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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.82 rd.2 富士プレビュー 富士で繰り広げられる超高速バトルに挑む5台のNSX CONCEPT-GT “跳ね”と“重量差”への対策が上位進出の鍵を握る

NSX CONCEPT-GTのデビュー戦は幕を閉じましたが、息つくひまもなく第2戦富士大会を迎えることになります。このレースに備えて、3月23〜24日に14台のGT500クラス車両が参加したテストが、富士スピードウェイで行われました。

2日間の総合成績で見ると、Honda勢では1分31秒299を記録した#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/ジャン・カール・ベルネ組)の10番手がトップで、#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘組)は1分31秒409で12番手、#8 ARTA NSX CONCEPT-GT(ヴィタントニオ・リウッツィ/松浦孝亮組)は1分31秒752で13番手、#32 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)は1分32秒098で14番手という結果に終わりました。なお、今回のテストに#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/武藤英紀組)は参加していません。4台のNSX CONCEPT-GTに大きなトラブルがなく、順調に走行距離を伸ばせたことは大きな収穫でしたが、今回のテストでベストラップを出したライバルに1.6〜2.4秒の大差をつけられたことは大変残念でした。

このテストでは、第1戦岡山国際大会で発生したのと同じ“跳ね”の症状が強く出ていました。その理由については、まだ完全に解明されたわけではありませんが、新規則の導入にともなって使用が義務づけられた標準ダンパーの使い方になんらかの原因があるとも考えられます。とはいえ、このダンパーの性能に決定的な問題があるということではなく、その特性を生かした使い方を、今後我々が習得していかなければならないと理解しています。その対策については、富士スピードウェイでの走行データがあるので、これを解析していけば打開策が見つかるものと期待しています。

これと関連して、私たちは現在、サスペンションのジオメトリーを煮詰める作業を進めています。サスペンション・ジオメトリーとは、タイヤが上下にストロークした際の軌跡を意味するもので、この設定によって足回りの特性は大きく変わります。新規則では、サスペンション・ジオメトリーのホモロゲーション(認証作業)を5月までに終わらせることと規定されています。つまり、それまではいろいろなサスペンション・ジオメトリーを試すことができますが、ホモロゲーションを得た5月以降は一切、変更することができなくなります。したがって、“跳ね”の症状を押さえ込む最適なジオメトリーをいち早く見つけ出し、この期限までにホモロゲーションを取得することが重要になっているのです。

このほか、富士スピードウェイではほかのサーキットとは異なるローダウンフォース・ロードラッグ仕様のエアロダイナミクスを投入することが認められています。Hondaも第2戦を見据えて富士仕様の空力パッケージを開発していますが、3月に行われたテストの段階では、ライバルチームに比べてストレートスピードでまだ差をつけられている状況でした。一方、これまでHondaが得意としていたコーナー主体の第3セクターでは、性能調整によってライバルよりも70kg重いために加速が鈍く、この部分でもライバルに対するアドバンテージを手に入れられない状況となっています。これらの問題に対しても、重量配分を最適化する一方、エンジン・マネージメントを煮詰めてエンジン・レスポンスを改善することで、70kgの重量ハンディを少しでも取り戻すことを目標に作業に取り組んでいるところです。

こう書き連ねていくと、あまり明るい材料がないように思われるかもしれませんが、5月3〜4日に開催される第2戦富士大会までには、ツインリンクもてぎとオートポリスでテストを実施する予定になっています。残念ながら、そこで第2戦富士大会を見据えたテストばかりを行うわけではありませんが、さまざまなデータを収集する中で、跳ねの問題、そして70kgの重量差の問題を解消する糸口が見つかるものと考えています。こうした地道な作業を続ける中で、一刻も早くライバル勢を上回るパフォーマンスを手に入れ、ファンの皆さんへのご期待に応えるつもりでおります。

ゴールデンウィークの時期は富士周辺も爽やかな天候に恵まれ、絶好のレース観戦日和となることでしょう。どうかご家族やご友人と連れだって富士スピードウェイに足を運び、力走する5台のNSX CONCEPT-GTに熱い声援をお送りください。どうぞよろしくお願い申し上げます。