KYB MORIWAKI MOTUL RACING

Vol.02「8耐本番を想定したテストでの手応え」

KYB MORIWAKI MOTUL RACING

7月10日、3日間の合同テストスタートの朝、KYB MORIWAKI MOTUL RACINGは、鈴鹿サーキットで『2018 FIM世界耐久選手権シリーズ "コカ·コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース』に向けての記者発表を行った。その席で森脇護監督はこう語った。

森脇護

森脇護:「昨年はやることが多すぎてマシンを作り込めず、力は尽くしたんですが、2人のライダー(決勝を走った高橋裕紀、清成龍一)にも本当に迷惑をかけてしまった。8耐が終わってからは必死にがんばって作ってきました。その結果、悪いところは直しながら、我々がやれるところの主だったものは、ほぼやれたと思います。それでも、その後変更になった箇所があるので、決勝までの短い時間でさらにやらないといけません。8耐には魔物がいると言われていますが、勝てる条件としてはトップに肉薄していないとその恩恵を受けられません。今年はポテンシャルアップを果たしたので、前を走るチームのアクシデントを期待しなくてもいけると思っています。そこが昨年と違うところです」

「セットアップの課題を解決し、さらなる進化へ」

朝から晴天で本番を思わせるように気温がぐんぐん上がった初日。前回、7月5、6日のテストが終始雨だったので、待望のドライコンディション。45分、75分、70分の3つのセッションのうち、本番車を2、3セッション、Tカーをすべてのセッションで走らせた。清成は一人で淡々と周回を重ね、路面温度が上昇したこともあり、思った以上にグリップ感が足りなかったとこぼしながらも「明日から急激になにかが変わることはないですから、継続して作業を続け、少しでもマシンのセッティングを前に進ませます」と前向きの発言。

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高橋は、このテストから参加となった第3ライダーのダン・リンフットとマシンをシェアし、短い時間で乗り換えて、タイヤの比較などの作業をした。「明日は、今日乗っていいと思ったタイヤのセットでセッティングを詰めていきたいと思います。ダンがとてもがんばってくれて助かりました」とコメント。この日のベストラップはナイトセッションの3枠目で本番車が2分10秒424を記録。Tカーも日が落ち暗くなった3枠目の走行で2分10秒731と近い数字を記録した。7月10日の総合結果としては、26番目と29番目。初となったドライでの8耐テスト1日目、まだ物事は始まったばかりだ。

ダン・リンフット

第3ライダーのリンフットはイギリス、ノースヨークシャー州生まれの30歳。英国スーパーバイク選手権(BSB)でHonda CBRに乗って戦っているライダー。2017年のランキングは10位でHonda勢としては2番目。前回のテストはBSBのレースと重なり参加できなかった。昨年もモリワキチームの第3ライダー。鈴鹿に戻ってきてモリワキチームに加われたことがうれしいと話したあとに、「初めて乗りましたが、走ることを楽しめました。問題も見つかっていますから、明日からはそこを解決できるようにトライしていきたい」と明るく答えた。同じCBR1000RRでも、いつも彼が乗っているBSB用マシンとモリワキの8耐マシンは違うものだ。

高橋裕紀

11日もドライコンディションとなり、40分、40分、90分のセッションが行われた。この日も本番車とTカーの2台が走行。朝一番のセッションで、前日のタイムを若干ながら上回る2分10秒台前半を記録し、午後の90分セッションで出した2分9秒283がこの日の最速。1日で1秒ほど縮めたことになる。総合の順位は15番手。

高橋は、タイヤの比較をしてからのアジャスト作業をこなし、最後にロングラン。燃費計測やタイヤのライフ、アベレージを考えた走行など、必要な項目でデータを収集し、今後は電子系、トラクションコントロールなどの調整をしたいと語った。「8耐のテストが始まるまでは順調にこれたんですが、ここにきて暑くなったこともあるのか『あれ?』となってしまった。でもこの状況で上にいる他チームとの差を縮めていきアベレージ走行のタイムを上げられるよう試行錯誤していかなければ」と素直な気持ちが口をついた。

