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GO BEYOND ~勝利に向けた3チームの限りなき挑戦を追う~
#5 F.C.C. TSR Honda

「頂点を目指して」

※ ステファン・ブラドルは健康上の理由により参戦を取り止め、代役としてTeam SuP Dream Honda より参戦予定だったジョシュ・フックが起用されることになりました(2017年7月26日)

F.C.C. TSR Hondaの藤井正和監督は、今年の鈴鹿8耐へ向けてのスタートとなった7月5日、6日の合同テストで意気込みを語った。

藤井監督 「待ちに待ったというか、やっぱり8耐は一年に一回しかないじゃないですか、やっと1年経ったかという思いと、また8耐がきたか、という思いの両方ですね。まだ走り始めたばかりで、レースや結果に対してどうこう言えない状況だから浮かれる気持ちはまったくない。今からやるぞ、って気持ちでメラメラと燃えているね。Hondaが作った世界最高峰の新しいマシンになって、なにが変わったかをこの段階(公式テスト1日目)で述べるのはHondaさんに失礼ですが、このマシンで戦えることを楽しみにしていますよ。8耐はお祭り的なイベントという面もあります。でも僕らは違うね、近づいてもなかなかたどり着けない頂上ですよ。とてつもない存在のレースなんです。だから挑戦しがいがある。ライダー、チームのみんな、チームを応援してくれる方々、レースを見てくれるお客さん、関わってくれている人たち、みんなでこのレースを楽しみたいと思うね」

藤井正和監督

近年のF.C.C. TSR Hondaの挑戦は、2015年が優勝まであと一歩手が届かず2位。昨年は7ラップ目に転倒、マシンの修復で大きな時間を失うも、その後は懸命にゴールまで走り抜き18位で終えた。16年のレース後、「あきらめずに走り、今年はル・マン24時間で3位に入って、EWC(世界耐久選手権)でのポイントも獲得できた。来年はこの8耐がEWCの最終戦になりますから、来年に向けてトップに追いつけるようにやりますよ。任せてください」と藤井監督は次を見つめていた。

その藤井監督の視線の先にあったものは、EWCへのフル参戦であった。8耐が終わった約1ヵ月後に開催された、2016-2017シーズン開幕戦のボルドール24時間レースから、新たな挑戦がスタートした。年をまたいで4月のフランスのル・マン、5月のドイツまで連続で5位に入り、シリーズチャンピオンの座も見えていたが、8耐前最後となる4戦目のスロバキアでトラブルを抱え21位という結果に。これで総合ランキングは1つ後退して6位に。鈴鹿での逆転優勝が不可能なポイント差に開いてしまった。

ランディ・ドゥ・プニエ

藤井監督 「EWCはやっぱり厳しかったね。フル参戦してみないと分からないことがたくさんあった。自分たちに足りないことがあるからミスが起こるわけです。また新しい挑戦ですよ。マシンも新しくなりましたし。24時間のレースを経験したら、8時間が短く感じるよね。3分の1しかない。そういう経験がこの8耐で活きてくると思う。耐久レースはライダーやマシンだけではなく、環境とか自然とかいろんな要素が大きく関わってくるレースなんですよ。だから難しいし面白い。トップアスリートが戦うということでは、EWCの中でも鈴鹿が1番ですから、興奮するね」

2日間のテストには、エントリーリストで空欄になっていたライダーが登場。ドミニク・エガーター、ステファン・ブラドルと一緒に走る3人目のライダーとして、チームに加わった。MotoGPでの経験が豊富で、スーパーバイク世界選手権も戦い、今シーズンのEWCでは別のチームでボルドール、ル・マンの両24時間レースで2位、3位と表彰台に上がったランディ・ドゥ・プニエ。36歳のフランス人は8耐に参戦するのはこれで2度目となる。

