モータースポーツ > 全日本選手権スーパーフォーミュラ > 第7戦 鈴鹿サーキット > 決勝
2013年11月10日(日)・決勝 会場:鈴鹿サーキット(5.807km) 天候:雨
気温:レース1/14℃(10:30時点)、レース2/16℃(15:00時点)
路面温度:レース1/16℃(10:30時点)、レース2/16℃(15:00時点)
コースコンディション:レース1/ウエット、レース2/ウエットのちドライ、のちウエット
決勝レース:レース1/20周、レース2/28周 観客:1万1000人(主催者発表)
11月10日(日)、三重県鈴鹿市稲生町の鈴鹿サーキットにおいて、2013年全日本選手権スーパーフォーミュラ シリーズ第7戦(最終戦)の決勝レースが開催されました。決勝レースは20周のレース1と28周のレース2が別々に行われる変則的な2レース制が採られました。
9日(土)の予選では、#16 山本尚貴選手(TEAM 無限)がレース1、レース2ともポールポジション(PP)を獲得したほか、レース1では#31 中嶋大祐選手(NAKAJIMA RACING)が2番手、#32 小暮卓史選手(NAKAJIMA RACING)が3番手につけ、レース2でも#32 小暮選手が3番手につけるなど、Honda勢は快調に公式予選を終えました。
シリーズチャンピオン逆転奪取の可能性を残す#16 山本選手は、連続PPを獲得してトップとのポイント差を11ポイントへと縮めました。依然、タイトル獲得には厳しい状況ですが、今日の決勝レースで優勝1回、2位以上1回でトップとのポイント差を逆転することができます。また、優勝と3位の場合はトップと同点となりますが、選手権規定では同点の場合、1大会で獲得したポイントが多い選手を上位とすると定められており、この場合でも逆転チャンピオンとなります。つまり、タイトル獲得には優勝1回と表彰台1回を獲得することが条件となります。
前夜から鈴鹿地方の天候は悪化し、鈴鹿サーキットは朝から雨となって路面はウエットコンディションとなりました。あいにくの雨にもかかわらず、シリーズチャンピオン決定の様子を観戦するため、多くのファンが鈴鹿サーキットに詰めかけました。
決勝レース1に先立ち、午前9時45分から8分間のフリー走行が行われました。雨はいったん止んではいるものの、コースはウエットコンディションです。決勝レースに向けてセッティングを行うには非常に難しい状況ですが、Hondaドライバー勢では2番手に#32小暮選手、7番手に#31 中嶋選手、9番手に#10 塚越広大選手(HP REAL RACING)、10番手に#15 佐藤琢磨選手(TEAM 無限)、11番手に#16 山本選手、12番手に#40 伊沢拓也選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、17番手に#11 中山友貴選手(HP REAL RACING)、18番手に#41 武藤英紀選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)というタイムが記録され、決勝へと臨みます。
フリー走行に続けて、レース1の決勝が10時34分から行われました。スターティンググリッドは、PPに#16 山本選手、2番手に#31 中嶋選手、3番手に#32 小暮選手、8番手に#10 塚越選手、10番手に#15 佐藤選手、12番手に#40 伊沢選手、17番手に#11 中山選手、18番手から#41 武藤選手がそれぞれスタートします。
雨は止んでいますが、路面は濡れており、全車レインタイヤを装着してスタートに臨みました。スタート合図の瞬間、PPの#16 山本選手はうまく加速しましたが、2番手の#31 中嶋選手はスピードが乗らず、その間に3番手の#32 小暮選手がオーバーテイクを果たしました。水しぶきが高く上がり、ほとんど前が見えないような状況となったため、上位陣は無事に第1コーナーを抜けることができましたが、中位陣は混乱が起き、#10 塚越選手はその混乱に巻き込まれてコースから飛び出し、レースを終えてしまいました。また、#15 佐藤選手もスタート加速でエンジンをストールさせてしまった影響で、最後尾まで順位を落としてしまいました。
