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Satu HATI. Honda Team Asia

「アジアの希望を背負って」

「表彰台を目指したい。それだけの力は持っている」― 玉田誠監督

アジア人ライダーの育成を目的としたHonda Team Asia。監督を務める玉田誠は、2012〜13年はこのチームからライダーとして参戦し、12年は25位、13年はアクシデントにより決勝は不出場ながら、チームは6位でゴールしている。そして、14年から監督に就任し、若手アジア人ライダーでチームを編成。この年はマレーシア、インドネシア、オーストラリア出身という3人の組み合わせで7位となった。15年はさらなるリザルトアップを狙ったものの、チェッカーフラッグの約1時間前に思わぬマシントラブルによって順位を落とし、18位完走となった。監督就任3年目となる今年のレースについて、玉田監督に話を伺った。

玉田:「我々はアジアのモータースポーツの発展を目指しているチームです。ライダーは全員アジア人で、今年はアジア人メカニックの人数も増やしました。初めての参戦ではないので、今は苦労していませんが、出身国が違うと考え方が異なるので、最初のころはまとめるのが大変でした。今は新しいスタッフが入ってきても前からいる人がフォローしてくれるなど、やりやすくなっていますし、ライダーもメカニックも技術が上がってきています」

昨年はずっとトップ10圏内を走っていながら、ラスト1時間で、ヘッドライトが点かないというトラブルが発生。ピットストップが長引いて、18位フィニッシュという結果だった。

玉田:「今のところ、公式テストの調子はいいですね。全く問題がないわけじゃないけど、マシンのセットアップも順調に進んでいます。ライダーにはたくさん乗ってもらい、だいぶマシンに慣れてもらいました。個人的には非常に期待しています。でも、レースは必ずしも予定通りにはいきません。昨年も最後の最後でライトが点かないというトラブルがあった。そういったときにどう対処できるかが重要なんです」

と、慎重な姿勢も伺えた。ここでアジア人の強みを聞いてみると「闘争心が強い」という言葉が返ってきた。玉田監督はそこに魅力を感じているのだという。監督3年目ともなると、チームメンバーのいいところと悪いところがかなり具体的に見えてきているようだ。それだけに「彼らをうまくまとめていい部分を引き出したい」と話す。

玉田:「とにかく8耐はレースまでの準備が大切。本番までにやったことを100%出すことができれば、今まで以上のリザルトが必ず残せると信じています。過去の最高位は6位ですが、できればそれ以上、表彰台を狙いたいんです。ここ数年でアジアのレベルは急激に上がってきている。世界が注目するこの鈴鹿8耐でアジア人の存在感をアピールしたい。もちろん、アジア諸国からの注目度も高く、レースのときは各国から多くのメディアが取材に来ます。そのためライダーやスタッフのモチベーションが高いのもいいことです」

7月4日(月)〜6日(水)で実施された公開合同テストに、先日、MotoGPのMoto2クラスで優勝を果たした中上貴晶が参加した。そのことについて玉田監督は

玉田:「中上選手がテストに参加したことはチームにとってとてもよかった。GPライダー、しかもつい先日優勝したライダーともなれば、みんなが一目置く。そういうライダーが加わるだけでチームが引き締まるし、ライダーの緊張感も高まるんです。実際に中上君のマシンのフィードバックやコメントは的確で、それがほかのアジア人ライダーにとっていい見本になり、真似しようとする空気になったんです。また中上君はチームやライダーに対するアドバイスもしてくれた。自分のことだけを考えずに、ほかの人のことも考えながらマシンをセットアップしてくれたことがチームとしては大きかった」

と、中上の働きを高く評価していた。

最後に鈴鹿8耐の魅力について聞いてみた。

玉田: 「8時間は長いので天気の変化などの影響が大きい。それにどう対応していくか。チームごとに異なる作戦も見ものですね。同じマシンで2〜3人が走るのも見ていておもしろいし、やっていてもおもしろい。……正直に言うと大変ですよ。監督よりライダーをやっている方が楽でした(笑)。でもチームのみんなが成長してくれるという楽しみがある。今はアジアのためになんでもしたいと思っています。最低でも5位、チャンスがあったら表彰台。本音を言えばこのチームで優勝したい。楽しみだけどドキドキ。自分がレースするよりもドキドキしています(笑)」

「セットアップやライディングを伝え、チーム力の底上げを」
― 中上貴晶

6月26日(日)に開催された、MotoGPの第8戦オランダGPにおいて、Moto2クラスでの優勝を果たした中上貴晶は、公開合同テストで1000ccの8耐マシンをライディングした。そこには今までにない新鮮なフィーリングがあったという。

中上:「初めてのチームに初めてのマシン。ほかのライダーと助け合っているような状態です。自分にとってCBR1000RRはほぼ初体験のバイク。いつも乗っているレース用の車輌とは異なり、市販車を改造したマシンだけに勝手が違って難しいところがあった。スピードや加速はそんなにすごいとは感じませんでしたが、一番差を感じたのは重さですね。Moto2マシンは敏感に動いてくれるけど、8耐マシンはすぐに反応が返ってこない。同じ乗り方では難しいと感じました。それに見合った乗り方をしていかなければならないなと。自分にとって新鮮なフィーリングでした。今回はテストへの参加だけなので、チームやライダーに対してより多くの情報を出すのが一番の目的。その点はうまくいっていると思います。ほかのライダーの意見を聞きながらマシンを変えていきました。アドバイザー的な立場でやったのと同時に、彼らに新鮮味のあるライディングを見せたかった。彼らの手助けになればいいなと思います」