ランディ・ドゥ・プニエ

ドゥ・プニエ 「このチームでは走れるのをうれしく思っています。3年前に参戦したときは2位という結果だったので今年は優勝を目指したい。この2日間のテストは、まずリズムをつかむのが先決だと考えて走りました。ラップタイムも悪くありませんでしたし、レースに向けてペースアップできる方向が見えてきた。新しいCBRは非常に戦闘力が高いです。ただ大きな違いは、EWCで使用していたピレリから今回はブリヂストンへとタイヤが変わったということです。ブリジストンに慣れることも重要でしたが、コツはつかめましたね。同じチームで走る、ドミニク(エガーター)はこの8耐で表彰台に登壇した選手、ステファン(ブラドル)は元MotoGPライダー。強いライダーが揃いました。8耐はヨーロッパでも有名なレースで、多くの人が知っています。Hondaにとっても重要なレースです。勝つことは僕の夢でもありますから、それを目指します。マシンにも力があるし、F.C.C. TSR Hondaはプロフェッショナルなチームです。トップレベルのパフォーマンスを日本のファンにみせたいですね」

藤井監督も実力派ライダーたちの走りを楽しみにしていた。

藤井監督 「ドミニクは一緒に2年やっていて、今年で3年目だから問題ないと思っています。ステファンは初めての鈴鹿をどう攻略するか、そこが心配ですが、楽しみでもあるんです。プロフェショナルライダーなので、どんな走りでどんな感動を与えてくれるか楽しみですね」

ドミニク・エガーター

3人が揃ったのは翌週7月11日から13日まで行われた決勝ウイーク前の最後となる合同テスト。前回のテストは、ドゥ・プニエがセッティングを進めたマシンをベースに始まった。エガーターは初日から、ブラドルは2日目から参加した。

ドミニク・エガーター

エガーター 「またこのチームで参戦できることをうれしく思っています。素晴らしいチームですし、強いチームメートと走るのが楽しみです。マシンも新しくなりました。今回で4度目と、私が一番8耐の経験がありますから、知っている情報をライダー同士で共有して、可能な限りベストを尽くします」

天気がよく気温が上がる中、全セッション完全にドライで走れた初日のチームベストはドゥ・プニエが記録した2分8秒419。初乗りのエガーターが記録したベストタイムは2分9秒315。この日は18時40分から19時50分までナイトセションも行われた。

ドミニク・エガーター

エガーター 「先週ランディがここでテストをしていますし、基本的には彼がセットアップしたマシンですが、私と彼の好みは合っていて、違和感なく乗れましたね。今日は鈴鹿のコースや、いつも乗っているMoto2より大きなマシンに慣れることに専念しました。ナイトセッションも走れました。コースが明るくライトアップされたMotoGPのカタールラウンドとは違い、ヘッドライトだけで走りますから難しいですね。でもレースでこの状況は約20分だけですから、問題ないと思います」

翌12日は午前中がドライ。午後にスコール的な豪雨があり赤旗中断、再開後はウエットでの走行となった。スーパーバイク世界選手権に参戦中のブラドルは、7月9日のラグナ・セカ戦を終えて慌ただしく鈴鹿入りし、ここからスタート。これでライダー3人が揃った。

ステファン・ブラドル

ブラドル 「8耐に出ることになってとても興奮していますね。鈴鹿もこれが初めてなんです。テレビでは何度も見てきましたし、難しいコースだと話を聞いてきました。自分としては、いつかは出てみたいレースだと思っていたのです。初の鈴鹿だけでなく、耐久レースも初めてですから、ランディやドミニクのアドバイスを聞いて、僕ができる限りのことをやりたい。父(ロードレース世界選手権の250ccクラスでトップライダーだったヘルムート・ブラドル)が鈴鹿を走ったことがありますから、いろいろ説明してくれます。日本と鈴鹿が大好きですから、レースウイークはここに来てサポートしてくれます」


テスト2日目、ドミニク・エガーターが2分7秒700でこの日の総合トップタイムを記録。スイス出身の26歳が確実な速さをみせた。

ドミニク・エガーター

エガーター 「非常にポジティブで、前進できました。新しいCBRは非常に素晴らしいと感じています。いいペースで走れ、確実にいい方向に向かっています。とにかく動きがスムーズなんです。でも、当然まだ完成した状態ではないので、3人のライダーに適したセッティングを見つけていきます」