水しぶきのあがるコンディションで先頭に立った#16 山本選手は、オープニングラップのうちに#32 小暮選手を大きく引き離して最終コーナーのシケインへ飛び込みました。ところがここで#16 山本選手は姿勢を崩し、コースオフ。コースには復帰できたものの、#32 小暮選手に先行を許します。
水しぶきを浴びる立場になった#16 山本選手は追撃を始めましたが、2周目のヘアピンの立ち上がりで先頭を走る#32 小暮選手が突然失速し、#16 山本選手は首位を奪い返しました。#32 小暮選手のマシンには燃料系のトラブルが発生しており、そのままスロー走行をしてピットへ帰還しました。
レースが落ち着いた3周目の順位は#16 山本選手がトップ、#31 中嶋選手が2番手、#40 伊沢選手が6番手、#11 中山選手が11番手、#41 武藤選手が12番手、#15 佐藤選手が14番手と続きます。
先頭に立った#16 山本選手はベストタイムを連発しながら、周回ごとに#31 中嶋選手を引き離して独走状態へ持ち込みました。その後、#16 山本選手は危なげなくレースをまとめ上げ、先頭でチェッカーフラッグを受けて、初優勝を飾りました。これはTEAM無限にとっても初めての国内トップフォーミュラにおける優勝でした。
2位には#31 中嶋選手が続き、これも初めての表彰台に上がることとなりました。9位には、スタートで順位を下げながら、その後着実に追い上げを行った#15 佐藤選手が続き、10位で#40 伊沢選手、11位で#11 中山選手、12位で#41 武藤選手が完走を果たしました。
そして午後2時、レース2に先駆けて8分間のフリー走行が行われました。雨は止み、コースが乾き始めているコンディションで、各マシンはタイヤとセッティングの選択をここで行いました。このフリー走行では、2番手に#32 小暮選手、7番手に#31 中嶋選手、9番手に#10 塚越選手、10番手に#15 佐藤選手、11番手に#16 山本選手、12番手に#40 伊沢選手、17番手に#11 中山選手、18番手に#41 武藤選手というタイムが記録され、レース2への準備を行いました。
レース2のスターティンググリッドは、PPに#16 山本選手、3番手に#32 小暮選手、4番手に#40 伊沢選手、6番手に#31 中嶋選手、9番手に#15 佐藤選手、14番手に#10 塚越選手、17番手に#11 中山選手、18番手に#41 武藤選手です。レース1で逆転タイトルの条件の1つである優勝を果たした#16 山本選手は、このレースで3位以上を狙います。
レース2では、レース中に1回のタイヤ交換ピットストップが義務づけられます。上位陣はレインタイヤでのスタートを選択し、午後2時33分にスタート合図を迎えました。スタートでは#16 山本選手が、好スタートをきった#32 小暮選手を抑え込んで首位をキープしました。さらに#15 佐藤選手も好スタートを切ったものの、スプーンカーブでオーバーランして順位を下げてしまいました。
路面はすでに予想以上の早さで乾き出していたため、レインタイヤでスタートしたチームの一部は1周を終えたところでピットイン、ドライタイヤに交換しました。首位を走る#15 山本選手は、2周を終えたところでタイヤ交換のためのピットインを行いました。また、これにより首位に立った#32 小暮選手も3周を終えたところでピットイン、タイヤ交換を行いました。
その後も、レインタイヤ勢は続々とピットインし、ドライタイヤへの交換を行いました。当初からドライタイヤを装着していたマシンは、周回数を重ねてピットインをレース後半へ引き延ばしたため、10周目の見かけ上の順位は、#16 山本選手は7番手、#32 小暮選手は8番手、#40 伊沢選手が10番手、#41 武藤選手が11番手、#15 佐藤選手が12番手、#31 中嶋選手が13番手、#10 塚越選手が15番手、#11 中山選手が17番手と続きます。
20周目を前に再び雨が降り始め、路面が濡れ始めました。20周目の順位は#16 山本選手が4番手、#32 小暮選手が5番手です。ただ、タイヤ交換ピットインを引き延ばしたマシンが上位に1台いるため、このままレースが終われば、#16 山本選手は3位に入賞してポイントランキングトップに同点で並び、競技規則の規定で逆転シリーズチャンピオンが決定します。