今、波に乗っているライダーだけに、チームやほかのライダーは学ぶことが多かったようだ。8耐には、10年に第3ライダーとして参加したものの、決勝は不出走。出てみたいかとの問いには「出たい」と即答。スプリントレースとは違い、チームやライダーの力が8時間ずっと試されるところに興味があるとも語る中上。「勝ったときの喜びが大きそうなので、チャレンジしたいですね」

※中上選手はテストのみの参加。レース当日はイベント等のファンサービスに登場予定

「いいパフォーマンスを発揮して上位を目指す」
― ディマス・エッキー・プラタマ

インドネシア出身の23歳。13年に鈴鹿4耐で優勝し、14年から鈴鹿8耐に出場。8耐3年目の今年は、自らの課題を克服しつつ、上位を狙いたいと意欲的だ。

ディマス・エッキー・プラタマ

プラタマ:「この時期、日本でレースをやることについては全く問題ないです。インドネシアは一年中暑いので、日本が暑いとは感じません。8耐に関して言えば、過去に参加経験があるのも有利な点ですね。昨年の自分はセクター1と2が速かった。そこが強みですが、それ以外も伸ばしたいです。8耐の難しさは速いラップタイムをコンスタントに出し続けなければいけないこと。タフなレースです。私個人がいいパフォーマンスするのも大事ですが、3人のライダーが力を合わせることが重要。MotoGPライダーなどすばしい選手も大勢走るので、厳しいレースになると思いますが、我々もTeam Asiaとして負けないように、一生懸命走りたい。昨年はライトのトラブルで結果が残せなかったので、今年は上位を目指してがんばりたいです。Moto2クラスでの経験豊富な中上選手は1000ccのマシンに乗り換えても速かった。彼の参加はとても勉強になりました」

ランニングやスイミング、サイクリングのほか、写真を撮るのも趣味だという。自分が走っていないときは若いライダーの走りを撮ってアドバイスに使うなど、その趣味を有効に利用している。自分のみならず仲間のスキルも高めて上位を狙いたいと話してくれた。

「目標はトップ5、できれば表彰台に上がりたい」― ラタポン・ウィライロー

3歳からバイクに乗り始め、6歳でモトクロスを始めたラタポン・ウィライロー選手。7歳から50ccでロードレースを初め、23歳の現在は600ccでレースを行っている。8耐参戦は2年目。Moto2クラスを走るラタパーク・ウィライロー選手は兄で、彼もTOHO Racingから8耐に参戦する。

ラタポン・ウィライロー

ウィライロー:「このチームはライダーやスタッフのコンビネーションがよく大好きです。プロフェッショナルな、レベルの高いチームでもあるので、僕にとって勉強になっています。そして競争が激しいので、常にがんばらなければという気持ちにさせられます。普段は600ccでレースをしていますが、スーパーバイクは乗り方が違うのでアジャストするのに苦労します。でも、今年は2年目なのでだいぶよくなりました。それでもまだ、トップライダーとのギャップを感じているので、そこを埋められるようにがんばっています。目標は少なくともトップ5、できれば表彰台に上がりたいです。タイでも普段から大きなバイクに乗っている人が増えたので、バイクレースへの注目度が高まってきました。いい結果を残して、そうした人たちにも喜んでもらいたいんです。また、中上選手がテストに来るのを楽しみにしていました。彼は1000ccに乗り換えてもすぐにアジャストできるのがすごい。バイクに乗る前の準備、終わってからのメカニックとのやり取りなど、すべて勉強になりました」

TOHO Racingから8耐に出る兄は、600ccと1000ccのライディングスタイルの違いを教えてくれたという。またサーキットでは、後ろを走って勉強させてもらったとも。そんな兄について「ライバルでもあるので、本番ではベストを尽くして戦いたい」と、意気込みを語ってくれた。

「8耐の経験を自分のレースキャリアに生かしたい」― ザクゥアン・ザイディ

マレーシア出身の21歳は8耐初参加。

ザイディ:「マレーシアよりも鈴鹿の方が暑い。でも、バイクでこういった環境を走るのには慣れているので大丈夫です。私は耐久レースが初めてなので、まずはチームやマシン、耐久の雰囲気、サーキットに慣れることが大切なのですが、チームがサポートしてくれるのがうれしいです。MotoGPライダーをはじめ、周囲に世界中のトップライダーが多いことにびっくりしています。コース上で出会うと追いかけるんですが、ついていくのが非常に難しい。もっと勉強が必要だと感じます。今回の合同テストに参加できたことはとてもハッピーです。このあと、自分の国のチャンピオンシップに戻ったときに、ここでの経験が生かせそうですから。中上選手は非常に経験豊富で、マシンのセットアップ能力に優れていて、一番いいセットを見つけてくれました。我々にとってはそれが貴重な経験です。本番では、できればトップグループを走りたい。8耐はマレーシアでも有名で、MotoGPと同じように格式があるレースですから、もし表彰台に上がれたらマレーシアの友人も喜んでくれると思います」

ずっと600ccでレースをしてきたザイディ選手にとって、1000ccはパワーも車重もある。走ると疲れるが、その分勉強になり、今後のステップアップに向けてのいい経験であるとも。1000ccのパワーを長時間コントロールするため、ジョギングやジムに通って体力をつけ、本番に挑みたいと語っていた。

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