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F.C.C. TSR Honda

「世界一をつかむために」

「バイク一筋でやってきたチームで勝ちにいく」― 藤井正和総監督

F.C.C. TSR Hondaは、決勝を走る3人のライダーが、合同テスト初日から顔をそろえた。今年は、4月にフランスのル・マン24時間耐久、6月にポルトガルのポルティマオ12時間耐久に挑んで、ル・マンでは3位と結果を出してからのホームレースである。チーム総監督の藤井正和氏は、いつもに増して自信とやる気がみなぎっている。

藤井: 「やっぱり近づいてくると興奮してくるよね。EWC(FIM世界耐久選手権)に出たのは、ここで結果を出すためでもあるから。24時間や12時間を経験するとスタッフも8時間は短いって感じるだろうね」

世界の耐久を走って人生観が変わったと話す。外に出たことで、鈴鹿8耐がこれまでよりよく見えてきた。そして、自分たちの実力が世界でもトップレベルにあると分かった。逆にそれは鈴鹿8耐で鍛えられてきたおかげでもあると藤井総監督は思っている。そして、今年も暑い熱い夏が始まった。この合同テストでも焦りはない。

藤井:「みんなが集まるのは初めて、あのマシンを走らせるのも初めて。控えめな言い方だけど、一つでも乗り越えて前に進められればいいかな。ダメなものはダメというのを把握して、みんなで調整する。それがこのテストのテーマだね。レコードを作るとか、何秒で走るとかは二の次三の次ですよ」

2009年にST600でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した渡辺一馬。Hondaが4ストローク直列4気筒エンジンを供給している激戦のMoto2クラスを走っている、ドミニク・エガーター。CBR600RRでスーパースポーツ世界選手権(WSS)のトップクラスを走るパトリック・ジェイコブセン。今年、チームに招き入れた3人に共通するのは、4ストローク600ccマシンでの走り方を知り尽くしていること。

藤井:「8耐は準備の時間があまりなく、その決まった中で勝てるパッケージを作らなければいけないからね。600ccの経験で走りのベクトルが同じ方向を向いている3人は狙い通り。うまくいくはずだよ。今日は、とりあえずチームスタッフが寝ずに今朝まで仕上げたマシンを走らせることができてすごくうれしい。バイク一筋で実績を積んできたチーム一丸で勝ちにいきますよ」

合同テスト2日目に、シケイン立ち上がりでエガーター選手が転倒、体は無事だがマシンは大きなダメージを受けた。スタッフが全力で修復するも翌3日目に今度はジェイコブセン選手が転倒。残り1台のマシンを交代で走らせ、短い時間でセッティング。それでも3人とも上位である2分8秒台に入れてきたのはさすがだ。藤井総監督はテスト初日にこう語っていた。

藤井:「決勝までにやることはいっぱいあるけど、瞬間、瞬間にマシンをまとめる能力が大切。これからレースをやれって言われても、俺たちはいいところに入るよ。そう思っているし、自信がある。そういう実力のあるチームにしてきたからね」

トラブルがあっても素早く対処して結果を出す。ライダーを含むチーム全体の能力があれば乗り越えられる。それが如実に出たテストであった。そして、藤井総監督の視線には“世界一”ということが、しっかりと見据えられている。

「24時間のレースを経験して価値観が変わった」― 渡辺一馬

今年、FIM世界耐久選手権の2戦ともこのF.C.C. TSR Hondaチームで走った渡辺一馬。これまで経験したことのない厳しい環境の中で走り、速さを求められた経験が自分の走りにさらなる幅を持たせたと話す。これまでとは違う鈴鹿8耐が戦えると意気込んでいる。

