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記録破りの強さを誇った07年戴冠車

2007/ARTA NSX GT500([4輪/レーサー])

鈴鹿で1分49秒台! 驚速ぶりを発揮し3勝7年ぶりのGTタイトルをホンダにもたらす

Text/Toshiyuki Endo  Photos/Katsuyoshi Kobayashi, Masaru Hirata

2007/ARTA NSX GT500([4輪/レーサー])

2007年SUPER GT出場車 No.8 ラルフ・ファーマン/伊藤大輔

フロントフェンダーの形状は、一見すると前年車から変更されていないように思えるが、共通パーツは一切ない。フェンダー後端上側がややえぐれているのが一番の違いで、これによりドラッグの低減を実現している。

フロントフェンダーの形状は、一見すると前年車から変更されていないように思えるが、共通パーツは一切ない。フェンダー後端上側がややえぐれているのが一番の違いで、これによりドラッグの低減を実現している。

NSXといえば、1989年に発表され、90年代から00年代にかけてHondaの“フラッグシップ・スポーツ”の地位にあった市販車だが、実はモータースポーツの世界においてもHondaのレーシングスピリッツを体現するマシンとして、大いなる活躍を演じてきた。

95年にはル・マン24時間レースでクラス優勝を遂げるという快挙もあったが、NSXのレース活動といえば、なんといっても全日本GT選手権〜SUPER GTシリーズにおけるGT500クラスでの快走に尽きるだろう。そして、そのスピードを存分に発揮し、激戦のGT500で最終戦を待たずに王座獲得を決めるという偉業を達成したマシンこそが、このARTA NSX GT500(07年)なのだ。

この年のNSXのリヤフェンダーは後端にボックスを付けたような形状。ディフューザーともつながるようにセットされており、相乗効果でダウンフォース向上とドラッグの低減を狙っている。

この年のNSXのリヤフェンダーは後端にボックスを付けたような形状。ディフューザーともつながるようにセットされており、相乗効果でダウンフォース向上とドラッグの低減を狙っている。

97年の参戦開始から09年まで、13シーズンに渡ってGT500で戦った“NSX-GT”は、GT500の世界に本格的な空力を初めてもち込んだマシンとも言われる。NSXの登場によって、GT500はHonda/ニッサン/トヨタ(レクサス)の3メーカーが激しくもハイレベルなマシン開発競争を繰り広げる激闘のステージへと進化したのである。

当初は、その卓越したスピードがリザルトに結びつかない面もあったNSXだが、00年にはGT500ドライバーズタイトル初戴冠を成し遂げた(道上龍)。すると、途端に規則面からのミッドシップ車への“締め付け”が厳しくなるなど、NSXは苦しい戦いを強いられるようになる。素性の違う各メーカーのマシン性能を、拮抗化することが目的なのだからやむを得ない措置ではあるのだが……。あとから振り返れば00年代前半の“NSXいじめ”は少々、度が過ぎた感も拭えない。それほど「NSXは速かった」こともまた、事実だ。

もちろんHondaとしても、童夢(車体)、無限(エンジン)といった頼もしい開発パートナーとともに打開策を探っていった。一時的にターボ化という手段にも訴えることとなったりしたが、05年シーズンに向けては抜本的な手が打たれていた。新たなベース市販車、「NSX タイプR GT」投入である。“素”のポテンシャルを上げることで、大幅な戦闘力向上を狙ったのだ。そしてそれから3シーズン目を迎えた07年、ついに積年の努力が結実することになる。同年このARTA NSXは、NSX勢として7年ぶりのGT500ドライバーズタイトル獲得を圧倒的な速さと強さで成し遂げたのである。

 

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ARTA NSX GT500

2007/ARTA NSX GT500[4輪/レーサー]

2007/ARTA NSX GT500[4輪/レーサー]

SPEC

シャシー

全長×全幅 4610mm×2000mm
車両重量 1100kg以上
ホイールベース 2530mm
トランスミッション ヒューランド製6速シーケンシャル
クラッチ AP製C/C 5.5"
4プレート・プルタイプ
サスペンション ダブルウイッシュボーン
タイヤ(前/後) BS製330/40R18/330/45R17

エンジン

型式 C32B
形式 V6DOHC24バルブNA
排気量 3494cc
最高出力 500ps以上

その他

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