しかし、雨が強まり、波乱が起きます。まず首位を走っていたマシンにトラブルが発生、その後コースアウトしてレースから脱落します。タイヤ交換を引き延ばしていたマシンはフィニッシュ直前の27周目にピットインしたため、#16 山本選手は2番手へ順位を上げましたが、27周目のシケインでオーバーランしてしまい、#32 小暮選手が前へ出ました。#16 山本選手は最終ラップの第1コーナーで#32 小暮選手を抜き返しますが、またもや勢い余ってオーバーラン、再び#32 小暮選手が2番手、#16 山本選手が3番手となりました。#16 山本選手の後方にはそれを上回るペースで追い上げるマシンが迫っており、オーバーランからコースに復帰した#16 山本選手は、追いつかれないようにペースを戻して最後のラップを走りきりました。
#32 小暮選手は2位でチェッカーフラッグを受け、その1秒122後で#16 山本選手が3位でフィニッシュを果たしました。背後に迫った4位の選手とは、わずか0秒538という僅差でした。#15 佐藤選手は8位に入賞、#40 伊沢選手が9位、#41 武藤選手が10位、#31 中嶋選手が11位、#11 中山選手が12位で完走を果たしました。#10 塚越選手は24周目のシケインで接触からスピンオフし、レースを終えて完走規定周回数を満たすことはできませんでした。
3位に入賞した#16 山本選手は選手権ポイントを3点加え、レース1及びレース2のPPで得た2点とレース1の優勝で得た8点を合算した結果、この最終戦で選手権ポイントを13点獲得し、総計37点としました。これで前戦までランキングトップにいた選手に並びましたが、選手権規定にならい、今大会で13点を獲得した#16 山本選手が逆転でシリーズチャンピオンとなりました。#16 山本選手にとっては初めての王座でした。また、5シーズンにわたった現行規定によるシリーズで、Honda製エンジンを使用したドライバーでは、2009年のロイック・デュバル選手以来のチャンピオン獲得の快挙を果たしました。
坂井典次(Tenji Sakai) | 「HR12E」開発責任者「最後には雨が降ってきましたが、スタート前、山本選手には『自分とマシンを信じて行け』と声をかけてレースに送り出しましたので、心配はしていませんでした。このエンジンにとって最後のレースでしたが、最高の締めくくりになりました。これはドライバーのがんばりがあってこその結果です。マシンを開発してきた者として、この上ない喜びを感じています。我々はドライバーからの情報をベースとするわけですが、弱点をどうカバーできるか、長所をどう伸ばすかと考える際、今年は山本選手が積極的にいろいろな方面から大変多くの要因を突き詰めてくれました。彼がいろいろな積み上げをしてくれて、こういう結果が出せました。本当によくやってくれたと言いたいです」
山本尚貴選手(優勝/3位 #16 TEAM 無限)「レース1では結果的にラッキーな面もあって、トップに出られました。でもその後は、本当にマシンの調子がよかったので優勝できました。レース2ではスタートがうまく決められました。ただ、コースが乾いていることは感じたのですが、決断を1周遅らせてしまったのが響いてしまいました。途中、ペースが上がらなくて、半ばあきらめかかったのですが、そこであきらめないでよかったです。もちろんチャンピオンを取りたいと思ってこの週末に臨みましたが、条件的には非常に厳しいなと思っていました。でも土曜日の走り始めからマシンの調子がよかったので、これはいけるかもしれない、と希望が出てきました。でもまさか本当に取れるとは思いませんでした。マシンもエンジンもすばらしかったです。すべてが噛み合ったからこそ、たどり着いたチャンピオンだと思います」
中嶋大祐選手(2位/11位 #31 NAKAJIMA RACING)「今シーズンはずっと、表彰台を目標に戦ってきました。今日それが達成できましたが、感想としては思ったほどうれしくありません。なぜかというと、山本選手が予選、レース1ともに速すぎて追いつけず、予想以上に差がついてしまったことが悔しいからです。スタートも、ホイールスピンが少し多くて小暮選手に前へ行かれてしまったりして、個人的にはすっきりするレースだったとは言えません。でも、これまでずっと目標にしていた表彰台に上れたのは事実ですし、チームにとっても大きな励みになると思います。僕たちのチームはエンジニアもメカニックも非常に若いメンバーでやっているので、彼らにとってはいい結果だと思います。今後に向けて、やっと優勝を目指して戦うための準備が整ったかな、という手応えは感じています」
