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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.84 rd.3 オートポリス・プレビュー 見えてきた課題 セッティングの煮つめでパフォーマンスの改善を図る

SUPER GT第3戦は5月31日〜6月1日に大分県のオートポリスで開催されます。阿蘇山系の5月といえば、青々とした緑が目に眩しい季節です。そうした美しい大自然に囲まれたオートポリスで、Hondaファンの皆さんのご期待に応えられる戦いをご披露したいと思い、今も精一杯の努力を続けていますが、前回もお知らせした通り、今シーズンのSUPER GTは私たちにとって容易ならざる状況となっています。

これまでであれば、車両規則によりシーズン中の開発もある程度は認められていましたが、2014年より導入されたレギュレーションではこうした開発が厳しく制限されており、たとえば新しい空力パーツを作ったり、足回りを大幅に変更したりということは基本的に認められていません。唯一、開発の余地が残されているのはエンジンですが、こちらもシーズン中に使用できるのは1台あたり3基までと制限されており、なんらかのアップデートが投入できるのは新エンジンに載せ替えるタイミングに限られます。つまり、今シーズンであれば全8戦で競われるので、少なくとも1基目のエンジンは第3戦、つまり本大会まで使いたいとなるわけです。こう考えていくと、エンジンに関しても今すぐ抜本的な対策を講じられる状況ではないことがお分かりいただけると思います。

では、NSX CONCEPT-GTの大きな特徴のひとつであるハイブリッドシステムはどうでしょうか? こちらもシステム構成やその使い方などは、レギュレーションで厳密に定められているので、たとえば「ハイブリッドの出力を拡大する」とか「使用する範囲を大幅に広げる」というようなことは認められていません。また、エンジンにしてもハイブリッドシステムにしても、通常の開発でタイムを短縮できるのはせいぜいコンマ2秒かコンマ3秒なので、現在の劣勢を覆すようなパフォーマンスを今すぐ手に入れるのはやはり難しいといえます。

つまり、私たちに今できることは、車体セッティングの煮つめやエンジンマッピングなどの地道な作業に限られていることになります。ただし、4月22〜23日にオートポリスで行われたタイヤメーカーテストで、私たちが克服すべき課題がはっきりしてきたので、今後はこの点を中心として作業に取り組んでいく計画です。幸い、第2戦富士大会のあと、5月10〜11日には菅生でSUPER GTの合同テストが行われ、ここでこの対策が一定の効果を挙げていることが確認できましたので、第3戦オートポリス大会では直ちにトップ争いを演じるとまではお約束できないものの、前回を凌ぐパフォーマンスを発揮できるものと信じています。

最後に、第3戦オートポリス大会に挑む5台のNSX CONCEPT-GTについて、その現状を順にご説明しましょう。

第1戦岡山国際大会、第2戦富士大会の結果をご覧になっても分かる通り、Honda勢で今最も好調なのは#18 ウイダー モデューロ NSX-CONCEPT GT(山本尚貴/ジャン・カール・ベルネ組)です。その理由としては、マシンのセットアップが5台の中で一番進んでいることが挙げられます。また、5月下旬/6月上旬の大分県地方が、4月中旬の岡山、5月上旬の富士よりも気温が高くなる公算はかなり大きいでしょう。つまり、#18 ウイダー モデューロ CONCEPT-NSXが装着するミシュラン・タイヤがこれまで以上のパフォーマンスを発揮する可能性が高いので、おそらく彼らにとってはより有利な展開となるはずです。山本選手、ベルネ選手の2人には、表彰台を視野に入れた活躍を期待したいところです。

#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTに比べると、#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘組)と#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/武藤英紀組)はまだマシンの仕上がりという部分で完ぺきではない部分が残っているようです。しかし、これまでの戦績を引き合いに出すまでもなく、どちらも優れた実力を有したチームであることは明らかです。幸い、今季はブリヂストン・タイヤの仕上がりも良好なので、彼らにも#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTに負けない好成績を期待しています。

以上の3チームに比べると、#8 ARTA NSX CONCEPT-GT(ヴィタントニオ・リウッツィ/松浦孝亮組)と#32 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)は苦戦を強いられています。ただし、一部のチームが突出して強いだけではタイトルを狙えません。やはり、Hondaとして有力チームを少なくとも4チームは持っていたいので、両チームの躍進が強く期待されていることは言うまでもありません。

またHondaファンの皆さんのため、そして私たち自身のプライドのためにも、全身全霊を傾けて状況の改善に取り組んでいきますので、引き続きのご声援をどうぞよろしくお願い申し上げます。