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MuSASHi RT HARC-PRO.

「若きリーダーが誓うリベンジ」

「目標は優勝。そのためにはチームワークが重要」― 本田重樹監督

1980年代中頃からロードレースに参戦して、これまで12回の全日本ロードレース選手権チャンピオンのタイトルを獲得するなど、数々の戦績と多くの有名ライダーを送り出してきたHARC-PRO.。鈴鹿8耐に初めて参戦したのは1997年だが、本格的に挑みだしたのは2003年から。2010年に初優勝を手にし、13年、14年と連覇するなど、すばらしい成績を残してきた。今年も『MuSASHi RT HARC-PRO.』として挑む8耐を前に本田重樹監督の思いを伺った。

本田: 「鈴鹿8耐はハードなレース。選手とスタッフ、すべての人にとって決して楽なレースじゃないんだけど、それだけにやりがいがある。数多いレースではなく1年に1回しかないというところでモチベーションがいやおうなしに上がります。当然、目標は優勝。チームプレーなので、チームワークが重要になりますね」

「目標は優勝。そのためにはチームワークが重要」― 本田重樹監督

その心の中には、まだ昨年の悔しさが居座っている。MotoGPチャンピオンのケーシー・ストーナーを迎えて3連覇に挑んだが、マシントラブルによる転倒リタイア。優勝だけではなく、完走すらもできなかった。

本田:「二輪のレースはちょっとしたミス、マシントラブルであのような結果になってしまうと、改めて思いましたね。僕らいつもそのようなことがないようにしていますが、それでも起きてしまうと実感して、また気持ちを引きしめることになりました。今年はそれを踏まえて、セットアップ、管理、ライダーのコントロールと最善を尽くして、リベンジするつもりです」

今年も、このチームのライダーが大会の大きな話題となっている。昨年に引き続き、元MotoGPチャンピオンがやってきた。2006年のMotoGPチャンピオンで、現在、CBR1000RRでスーパーバイク世界選手権(WSB)に参戦しているニッキー・ヘイデンが13年ぶりの鈴鹿を走る。チームリーダーは8耐を8回走って3度表彰台の一番高いところに登壇している高橋巧。さらに、その高橋と組んで2度優勝を果たしている、マイケル・ファン・デル・マーク。勝てる実力者が3人並んだ豪華なメンバーである。

本田:「巧は8耐の戦い方を十分に分かっています。普段、全日本で乗っているマシンと違い、ここで使うのは3人で乗るから必ずしも自分に合ったものじゃない。彼はその中で最大限に力を発揮できるようにしている。そして我慢強いですね。レースは100%で走るのがいいのですが、このレースではそうするといろんなところにワナがあります。だから全部100%ではなく70%で走らなければいけないところもでてくる。そのメリハリがつけられるライダーです。100%で行きたくなる、その気持ちを抑えられる、気持ちをコントロールする意志の強さが彼にはあるのかな。マイケルも似ていますね。巧と組むのは今年で4度目ですごくいいコンビネーションだと思います。ニッキーは8耐を盛り上げる意味でも必要、実力者ですから。テストではまだ時間が足りず、コースとマシンに苦労をしていますが、決勝では万全になるはずだから期待しています。同じことになりますが、大切なのはやはりチームワークですよ。各ライダーそれを理解してくれているはずです」

「目標は優勝。そのためにはチームワークが重要」― 本田重樹監督

1978年から続く8耐の長い歴史の中、簡単に終わったレースはほとんどない。ドラマチックで、それが参戦する人、観戦する人に感動を与える。一筋縄ではいかない。それは本田監督も分かっている。本番に向けてどういう気持ちと戦略で臨むのか。

本田:「マシンの仕上がりだとか、天候だとか、レース中いろいろ状況が変わってしまい思っているようにはいかないものです。できることならば、トップグループの中にいて、そこから離れず、可能な限り我々の想定したスケジュールで推移して、最初にチェッカーを振られるのが理想ですが、燃費との兼ね合いもあって飛ばし続けると支障が出てくる。8耐というレースはうまくできていて、24Lの燃料タンクを満タンにして走ると、ワンスティント26〜27周、ぎりぎり28周走れる計算になるんです。それで二百十何周というのが見えてくる。いたずらに飛ばすと燃費が落ちて、ピットインが増える、そうすると速くてもピットでロスをしてしまう。だからいかに抑えつつ、前後の間合いを見ながら落ち着いたレースができるかですね」

最後にそこまで8耐に惹きつけられる理由を聞いた。

本田:「ものすごく暑い中、一日食べるものも食べないで8時間のレースをする。なにがおもしろいんでしょうね(笑)。苦しいんだけど、ゴールした時の達成感、勝ったときに味わえる大きな喜び、それを一回味わうと、あの感動をまた、と思うんでしょう、きっとね」


