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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.94 Rd.8 もてぎプレビュー ブレーキ・マネージメントが鍵を握るもてぎ 今季2勝目を目指し、総力を挙げて挑む

いよいよシーズンも大詰め。SUPER GT最終戦は例年通りツインリンクもてぎを舞台に開催されます。

最終戦といえばチャンピオン争いの行方が気になるもの。Honda陣営では#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTの山本尚貴選手が、ランキングトップと14点差でドライバー部門の6番手につけています。ちなみに、現在ポイントリーダーのドライバーは通算67点、一方の山本選手は53点です。これを逆転するには、山本選手が優勝してライバルが6位以下に終わるか、山本選手が2位であればライバルがノーポイントに終わることが最低限必要な条件となります。

ただし、これだけはまだ“十分条件”とは言えません。というのも、ランキング2番手のドライバーは64点、3番手は61点、4番手は60点、5番手は59点を獲得しているからで、つまりは山本選手が優勝もしくは2位で、なおかつランキング上位のドライバーが軒並みノーポイントか、それに近い結果に終わらない限り、山本選手がタイトルを勝ち取ることはできません。つまり、決して分がいい戦いではないのです。

もちろん、私たちは少しでも可能性が残されている限り、チャンピオンを目指して全力を投じるつもりですが、タイトル獲得と同じくらい大切な目標として捉えているのが、Hondaとしてシーズン2勝目を挙げることです。今年はシリーズ前半に苦戦を強いられたこともあり、優勝は第5戦 富士大会で#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTが勝ち取った1勝だけとなっています。これはいかにも不本意な結果です。また、ツインリンクもてぎは、鈴鹿サーキットと並ぶ私たちのホームコースでもあります。第6戦 鈴鹿大会では惜しくも勝利を逃しているので、せめてもう一つのもてぎではなんとしてでも栄冠を勝ち取りたいと考えています。

では、最終戦で優勝するには、どういったことがポイントとなるのでしょうか?

もてぎは細かく回り込むコーナーを短いストレートでつないだセクションが繰り返されるレイアウトなので、ブレーキの良し悪しがラップタイムを大きく左右するコースだといえます。一方、シーズン前半戦のNSX CONCEPT-GTは不整路面でマシンが跳ねる傾向があり、このままの状態であれば間違いなく苦戦を強いられたはずです。幸い、シーズン中盤に大幅な改良を実施して以来、この“跳ね”の症状はいくぶん収まっていますが、もてぎでテストを行ったのはこの対策を実施する以前のことだったので、これがもてぎでどの程度有効か、もしくはまだ問題が残っているのかは読みきれません。いずれにせよ、この点さえ解消できていれば、NSX CONCEPT-GTともてぎの相性は決して悪くないので、優勝争いに絡むチャンスは十分にあります。

その一方で、今年のGT500クラス車両はパフォーマンスが全般的に向上しているため、もてぎは例年以上にブレーキに対して厳しいレースになると推測されます。その意味でいえば、どのメーカーにとっても最終戦ではブレーキ・マネージメントが極めて重要になると予想されます。また、最終戦は250kmと通常よりもレース距離がやや短くなる上、もてぎは抜きにくいコースでもあるので、予選で上位グリッドを獲得することも大切となります。この辺も、勝敗を分けるひとつのポイントとなるでしょう。

チームごとの状況について説明する前に、ひとつニュースがあります。最終戦では、フレデリック・マコヴィッキィ選手に替わり伊沢拓也選手が山本選手のチームメイトとして#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTを駆ることになりました。ふたりは2012年までコンビを組んでいたので、息はぴったりのはず。また、山本選手にとってはタイトル争いがかかっている一戦なので、是非とも優勝してほしいところです。その一方で、実力はありながらここのところ運に見放されている#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘組)も、もてぎで一勝を挙げることで悪い流れを断ち切ることが期待されます。

流れが悪いといえば、#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/武藤英紀組)も決して運に恵まれているとはいえません。また、マシンの仕上がりはいいのに、それを成績になかなか結びつけることのできない#8 ARTA NSX CONCEPT-GT(ヴィタントニオ・リウッツィ/松浦孝亮組)にも上位入賞を狙ってほしいところです。

また、#32 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)は装着しているダンロップ・タイヤの開発が進んでおり、ポテンシャルとしては非常に優れたものを持っています。もてぎでは、その本領を是非発揮してほしいものです。

いずれにせよ、泣いても笑っても今シーズンはこれが最後の戦いです。シリーズ・タイトルの獲得、そして今季2勝目を目指して精一杯がんばりますので、どうか5台のNSX CONCEPT-GTに熱いご声援をお送りくださいますよう、心からお願い申し上げます。