自ら進んで公差ゼロをめざす。その姿勢が匠ドリーム。

組立工程 元永昭人

1985年、鈴鹿製作所入社。No.1ラインで、シビックをはじめとし、CR-X、インテグラ、3ドアのシビック TYPE R、ストリームなどのインテリアの組み立てに携わる。入社21年を経て、約2年半前、2006年の12月にNSXの生産を終え、S2000のみを製造するTDラインの組み立て部門のユニットリーダーとなる。

作業ボリュームでいいますと、大量生産の組み立てラインでは50人で分担して行う作業を、TDラインではひとりで行うイメージです。組み立て作業における理想は、機能別に担当を分け保証できる体制を持つことです。TDラインではひとり一人の作業量は多くありますが、その理想を実現しています。たとえば、サスペンションを組み込む作業をひとりで行い、その部分の機能はその技術者に委ねられます。したがって責任は重大ですが、大いにやりがいがあるわけです。

そしてそのやりがいは、技術者のプライドへとつながります。どんな作業にも許容される公差というものがありますが、TDラインの技術者は、自分のプライドにもとづきその公差を限りなくゼロに近づけるんです。目に見えない部分まで。そのこだわりの姿勢には感動すら覚えました。
たとえばヘッドライトを取付ける際、まずフェンダー面に合わせて取付け、それから上面のずれをなくし、さらにバンパーを付け、もう一度バンパー面を含めた調整を行う。さらに左右で均等に合せ込んでいく。時間にして1台で20〜30分はかかる作業です。同じことをテールランプでもやりますし、すべての組み付け部品について同様のこだわりで作業します。まさに匠の技が込められたクルマなのです。

こうしたこだわりは、ルールで決められたものではなく、「自分はHondaの特別なスポーツカーをつくっている」というプライドから自然に生まれてきたものです。「この工程作業の技術力では世界で誰にも負けない」という誇りと、後工程の技術者が見ても納得できるものでなければダメだという想いによるものです。まして、機能別に責任を持っていますから、自分が納得いく組み立てを行わないとお客様に申し訳ないという強い責任感があるのです。

エンジンの組み付けひとつとっても、リフターで持ち上げるだけで、あとは技術者が自分の技量でアジャストし、高い精度でドッキングします。その技をご覧になったら驚くと思います。まさに「人」の技で組み立てるクルマと言っても過言ではないと・・。
仕事が終わってコーヒーを飲んで雑談していても、すぐに組み立ての真剣な話になるくらいで、技術者が自ら「こうしたい」と提案を行うのは日常茶飯事。本当に熱い職場ですね。また、治具や工具を作業にあわせて自作する技術者が多く、たとえ前任者が使っていた治具や工具を渡しても、自分がつくったものでないと納得できず使わないくらい出来映えにこだわりが強いメンバーばかり。そんな現場で、S2000はずっとつくり続けられてきたわけです。

組み立ての現場では、HondaのホームページにあるS2000のユーザーズボイスをプリントして掲示板に貼り付けています。それを技術者が見て、技術者ひとり一人がお客様の顔を思い浮かべながら、一台一台心を込めてつくっています。つくりだけでなく、S2000は、部品ひとつ取ってもいいものを使っています。我々が言うのも変ですが、「非常に優れた製品」だと思います。まもなく生産が終了しますが、ぜひより多くの方に手にしていただけたら幸せです。

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