「昨年のリベンジに向け、挑戦者として臨む」― 高橋巧

彼にとって9度目の鈴鹿8耐。これまで優勝経験は3回。ここで勝つ方法を知っている男。その経験と速さが大きな強みだ。元MotoGPチャンピオンのニッキーと、8耐優勝をともにし、世界の舞台で活躍中のマイケルという強力なチームメートを引っ張るチームリーダー。

高橋:「普段戦っている全日本ロードレース選手権のJSB1000とは全く違うレースで、僕が走る唯一の世界選手権ですからアピールする場でもある特別なレースです。スプリントと違って走る台数が多く、8時間の中でバックマーカーの抜き方であったり、ペースを維持するのが難しい。3人のチームで走りますから、3人にマシンを合わせていかないといけない。みんなが乗りやすいと感じるマシンになるように最後まで探しながらセットアップしていきます。マイケル選手とは13年からなので4度目ですね。彼は僕好みのセッティングでも速く走れるし、走りが似ているのか、やりやすいです。対応能力が高いんですね。ニッキー選手とは初めて組みますが、実力者ですし決勝までにうまくすり合わせることができるでしょう。ライバルチームとの差を埋めるべくまだ一生懸命がんばっているところです。決勝は最初からぶっちぎれたら後半は楽になっていいのですが、そうは行かないですね。8耐はなにが起きるか分からないですから。3連覇を成し遂げられなかった昨年の悔しさをバネに、また挑戦者としてがんばります」

26歳とは思えないほど落ち着いて淡々と話す高橋。昨年は、一緒に組んだケーシーから学んだことがたくさんあると言いながら、ほかの人に知られるから具体的には話したくないと小さく笑った。今年はそれを活かす場でもある。


「このチームと一緒に優勝する」― マイケル・ファン・デル・マーク

オランダ出身の23歳。8耐初出場だった13年から高橋と組み、13年、14年と優勝を手にしている。昨年からWSBに参戦しており、今年は幾度も表彰台に上がり、現在のランキングは5位。8耐は自分にとって特別なイベントだと語る。

ファン・デル・マーク:「このレースに参戦できる、それもHondaに乗って走れることは光栄なことです。初めて呼ばれて走った時は夢が叶った気持ちになったのを覚えています。昨年はリタイアになり残念だったので、今年はまた勝利を手にしたいです。このチームに参加するのは自分の家に戻ってきたような感覚で違和感もなく、また一緒にやれてハッピーな気持ちです。スーパーバイクで使っているCBR1000RRと比べると、燃料を多く積むし、走りの印象はだいぶ違いますけど、結局は同じマシン。基本的に僕はバイクで走るのが大好きなので、問題無いです。このレースで勝つために私がやることは、速く走ること、でもそれだけだけではダメで、そのまま安定して周回することが重要です。この鈴鹿というコースが大好きですし、この強いチームと一緒に優勝できると思っていますので、皆さん応援してください」

今年はケガもなくフィジカルは万全、WSBが夏休み中ということもあり、時間の余裕を持って参戦でき、気力と体力も十分だという。リベンジに向けて静かなる闘志を燃やす。

「このチームと一緒に優勝する」― マイケル・ファン・デル・マーク「このチームと一緒に優勝する」― マイケル・ファン・デル・マーク

「鈴鹿8耐で勝つために戻ってきた」― ニッキー・ヘイデン

今年の8耐で大きな注目を集めているのが、彼の参戦である。MotoGPでHondaワークスライダーとして活躍し、2006年にチャンピオンを手にするなど、その実績からも日本で多くのファンがいるアメリカンライダー。8耐参戦は2度目だ。前回は2003年だった。決勝がスタートしてすぐに転倒を喫し、マシンを壊してしまいリタイア。レースをできず悔しい思いで初めての8耐を終えている。

ヘイデン:「日本ではファンも多いですし、ここに戻ってこられてうれしいです。13年ぶりの鈴鹿はシケインなど、いろいろレイアウトが変わっていて違う印象も受けますね。テスト(7月13日、14日から初参加)ではコースに慣れ、マシンを仕上げるために仕事は多かったけれど、初日はウエットコンディションで難しかったです。とにかくまだ時間が足りない。高橋とチームを組むのは初めてだけど、HRCのテストなどで何度も会って彼を知っているので、信頼しています。マシンのことも、コースについてもよく知っているからいいアドバイスを常にもらっているよ。日本に来る前に風邪を引いてまだ体調がイマイチだけど、決勝にはすべてをベストに持っていけるようにがんばります。8耐は難しいチャレンジ。でも僕はそのような困難に向かっていくのが大好きです。勝つために僕はここに来たからね」

「鈴鹿8耐で勝つために戻ってきた」― ニッキー・ヘイデン「鈴鹿8耐で勝つために戻ってきた」― ニッキー・ヘイデン「鈴鹿8耐で勝つために戻ってきた」― ニッキー・ヘイデン

AMAスーパーバイク、デイトナ200マイル、MotoGPなど数々の栄冠を手にしたが、この鈴鹿8耐のトロフィーがないので、ぜひ獲得して持って帰りたいと35歳となって走る決勝レースに向けベテランライダーは意気込んでいる。

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