渡辺:「24時間や12時間のレースで価値観が変わりましたね。考え方が変わったなと。なにより8時間が長く感じなくなったのが大きい。だから体力もモチベーションも含めて、自信につながっています。3人とはこのテストからやり始めたばかりですし、これからですね。ただ2人とも世界選手権で上位を走っているライダーですから、走りに関して秀でている部分があると思います。それを自分の中にも取り込んで、相乗効果でチームの走行アベレージを上げたい。マシンも新しく作ったのですが、テストも重ねてきたので悪くないと思います。今の段階で勝つには少し足りないと思う部分もありますが、明確に分かっていますので、そこを詰めていけば勝てるのではないかと。自分たちが目標とする水準ははっきりしています。具体的に優勝するにはどんなシチュエーションでも2分9秒台で周回したいですね。世界耐久選手権での2戦では優勝できていませんので、ホームのアドバンテージを生かします。細かいところの積み重ねだと思います」

6歳でレースを始め、現在26歳。長いレース人生において、これまで強く印象に残っているのは圧倒的に悪い結果になったレースとのこと。ああすればよかった、こうすればよかったという思いが残る。そうやって速くなってきた。自らも含めチームとしてひと皮むけて挑むという16年の鈴鹿8時間耐久ロードレースがスタートした。


パトリック・ジェイコブセン

「初めての8耐、自分の役割を果たす」― パトリック・ジェイコブセン

パトリック・ジェイコブセンは3人の中で一番若い、アメリカ出身の22歳。先月開催されたポルティマオ12時間耐久ロードレースでもF.C.C. TSR Hondaチームのライダーとして出場した。鈴鹿8時間耐久ロードレースという歴史的なビックレースに出場できることを誇りに思うと意気込みを語る。

ジェイコブセン:「僕にとっては初めての鈴鹿8耐なので、確実に走り切ること、同じラップタイムを刻み続けることが大事だと思っています。そのためにマシンのセットアップをきっちりして、肉体的な準備をしっかりとして、役割を果すのが重要ですね。ただ今日もそうですが鈴鹿はマレーシアみたいに暑いし、湿気がありますから決して楽じゃないでしょう。同じアメリカ出身のニッキー(ヘイデン、MuSASHi RT HARC-PRO.)など速いライダーがたくさんいますし、難しいレースになると思いますが、モチベーションは高く自信もあります。12時間耐久レースの経験はきっと役に立つし、チームは8時間のためにやらなければいけないことをよく知っています。テストはまだ始まったばかりですが、決勝までにマシンは完全に仕上がるでしょう。チームメートとともにそれを走らせていくことだけです」

テスト最終日にスプーンコーナーで転倒をしてしまったけれど、体は無事で、2分8秒台のタイムも出している。「マシンはよく走る」と勝利に向けて気力は充実。

「チームは100%の力を投じてくれている」― ドミニク・エガーター

「鈴鹿に戻ってこれてうれしいです」とさわやかな笑顔で語るドミニク・エガーターは25歳の現役Moto2ライダー。昨年もこのF.C.C. TSR Hondaチームで鈴鹿8耐に出場して、一時はトップに立ったが惜しくも抜かれて悔しい2位表彰台。彼自身、出場するのは今年で3度目。アグレッシブな速さを持ちながら、このレースのことをきっちりと知っている。

エガーター:「8耐は難しいです。多くのライダーがコースにいますし、いろんなことが起き、雨などでコンディションも変化します。渡辺とジェイコブセンと組むわけですけど、彼らはとっても強いライダーで、僕らに用意されたマシンはすばらしいものです。勝つためにはすべてがうまくまとまらなければなりません。そうして初めて戦えるんです。藤井さんを含めチームはプロフェッショナルで、100%の力を投じてやってくれていますから、大変なプレッシャーがありますが、このファミリーの一員として、いい結果をもたらしたいです。CBR1000RRについては知っています。すばらしいのは昨年より今年のマシンは進化していますね。テストでは、3人のライダーが納得できるセッティングを探して、レースペースを上げる努力をしなくてはいけません。勝つのは簡単なことではないでしょう。8耐は普通のレースとは確かに違うのですが、結局は速いライダーが勝つわけで、集中を切らさないようにしなければいけないですね」

自らの強みは、だれよりも速いタイムで多くのラップを刻めること、というエガーター。トレーニングで持久力のある体を作り上げるなど、やるべきことはやってきたそうだ。決勝での走りが楽しみである。

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