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SUPER GT 2013 GTプロジェクトリーダー 松本雅彦 現場レポート
vol.74 Rd.8 もてぎプレビュー 最終決戦に挑む5台のHSV-010 GT 有終の美を飾るべく、全力でもてぎ戦に臨む

 今年も、最終戦の舞台はHondaのホームグラウンドであるツインリンクもてぎとなります。我々のもう一つのホームグラウンドである鈴鹿サーキットとは対照的に、もてぎは基本的にストップ&ゴーのコースレイアウトで、中高速コーナーはあまりありません。このため、フルブレーキング時のスタビリティー、コーナー立ち上がりでのトラクション、そしてエンジンのドライバビリティーなどが重視されます。言い換えれば、優れたコーナリング性能を誇り、大きなダウンフォースを生み出すHSV-010 GTには有利なサーキットといえるでしょう。また、現在のHSV-010 GTに搭載されているエンジンは「HR10EG」の最終バージョンですが、そのパフォーマンスには絶対の自信があります。従って、Hondaは優勝を最大の目標として最終戦もてぎ大会に臨むことになります。

 SUPER GTの最終戦には、ほかのシリーズ戦では見られない、いくつかの特徴があります。一つは、シリーズポイントに応じて課せられてきたハンディウエイトが完全になくなること。第7戦オートポリスではハンディウエイトがそれまでの半分になり、効力も半減しましたが、これがゼロになるのですからその影響は見逃せません。実力のあるマシンが、その本当の速さを見せつけることができる。これは最終戦の大きな魅力といえるでしょう。

 もう一つの特徴は、レース距離が250kmとなることです。通常のシリーズ戦より50km短いだけですが、これもレース戦略に大きく関わってきます。例えば、レース距離が短ければ、決勝中の追い上げは当然、難しくなる。そうでなくとも、もてぎでの追い越しは難しいので、予選結果がいつも以上に重要な意味を持ちます。この点からいえば、予選一発の速さを持っているチームは有利、そうでないチームはやや不利となります。

 チャンピオン争いに目を向けると、#18 ウイダー モデューロ HSV-010(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ組)と#17 KEIHIN HSV-010(塚越広大/金石年弘組)の2台がトップと6点差の3位、4位で並んでいます。SUPER GTでは優勝したドライバーに20点、2位に15点、3位に11点が付与されますが、たとえHondaチームのどちらかが優勝しても、現在ポイントランキングトップのライバルチームが2位に入れば、タイトルは1点差で彼らのものとなります。つまり、現状では自力優勝のチャンスが残されていないのです。これは大きなディスアドバンテージですが、仮に#18 ウイダー モデューロ HSV-010もしくは#17 KEIHIN HSV-010が優勝し、2位にもHonda勢が入れば、自分たちの力でタイトルを勝ち取った形となります。従って、我々にとっては1-2フィニッシュが本当の意味で理想的な結果ということが言えます。

 一方、先日もてぎで行われた合同テストではブリヂストン勢の好調ぶりが目につきました。「暑ければミシュラン、涼しければブリヂストン」というのがこれまでの定説でしたが、今季のブリヂストンは暑い時期にミシュランと接戦を繰り広げた上、涼しいときの優位性は引き続き確保しているようです。また、今回のテストは時期の割には気温が高く、ミシュラン勢が持ち込んだタイヤがこのコンディションにマッチしていなかったことも、彼らのポジションを押し下げる一因となったように思います。もっとも、ミシュランもこのまま黙って引き下がるはずはありませんし、最終戦もてぎには総力を挙げて挑んでくるはずです。おそらくは、レースウイークのコンディションにぴったり合ったタイヤを用意してくれることでしょうが、それを事前に試していないことはチームにとって無視できないハンディとなります。こういったことを勘案すると、実力的には五分五分のミシュランとブリヂストンですが、最終戦に限ってはややブリヂストンが有利となるかもしれません。

 では、5台のHSV-010 GTが最終戦もてぎ大会でどんな戦いぶりを見せるか、ここで順に予想してみることにしましょう。

 シーズン中盤までタイトル争いをリードしてきた#100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/小暮卓史組)はもともと高いポテンシャルを備えたチームなので、今回も優勝が望めます。とりわけ、最終戦ではハンディウエイトが0kgとなることと、ブリヂストンタイヤを装着していることは、彼らにとって有利に働くはずです。ここ数戦は不運に見舞われてきた#100 RAYBRIG HSV-010ですが、それさえなければ期待通りの成績を収めてくれるはずです。Honda勢の本命として推しておきます。

 同じブリヂストンタイヤを履く#17 KEIHIN HSV-010も実力はあり、優勝候補の一つに数えられますが、予選でのパフォーマンスにはかすかに不安が残ります。前述の通り、最終戦もてぎ大会ではいつもにも増して予選結果が重要となります。従って、#17 KEIHIN HSV-010が栄冠を勝ち取れるかどうかは、予選でどのような成績を残すかにかかっているといえます。

 シーズン後半に向けて尻上がりに調子を上げてきた#18 ウイダー モデューロ HSV-010にも優勝のチャンスはあります。ただ、テストで試していない新しいタイヤでレースウイークを迎えると見られることは不安要素となります。もっとも、これまで短期間でミシュランタイヤを履きこなすことに成功し、もともと開発力の高いチームなので、この点は問題なく克服してくれると期待しています。

 #8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/松浦孝亮組)は、第7戦オートポリス大会のレース序盤に力強い走りを見せてくれたことで、マシンが復調傾向にあることが改めて確認できました。最終戦ではシーズン前半にたまったうっぷんを晴らすようなパフォーマンスを発揮してほしいものです。

 #32 Epson HSV-010(道上龍/中嶋大祐組)は引き続きコンディションとタイヤのマッチングが課題です。昨年の最終戦でも雨のレースで表彰台を勝ち取ってくれたので、2年連続の表彰台獲得を期待したいところです。

 すでにご存じの通り、Hondaは2014年からSUPER GTに参戦予定のNSX CONCEPT-GTを投入しますので、HSV-010 GTが公式戦を戦うのは今回が最後となります。デビュー初年度にタイトルを勝ち取ったものの、その結果を2年目、3年目につなげられず、成績の面でやや伸び悩んだことは否めません。ただし、今季はこれまで3勝を挙げるとともに、前述の通りタイトル獲得の可能性も大きく残しています。

 その一方で、一レースごとに勝ちにこだわっていくこともHondaらしい戦い方だと思います。ですから、チャンピオンシップにこだわりすぎることなく、まずは全力でレースに挑む。その結果としてタイトルを獲得できたら、これ以上うれしいことはないと考えています。優勝を目指して最終戦もてぎ大会に臨む5台のHSV-010 GTに熱いご声援をお送りください。どうぞよろしくお願い申し上げます。