モータースポーツ > SUPER GT > 松本 雅彦 GTプロジェクトリーダー 2015年シーズンへ向けての意気込み

SUPER GT

Hondaチャレンジスピリットの原点に立ち返り、タイトル奪還を目指す

4年ぶりに復活した“NSX”とともに挑んだ2014年シーズンのSUPER GT。
GT500クラスに参戦するマシンとして唯一、ミッドシップ・レイアウトとハイブリッド・システムを採用した「NSX CONCEPT-GT」は第5戦富士大会で貴重な1勝を挙げたものの、ドライバーズ・ランキングでの最高位は4位に留まった。
念願のシリーズ・タイトルに手が届かなかった理由は何だったのか?
2015年シーズンに向けてはどのような開発を行っているのか?
Honda GTプロジェクトを率いる松本 雅彦がそのすべてを明らかにする。

松本雅彦 GTプロジェクトリーダー
見やすさを重視したミラー形状
一分一秒も無駄にできないテストデイ
真剣に取り組むメカニック

 DTMと共通化された新しい車両規則が導入された2014年、Hondaはまったく新しいNSX CONCEPT‐GTを開発してシリーズに挑みましたが、残念ながら目標としていたタイトル獲得は達成できませんでした。
 その原因をひとつに絞り込むことはできませんが、様々な領域で見逃せない影響を与えていたのが「開発の出遅れ」でした。もともとDTMの車両規則はミッドシップ・レイアウトを前提としてなく、このため規則の制定から開発着手までの過程で多くの時間を要することとなりました。これが開発の出遅れにつながり、マシンの熟成が不十分なまま開幕戦を迎えるひとつのきっかけとなったのです。
 私たちはシーズンが始まってからも開発の手を休めることなく、この結果、シーズン中盤以降は優勝争いを演じられる戦闘力を手に入れることになりました。このことは、Honda勢でシリーズ最高位を得た山本尚貴選手の戦績にも端的に表れていて、たとえば第1戦から第4戦までは5位、10位、7位、8位でしたが、第5戦以降は優勝、3位、5位、3位という成績を残し、常にトップ5に食い込む健闘を示したのです。こうしたパフォーマンスを開幕直後から示すことができれば、チャンピオンとの17点差をもしかしたらひっくり返せたかもしれません。いずれにしても、シーズンの早い段階から好成績が収められるように準備することの重要性は明白です。そこで、2015年シーズンに向けてはできるだけ早い時期に開発を始められるよう準備を進めてきました。
 たとえば、エンジン開発は昨年の夏頃に始めました。それらは、2014年シーズン後半に向けての“タマ”という位置づけではなく、あくまでも2015年シーズンに投入することを前提に開発したものでした。エアロダイナミクスの開発に着手したのは夏の終わり頃で、年明けの2月には新しいパーツが納入され、その後、順次テストを行っています。ですから、昨年の失敗を繰り返すことなく、今年は技術陣が一丸となって順調に開発を行っているといえるでしょう。
 では、2015年シーズンに向けた開発は、どのような方向性で進められているのでしょうか? 私たちはシーズンを通じて安定したパフォーマンスを発揮できるマシン開発を目指しています。予選一発の速さを狙う、もしくは特定のサーキットでのみ好成績が期待できるようなマシン作りは、私たちの考え方と対極を成すものです。言い換えればどんなコース、どんなコンディションでも速いマシンが私たちの理想ということになります。
 同じようなことは、HSV-010 GTの最終年度にも目標として掲げました。すなわち、マシンのピーキーな特性を極力廃し、セッティングが出しやすく、フレンドリーなクルマ作りです。そうすることで、どこに行っても速いマシンを作り出すことができる。これが、シリーズ・タイトルを目指すうえでもっとも重要なポイントであると私たちは考えています。
 今年はチーム体制面にも大きな変化がありました。長年、Honda GTプロジェクトの一翼を担っていた童夢がチーム活動を休止し、代わって道上 龍監督率いるDrago Modulo Honda RacingがNSX CONCEPT‐GTを走らせるのです。なお、タイヤはブリヂストンを使用するため、Honda勢は計4台がブリヂストン、残る1台がダンロップを装着する形となります。
 また、伊沢拓也選手が今年は活動の本拠地を日本に戻し、SUPER GTにフル参戦します。今シーズンはこれらの変化を勘案してチーム体制をまとめましたが、結果として総合力に優れた陣容を築くことができたと自負しています。
 2015年シーズン、Hondaは「チャレンジ」「躍進」といった言葉をテーマに掲げるとともに、「Hondaのチャレンジ・スピリットとはいったいどういうものなのか?」という根源的な視点に立ち返り、もう1度、原点に戻ってSUPER GTを戦っていくことになります。目標は、シリーズ・タイトルの奪還以外にありません。今シーズンも全力を尽くして戦っていきますので、引き続きのご声援をどうぞよろしくお願い申し上げます。