT

 5台のNSX CONCEPT‐GTの中で、「着実に完走する」という目標を最も高い精度で達成したのは#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)でした。ドライバーの山本選手と伊沢選手はただ速いだけではなくレース中のミスを最小限に留めるとともに、チームも最善のメンテナンスやレース戦略でこれを支援し、ピットストップでは確実な作業を素早く終えてポジションアップのチャンスをたぐり寄せました。こうした総合力の高さが、最終戦までチャンピオン争いを繰り広げる大きな原動力になったと言えます。

 そうした彼らの戦い振りを最もよく象徴しているのが、第6戦SUGO大会での優勝でした。それまでの獲得ポイントが29点になったことで、50kg分のハンディウェイトを下ろして燃料リストリクターを絞り込むことになった#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTは、事前のテストで入念なシミュレーションを行うとともに、レースウイークでは完璧にそれをなぞって栄冠を勝ち取りました。もちろん、NSX CONCEPT‐GTの強みであるコーナリング性能を十分に生かせるSUGOのコースレイアウトが追い風になったのは事実ですが、ここ一番の大勝負で持てる実力を着実に発揮したチームの総合力は立派というほかありません。Hondaの全5チームが揃って彼らのような力をつけてほしいと思っています。

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