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GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポートvol.81 rd.1 岡山国際レビュー デビュー戦で5台のNSX CONCEPT-GTが揃って完走 今後に向けての課題が明らかになる

開幕戦の岡山国際大会が終わりました。Honda勢の成績は、予選では#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘組)の7番手がベストで、決勝では5台のNSX CONCEPT-GTが揃って完走したものの、最高位は#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/ジャン・カール・ベルネ組)の5位という結果でした。常に勝利を目標に戦っている私たちにとって、残念な結果であることはいうまでもありません。

なぜ、このような結果に終わってしまったかというと、3月に岡山国際サーキットで行われた合同テストのときには発生しなかった「マシンが跳ねる」症状が、多かれ少なかれ5台のNSX CONCEPT-GTに揃って表れたことが大きな原因でした。この症状は、路面の周期的なうねりにボディーやサスペンションが共振を起こすような形で発生するもので、これがブレーキングポイントで起きれば安定した接地性が得られずにタイヤがロックする傾向が強まり、結果として制動距離が伸びてしまうほか、コーナリング中や加速時にもボディーが不安定に動き続ければマシンの性能を十分に発揮できなくなります。

この問題が、なぜ今回に限って発生したのかはまだ明らかになっていません。ただし、他メーカーの中にも同様の症状に苦しむチームはあったので、Hondaだけ、NSX CONCEPT-GTだけに起きた問題とはいえないでしょう。とはいえ、マシンが跳ねれば本来のパフォーマンスを発揮できなくなるのは明らかなので、この点は早急に解決しなければいけないと考えています。

一方、今回の開幕戦でHondaを苦しめた要因がもうひとつあります。それは最低重量に関する規定で、レクサスRC FとニッサンGT-Rは最低重量が1020kgなのに対し、NSX CONCEPT-GTは1090kgとされた点にあります。つまり、NSX CONCEPT-GTはライバルよりも70kg重い状態で戦っているのです。

これは、ミッドシップ・レイアウトとハイブリッド・システムを採用しているNSX CONCEPT-GTと、フロント・エンジン後輪駆動でハイブリッド・システムを持たないRC FやGT-Rとの性能差を埋めるために実施されたものであり、一般的に性能調整と呼ばれています。70kgの性能調整を行うことはすでに私たちも受け入れているので、それに対する不服を申し立てるつもりはありませんが、やはりこれだけ車重が重いと互角に戦うのは容易ではありません。そこで車重が重くても十分な性能を発揮できるサスペンション・セッティングを検討するなど、現在、その対策を懸命に練っているところです。跳ねの問題を含め、これらに対する適切な対応策が実施できれば、NSX CONCEPT-GT本来のパフォーマンスが発揮でき、より上位を狙えるようになると考えています。

それでは、5台のNSX CONCEPT-GTがどのように開幕戦岡山国際大会を戦ったのか、順に振り返ってみることにしましょう。

今回、Honda勢最上位となった5位の#18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT、そして6位の#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTは、いずれも跳ねの症状が比較的軽かったことがこの成績につながったといえます。とはいえ、今回がSUPER GT初参戦となったベルネ選手は、GTマシンのドライビングにまだ馴れていないこともあって、スティントの終盤に向けて徐々に安定した走りをみせてくれるようになりました。この走りが早い段階からできるようになれば、チームとしての成績もより向上するはずなので、今後が大いに楽しみです。一方の#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTは、決勝当日のフリー走行から急にハンドリング特性が安定しない症状が発生するようになり、決勝レースでもこの問題に苦しんだため、思うような追い上げを図ることができませんでした。いずれにせよ、両チームとも今後のさらなる躍進が期待されます。

#8 ARTA NSX CONCEPT-GT(ヴィタントニオ・リウッツィ/松浦孝亮組)は予選12番手、決勝8位と、不振に苦しんでいた昨年までとは大きく異なる活躍をみせてくれました。これからの躍進に期待したいと思います。
#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/武藤英紀組)は跳ねの症状が最も激しく表れた1台で、このためドライバーもチームも本来の力を発揮できず、予選14番手、決勝9位となりました。しかも、決勝レースではブレーキ温度とタイヤ空気圧が想定以上に高くなるというトラブルにも見舞われてしまいます。とはいえ、チーム、ドライバーとも優れた実力を有しているので、第2戦以降はこれまでと同じように上位進出を果たしてくれるでしょう。

#32 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)は予選、決勝ともに15位に終わりました。レース前半、ステアリングを握る中嶋選手は13番手までポジションを上げましたが、後続車両に接触されて左リアタイヤがパンク。このタイヤを交換するためにピットストップしたほか、接触の衝撃でボディーにもダメージが及んでいた関係で、さらにもう1度ピットストップするなどして大きく遅れてしまいました。次戦での雪辱を期待したいところです。

いずれにせよ、5台が揃って完走し、うち4台が入賞したことは、今後の対策を練るために必要なデータを収集する上で、非常に大きな意味のあることでした。これらを有効に活用し、早く優勝争いに加われるよう努力してまいりますので、引き続き5台のNSX CONCEPT-GTに熱い声援をお送りくださいますよう、お願い申し上げます。