小暮卓史選手(リタイア/2位 #32 NAKAJIMA RACING)「レース2については、着実にレースが運べたので結果的にはよかったのですが、ちょっと不完全燃焼でした。最初に使ったレインタイヤのペースが予想以上に上がらなかった上、(ライバルが使った)ドライタイヤがあんなに早くタイムを出し始めるとは思いませんでした。もっと早く交換して積極的な作戦に出るべきでした。チャンピオンになった山本選手には、おめでとうと言いたいです。僕もずっと取りたいなと思ってきたタイトルを後輩に取られてしまった形ですけれど、チャンピオンにふさわしい走りでしたね。僕の今シーズンは、何度か不運に見舞われてしまいました。それがなければチャンピオン争いにも残れたと思うので残念です」
順位 | No. | ドライバー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 16 | 山本尚貴 | Honda | 20 | 38:52.509 |
2 | 31 | 中嶋大祐 | Honda | 20 | +8.608 |
3 | 19 | J.P.デ・オリベイラ | トヨタ | 20 | +10.877 |
4 | 20 | 松田次生 | トヨタ | 20 | +11.958 |
5 | 38 | 平手晃平 | トヨタ | 20 | +14.906 |
6 | 7 | 平川亮 | トヨタ | 20 | +15.596 |
9 | 15 | 佐藤琢磨 | Honda | 20 | +39.435 |
10 | 40 | 伊沢拓也 | Honda | 20 | +45.131 |
11 | 11 | 中山友貴 | Honda | 20 | +46.395 |
12 | 41 | 武藤英紀 | Honda | 20 | +47.908 |
RT | 32 | 小暮卓史 | Honda | 12 | +8Laps |
RT | 10 | 塚越広大 | Honda | 0 | +20Laps |
順位 | No. | ドライバー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 中嶋一貴 | トヨタ | 28 | 50:24:755 |
2 | 32 | 小暮卓史 | Honda | 28 | +20.603 |
3 | 16 | 山本尚貴 | Honda | 28 | +21.725 |
4 | 7 | 平川亮 | トヨタ | 28 | +22.263 |
5 | 8 | A.カルダレッリ | トヨタ | 28 | +23.356 |
6 | 2 | J.ロシター | トヨタ | 28 | +29.130 |
8 | 15 | 佐藤琢磨 | Honda | 28 | +1:12.541 |
9 | 40 | 伊沢拓也 | Honda | 28 | +1:16.478 |
10 | 41 | 武藤英紀 | Honda | 28 | +1:18.478 |
11 | 31 | 中嶋大祐 | Honda | 28 | +1:22.523 |
12 | 11 | 中山友貴 | Honda | 28 | +1:24.308 |
RT | 10 | 塚越広大 | Honda | 23 | +5Laps |
順位 | No. | ドライバー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 16 | 山本尚貴 | Honda | 37 |
2 | 2 | A.ロッテラー | トヨタ | 37 |
3 | 8 | L.デュバル | トヨタ | 31 |
4 | 1 | 中嶋一貴 | トヨタ | 24 |
5 | 19 | J.P.デ・オリベイラ | トヨタ | 19 |
6 | 20 | 松田次生 | トヨタ | 18.5 |
7 | 40 | 伊沢拓也 | Honda | 15 |
8 | 32 | 小暮卓史 | Honda | 15 |
12 | 31 | 中嶋大祐 | Honda | 6 |
15 | 10 | 塚越広大 | Honda | 3 |
17 | 11 | 中山友貴 | Honda | 1 |
18 | 15 | 佐藤琢磨 | Honda | 0.5 |
- | 41 | 武藤英紀 | Honda | 0 |
- | 15 | 小林崇志 | Honda | 0 |