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清成は「昨日からの作業を続けて、少しよくなりましたが、もっとよくしていかないといけなかった。残り走れる日数も決まっていますし、こればっかりは焦ってもしかたがないですね」と先週のテストが雨だったことによるマシンセットアップの進行遅れを認めた。

リンフットはタイヤを検証するためのロングランをして大幅ではないけれど着実に前進したことを強調。昨年も第3ライダーながら、決勝では走らなかった。しかし、今年は決勝レースを走ることを前提にテストをしている。もし、走ることができたのなら、彼自身初の鈴鹿8耐のレースである。

KYB MORIWAKI MOTUL RACING

12日は最終テスト。この次に走れるのは、泣いても笑っても基本的にレースウイークだけだ。セッションの数と時間は前日と同じ。テストでは鈴鹿に集まった全チームが一緒の枠ではなく、AグループとBグループに分かれている。モリワキはBグループ。Aグループより前の15時30分に終了した。最初のセッションは同グループ7番手、2番目のセッションでは4番手、90分と長い最終セッションでは9番手、そしてこの日の総合では17番手、3日合わせてでは19番手という結果で終了した。条件が違い相対的なものもあるけれど、昨年の同テストでは、高橋と清成が2分8秒557で奇跡の同一タイムで本番前のテストを終了していた。その事実は、当然ながらチームも知っている。けれど、接したライダー、スタッフからは焦りの色を感じることはできなかった。それは8耐レース巧者としての余裕なのか、チームの中の人でないかぎり分からない。

ロングラン、セミロングランをリンフットも加わって黙々とこなし、高橋はこの3日間のテストを「新しい発見があったけれど、まだまだ十分とは言えない。決勝ウイークでしっかり体調を整えて。路面は3日間連続のドライコンディション。モリワキチームで精一杯やって本番に挑みたいと思います」と振り返った。

清成龍一

清成はやはり思ったようにタイムが出ていないことを問題としながらも、「濃い内容のテストができた」と全体的にはよかったというコメント。

リンフットは、速いラップよりも、チームのために確実な周回を心がけたことを述べ、本番はミスのないベストを尽くすと約束。

「8耐復帰2年目に向けたチームの思い」

森脇護監督の娘であり、モリワキエンジニアリングの取締役として長い間モリワキレーシングの表に立ち尽力してきた森脇緑さんにも話をうかがった。昨年、転倒という波乱を乗り越えてのゴールを迎えたときに、感極まり日が落ちたピット前で涙を流していた姿が印象的だった。

森脇緑:「昨年は期待を感じながらも、現実の厳しさを痛感しました。それを覚悟しての参戦だったんですが、いい部分もあり、厳しい部分も多くあり、想定の範囲外のこともありました。個人的には、Moto2へ挑戦し世界を知ったことで、8耐参戦を休止する前とは見方が変わっていたことに驚きました。勝てるものを集め、チーム一丸で戦う作業自体は同じなんですが、休止前を思い出すといろいろ足りなかったと分かりました。休止まで何十年とやってきたのに、今よりも甘い。昨年は8耐、全日本とシーズンを通してドタバタしたこともあり、結果はしょうがない部分もありました。今年は昔やっていた感覚もよみがえっていますし、学んだこともたくさんあります。完ぺきなんてなく難しい部分は必ず出てくるんですが、そこでチームがなにをできるのかが楽しみであるのと同時に、ビリビリとした緊張感で身が引きしまる思いです」

KYB MORIWAKI MOTUL RACING

モリワキレーシングにとって復帰後、2回目の8耐。進化し、熟成し、速くなったモリワキCBR1000RR SP2。優れた3人のライダー。KYB MORIWAKI MOTUL RACINGがどんなドラマチックレースをみせてくれるのか。結果をつかむことができるのか。7月26日から始まるレースウイーク、29日の決勝レースが待ちどおしくてたまらない。1978年の第1回から参加している名門チームが戦う41回目の鈴鹿8耐本番がやってくる。

※モリワキレーシングが出場した鈴鹿8耐は2017年までで31回

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