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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.92 Rd.7 タイ・プレビュー 初開催のタイ・ブリーラムへ遠征 逆転チャンピオンに向けたラストスパートに期待

2014年シーズンも残すところ2戦。ハンディウェイトの軽減措置が採られるシーズン終盤の2連戦は、タイ・ブリーラムにオープンしたばかりのチャーン国際サーキットで幕を開けます。

タイのブリーラムはバンコクから北東へおよそ400kmの距離にあり、チャーン国際サーキットは全長4.554mの時計回りで、合計12のコーナーがあります。写真で見ると、完全に平坦な敷地に建設されたサーキットは長めのストレート2本を中心に構成されている一方、その後のインフィールド部分には富士スピードウェイの第3セクターとよく似た中低速コーナーが続いています。全般的にいって平均速度はさほど低くなく、富士と鈴鹿の中間くらいのスピード域であろうと推測しています。

新しいサーキットで行われるレースに挑む前に、サーキットシミュレーターを使ってマシンのセッティングを検討するという話がよく出ますが、これまで一度も走行したことのないサーキットをシミュレーターにかけてもコーナリングスピードの誤差が大きく、あまり参考にならないのが現実です。これは実際にドライバーが走行できるかどうかとは関係なく、コンピューターが理想的な走行ラインを弾き出してしまうために起きるもので、ときには現実とシミュレーション結果との間で時速20km近い差が生まれることもあります。

というわけで、やはり実際にサーキットを走ってからでないと具体的なセッティング作業には入れないものです。これはタイヤメーカーにとっても同じことで、タイヤを事前に用意しなければならないため、あらかじめ現地を訪れ、路面の状態などを実際に確認したうえで、コースに最もあったタイヤを現地に向けて発送することになります。

いずれにせよ、タイ大会にはほとんどぶっつけ本番に近い形で挑むことになるため、限られた走行時間をいかに有効活用し、ライバルに先んじてセッティング作業を行うことがなによりも重要となります。今回は初開催のサーキットであることを鑑みて金曜日にも練習走行が行われますが、金曜日のうちにサーキットの特色を把握し、それらをいち早くセッティングに反映できたチームが主導権を握ることになると予想されます。

では、チャーン国際サーキットで5台のNSX CONCEPT-GTはどのような活躍を見せてくれるのでしょうか?

これまでNSX CONCEPT-GTは富士でも鈴鹿でも優れたパフォーマンスを発揮してきたので、この2つのサーキットの特色を兼ね備えたチャーン国際サーキットでHondaが窮地に立たされるとは考えにくく、今回も優勝をかけた戦いを繰り広げることが期待されます。

また、第6戦までは1ポイントあたり2kgのハンディウェイトが課せられていましたが、第7戦はこれが1ポイントあたり1kgに半減されるので、相対的にはチャンピオン争いの上位につけているチームにとって有利な状況になると見込まれます。この点から言うと、現在ランキングの4番手につけている#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTの山本尚貴選手は、ハンディウェイトが50kgを下回るために燃料リストリクターの厳しい締め付けから解放されることも重なり、上位ランカーと互角以上の戦いを繰り広げてくれるものと期待されます。チームメートのフレデリック・マコヴィッキィ選手はシーズン前半の3戦に出場していなかったために現在36ポイントにとどまっていますが、山本選手のタイトル獲得を力強くサポートしてくれるはずです。

ポイントランキングでは現在11番手と13番手にとどまっているものの、#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘組)と#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/武藤英紀組)がトップクラスの実力を有していることは言うまでもありません。とりわけ、#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTは第6戦鈴鹿大会で悔しいリタイアに終わっているので、タイではそのときのうっぷんを是非晴らしてほしいものです。

また、#8 ARTA NSX CONCEPT-GT(ヴィタントニオ・リウッツィ/松浦孝亮組)と#32 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)の2台は今シーズンに入ってからマシンの仕上がりがどんどん進化しているので、タイでも好成績が期待できます。ハンディウェイトがともに10kg台というのも、2台にとっては追い風になるでしょう。

これまでコンスタントにポイントを積み重ねてきた#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTの山本選手とランキングトップとのポイント差は13点なので、逆転チャンピオンの可能性はまだ十分に残されています。ハンディウェイトが半減されたタイ大会で是非とも優勝を果たし、少しでも有利な状況で最終戦もてぎ大会に挑むことが望まれます。引き続き熱戦を繰り広げるNSX CONCEPT-GTにご声援をお送りくださいますよう、心よりお願い申し上げます。