駆けつけたばかりのドイツ人ライダーのブラドルは、スーパーバイク世界選手権でいつも乗っているマシンとの違いを感じていた。

ステファン・ブラドル

ブラドル 「ピットロードを出て、1コーナーに入っていくときから違いが分かりますね。もちろんタイヤが違いますけれど、それだけでなくマシン全体が違っていて、以前乗ったことがあるMotoGPマシンに近いと感じました。僕はこの高いパフォーマンスがとても好きで、エンジョイしています」

テスト最終日は初日と同様、本番を思わせるような気温で、コースはドライコンディション。F.C.C. TSR Hondaはエガーターとブラドルが精力的に走り込み、本戦に向けて手応えをつかんだ。

F.C.C. TSR Honda

ドミニク 「一日、一日乗る度によくなって、レースに向けて大きくステップアップできました。ライダー3人が求めるセッティングが似ているから、3人とも速いペースで走れています。昨日も2分7秒700まできましたし。ほかの有力チームもとても速いですが、私たちも煮詰めて素晴らしいマシンになっています。ブリジストンタイヤのフィーリングもつかめました。チームメートも調子がいいし、チームは素晴らしいピットワークができます。日本的な考え方だと目標は優勝と言いますが、ヨーロッパ的な考え方はもっと現実的で、余計なプレッシャーがかかることは言わないのですよ。でも勝ちを目指しているのは当然です。Moto2みたいに45分で争うレースとは違い、8時間ですから、いろんなことが起こり、それに上手く対応して走らなければいけない。でも、3日間はとても前向きな結果でしたし、笑顔になれました」

ブラドル 「この暑さの中では初めて、そして難しいこの鈴鹿での走行でしたが慣れてきました。テスト最終日の午前中まで、まだ苦労していたところがあり、ラップタイムを上げるのが難しい状況でしたが、午後に電子制御や車体をライディングスタイルに合うようアジャストして大きく前進しました。特にフロントのフィーリングが改善しました。これで2分8秒台のラップタイムを安定して出せるようになり決勝に向けての自信がつきました。新しいマシン、違うタイヤ、難しいコースですから、ここまで来るのにちょっと時間がかかりました。チームメートと同じラップタイムを出すのが重要だったので、それに集中しました。それでも、までまだまだ勉強しないといけない部分があります。僕はブレーキングが得意だから、強くブレーキできるよう決勝までにもっと改善してパフォーマンスを上げていきたいと考えています。初の耐久レースなので、決勝レースについてはまだまだ予想がつきませんね。レースではプッシュしすぎず確実に走りたいです」

ドゥ・プニエ 「先週から比較してとてもいい方向に向かっていると思います。サスペンションのフィーリングがよくなりました。セクター1で苦戦していた部分で、ほかのトップチームとのギャップを縮められました。現時点のマシンの仕上がりは80%ですね。あと20%は、マシンセッティングが10%、ライダーの走りが10%。私は8耐決勝まで日本に滞在したままなので、来週は一人でテストをします。そこで乗り込みます。ほかのチームの状況やラップタイムを見ていません。とにかくまだまだセッティングに集中して、3人が乗りやすいと感じるものにしたい。そうすれば結果もついてくると思います。ボルドールやル・マンと違い、GPライダーもいるし、スーパーバイクのライダーもいる、地元となる日本人ライダーたちも速い。いつもの感覚をいったんリセットして、新たな気持ちにスイッチオンして戦いたいです。強力なライバルが多いですが、私たちもすごく速いというのは確実なのでいい結果を目指します」

ステファン・ブラドル

ライダー3人が顔を揃えた3日間の合同テストは、エガーターが最終日に記録した2分7秒700で総合4位という結果で終了。昨年の悔しさ、EWCで戦う難しさ、F.C.C.TSR Hondaは一丸となって8時間後のゴールを目指す。

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