毎年恒例となっている北海道のわっさむサーキットでの全日本選手権。毎年ここでの動向が、シーズンの流れとなってその後に影響することが多い、大事な一戦です。例年は日差しの厳しい熱い戦いとなるのですが、今年は雨予報で、暑さに負けるか、泥に手こずるか、先を読むのが難しい戦いとなりました。
小川友幸
小川友幸
予報に反して当日は、太陽が見えるほどの好天気で始まりました。雲はやや多いものの、前日までは日本列島の最高気温を記録したほどの北海道各地でしたから、このくらいの気候の方がすごしやすく、トライアル日和かもしれません。
セクションは、雨予報に合わせていくぶん簡単めに設定されていたので、上位陣はクリーン合戦となりました。第3戦、第4戦と2連勝している小川友幸(Honda)は、第4セクションまでをすべてクリーンで終えて好調です。
ライバル陣では、野崎史高(シェルコ)が第3セクションで5点となり、第4セクションでは黒山健一(ヤマハ)が5点。神経戦と目されていたわりには、ミスも出やすいセクションであったことがわかります。
しかし、第5セクションでは、小川友幸が5点となってしまいます。第5と第6セクションは勝負どころで、難セクションではあったのですが、小川毅士(ベータ)、黒山はクリーンだったので、小川にすればクリーンは可能なセクションだったはず。ちょっと不本意な5点となり、続く第6セクションへ。ここでは誰もクリーンを出せず、小川毅士、黒山の3点が最小限点だったのですが、小川はここでまた5点となってしまいます。たった2セクションで、一気に10点を失った小川は、この時点で4番手に転落してしまいます。トップは小川毅士で3点、2位が柴田暁(ヴェルティゴ)で7点、3位が黒山の8点です。まだまだ先はありますが、ここで流れを取り戻さなければいけません。
試合はそのままクリーンの取り合いで1ラップ目を終えて、2ラップ目に入りました。空はあいかわらず曇っていて、雨は降っていません。
2ラップ目、小川は気合の入ったトライを続けていきます。1ラップ目に5点になった第5セクションも見事に修正してクリーン。さらに第6セクションも、細心の注意を払ってクリーン。こうなると、小川の前に立ちはだかるセクションはなくなりました。2ラップ目、小川はついに10セクションすべてをクリーンで終えました。
対するライバルたちは、小川のようにはいきません。柴田は第5、第6セクションで5点。小川毅士は第5で1点、第6で5点、さらに第9、第10で5点となり、トップの座から脱落していきます。
そして、トップグループが第8セクション、第9セクションにかかった頃、ついに天気予報どおりに雨が降ってきました。この雨で、土、石、岩、コンクリートが滑り、すべてがつるつるになりました。黒山も、最終セクションで5点となって、この日の優勝争いの権利を失いました。
10セクション2ラップの戦いを終えて、トップは10点の小川友幸、2位に17点の柴田、3位に18点の野崎、4位に19点の柴田、5位に23点の黒山。この後、ふたつのSS(スペシャルセクション)で勝負が決まります。
SS第1は毎年恒例の難セクション。SS第2は最終第10セクションを手直ししたもので、ざっと2メートルほどのコンクリートブロックに飛びつく設定となっていました。
SSは14人のうちトップ10が走ります。SS第1では5点が続く中、黒山が2点で通過、次にトライした小川毅士がクリーンを出して、会場をわかせます。次の野崎が5点で、柴田はクリーン。最後にトライした小川は、わずかなのり面でグリップを失ってかろうじて3点で抜けることになりました。
最終SSを前に、小川友幸は13点、柴田が17点、小川毅士19点、野崎23点、黒山25点。優勝争いも、表彰台争いもまだ確定していません。
SS第2の2メートル近いコンクリートブロックは、やはり超難関。最初に上がったのは野本佳章(ベータ)で1点でした。その次のトライが黒山。この日の黒山は全体にミスが目立ちましたが、最後の最後に渾身の走りを見せてクリーンしました。
しかしその後、野崎、小川毅士、柴田と次々に5点。柴田が5点になった時点で、小川友幸の優勝は確定的となりました。
最後のトライの小川は、これを華麗にクリーンして有終の美としたいところでしたが、雨はますますひどくなります。コンクリート面が滑り、難しいマシンさばきを強いられ、惜しいところで失敗。5点となって、試合終了となりました。
しかしこれで、5戦中3勝をあげた小川友幸が黒山に対し7点のリードをとってランキングで単独トップに立ちました。残り2戦、まだまだ厳しい戦いは続きますが、終盤戦が楽しみな展開となってきました。
小川友幸(優勝)
「1ラップ目は、勝負どころの2つのセクションで5点となって出遅れましたが、調子は悪くなかったので、2ラップ目には修正ができると思っていました。そのとおり、2ラップ目はオールクリーンができて、優勝もできたのでよかったです。第5セクションはちょっとした運不運もあったのですが、2ラップ目はきっちり修正ができてクリーンできました。今回、ライバルが4位となり、ランクでも7点差をつけることができましたが、終盤戦に向けて、気を引きしめていきたいと思います」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 小川友幸 | 0 | 18 | 18 | |
2 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 0 | 22 | 17 |
3 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 24 | 16 |
4 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 25 | 16 |
5 | 3 | 野崎史高 | シェルコ | 0 | 28 | 16 |
6 | 7 | 野本佳章 | ベータ | 0 | 32 | 12 |
7 | 8 | 斎藤晶夫 | 0 | 48 | 8 | |
11 | 14 | 砂田真彦 | 0 | 50 | 6 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 小川友幸 | 94 | |||
2 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 87 | ||
3 | 3 | 野崎史高 | シェルコ | 69 | ||
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 69 | ||
5 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 61 | ||
6 | 8 | 斎藤晶夫 | 47 | |||
12 | 14 | 砂田真彦 | 21 |