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デビューしたときのS2000は、「世界一速い2.0リッターFRスポーツカー」を明確にめざしたクルマでしたね。より多くの人に・・というより、Hondaらしく、尖ったリアルスポーツカーをめざしたクルマ。「腕に覚えのない方は、おとなしく走ってください」と言わんばかりの、ある意味、乗り手を選ぶほどのクルマです。
限界域を上手くコントロールできる人は、サーキットなどでも攻められますが、そうでない人は、スピンをしたり、カウンターステアが間に合わないほどの尖ったクルマでした。おそらく世界中の自動車メーカーに、オープンでこれほどのリアルスポーツをつくる技術がHondaにはあるのだということを、インパクトを持って示したクルマでした。
そのHondaらしいインパクトを与えたあと、高い限界性能を保ったままコントロール性の幅を広げていくように進化を続けていきました。氷山のように尖った頂を、高さを保ちながら平らにしていくようなイメージです。限界域でのドライバーへのインフォメーション、そのわかりやすさを大幅に高めていきましたね。エンジンが2.2リッターになってさらに乗りやすくなり、イメージとしては、ピュアスポーツカーをストリートカーにしていった進化だと思います。
さらに最終モデルで、VSAが標準装着となり、より乗る人の幅を広げた。VSAがあれば、ドライビング・ミーティングなどに参加して安全な場所で攻めていったときに、スキルがそれほどでなくてもカウンターステアを当てる経験ができる。「スポーツカーに乗ったのだから、一度はカウンターステアを当ててコントロールしてみたい」という人にも、S2000を楽しみやすくする進化です。
さらに、追加されたTYPE Sは、S2000本来の速さとレスポンスのよさを削らずに、よりコントロール性のいいハンドリングを実現したモデル。だから、最終モデルが一番乗りやすい、より多くの方に安心して楽しんでもらえるS2000になりました。
スポーツカーに乗りたい人に夢を与え、さらにその次の段階である、S2000を楽しむ場を提供したことは、まさにHondaらしいですし、とてもいいことだと思います。僕も何回か先生をやらせていただき、参加者とS2000のドライビングを楽しみました。
生産が終了することは、率直に残念だと思います。でもHondaは、あくまでもスピリットの根底はスポーツであり、レースが好きな会社であると僕は思っていますし、これで終わりではないと思っています。
ですから、今は、もう一度「スポーツのHonda」という柱を立て直す「布石となる生産終了」だと思います。寂しい気持ちもありますが、今は我慢する時期なのだと思います。「次」のために・・。Hondaがつくるスポーツカーは、必ず世界にインパクトを与えますから、今から楽しみですね。ファンのみなさんも待ち続けてくれることでしょう。
1956年生まれ。1977年の富士フレッシュマンレースでレースデビューを果たし、グループA、全日本F3選手権、全日本ツーリングカー選手権などで活躍。1994年にNSXでル・マン24時間レースに参戦。1995年にはNSXに乗り、高橋国光氏とともにル・マン24時間レースでクラス優勝を果たす。NSXでの全日本GT選手権参戦を最後に2003年でレーシングドライバーを引退。現在はレーシングチームのアドバイザーを中心に、多方面で幅広く活躍している。