7月17日、全日本選手権第5戦の北海道大会は、毎年この時期に恒例の一戦です。天気は曇りの予報でしたが、スタートの頃にはすっかり雲が切れ、日差しの強い一日となりました。日が陰ったり風が吹けば心地よいものの、暑い中での戦いでライダーの体力の消耗は激しいものとなりました。
小川友幸
小川友幸
セクションの難易度は易しめ。小川友幸(Honda)は、この大会をオールクリーンしようと思って試合に臨みました。自身、まだ一度も果たしていないオールクリーン、今回はその可能性のあるセクションでした。
第2セクション、大きなコンクリートブロックを越えた小川は、勢いをつけすぎ、着地でバランスを崩します。しかし必死にこらえて、ここをクリーン。足をついていれば、流れは変わっていたかもしれないというワンシーンでした。
小川友幸
小川友幸
続く第3セクションは、険しい岩のポイントが連続していて、特に2つ目が多くのライダーをはじき返していました。小川毅士(ベータ)、黒山健一(ヤマハ)など、ライバルもここで5点。しかし、小川は野崎史高(スコルパ)とともにここをクリーンし、序盤から好調をアピールしていました。
第4セクションは今回の最大難所の一つ。ヒューム管に飛び移る最後のポイントが特に難所でした。小川はこのヒューム管から降りるときにバランスを崩し、今度は足が出てしまいます。2点。しかしこのセクション、ライバルはみんな5点で、ここでの2点は大きなアドバンテージをもたらすことになりました。
土の斜面の第5セクションをトップグループのほぼ全員がクリーンで抜けたあとの第6セクション。ここは唯一水で湿ったセクションで、岩に向かうポイントが濡れていて、発進を難しくしています。ここで、野崎、黒山が5点に。小川はこのセクションを華麗にクリーンして、いよいよ独走体制を築いていきます。
第7以降は、トップライダーにとってはクリーンセクションでした。高い岩越えなど、もちろん難所はあるのですが、これに手こずっているようでは、全日本のトップ争いはできません。上位4名は、7から10までの4セクションを、すべてクリーンで抜けていきます。
小川友幸
1ラップ目、小川の減点は第4セクションでの2点のみ。2番手の野崎は10点、黒山が11点、小川毅士が14点と、2番手以下はなかなかの接戦。それだけに、小川の好調ぶりが際立っています。
2ラップ目、小川に追いつき、追い越したいライバルたち。しかし小川が減点をしなければ、ライバルがいくらいい走りをしても、1ラップ目に築いたリードは減りません。そんな中、黒山は第3セクションで、野崎は第4セクションで失点。さらに第6セクションでも失点がありました。小川は一切足を出すことなく、試合を進めています。
そして、なんと小川は10セクションすべてをクリーンしてしまいました。黒山、野崎ともに減点を減らしはしたものの、それぞれ6点と7点で、トータルではどちらも17点。2番手争いは大接戦となりましたが、2ラップを終え、その点差は15点。2セクションによるSSの勝負を待つことなく、小川は勝利を決めました。
野崎と黒山にとっては2位決定の舞台となったSSは、小川にとっては有終の美を飾る花道です。SS第1はトリッキーな岩越えに手こずるライダーが多く、なかなかクリーンは出ません。小川は最後の最後に見事なクリーンをみせてくれました。
そしてSS第2。こちらはSS第1に比べるとクリーンがちらほら出ていましたが、やはり最後にトライした小川の安定感は別格。野崎に15点差、黒山に20点差の大差をつけて、小川はシーズン4勝目を挙げました。
残すは2戦。第6戦中部大会は10月なので、少し間が空くことになります。小川が4勝を挙げたのに対し、ランキング2位の黒山と3位の野崎が順位を奪いあっているため、小川のポイントリードは13点に広がっています。
IAクラスでは4人目の勝利者が誕生しました。4人ともHondaライダー。今回の勝利者はベテランの寺澤慎也。最近はチーム代表としての活躍も精力的に行っていますが、ライダーとしてもまだまだ現役です。寺澤は、中国大会で持病の腰痛を悪化させていて、その回復とともに訪れたのが今回の勝利でした。
今シーズン2勝を挙げていた小野貴史(Honda)は今回は8位。1勝を挙げている村田慎示(Honda)は4位。この結果、ランキングは小野と村田と、高校生の久岡孝二(ガスガス)の3人が同点で並ぶことになりました。
シーズン終盤戦、こちらの争いも注目です。
寺澤慎也
村田慎示
今回は4名が参加。西村亜弥(ベータ)が今大会も勝利し、有効得点制で競われるレディース選手権では今回早くもタイトルが決定ということになりました。
小玉絵里加(Honda)は2位。小谷芙佐子(スコルパ)との接戦を制して勝ち取った表彰台でした。
小玉絵里加
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 小川友幸 | 0 | 2 | 21 | |
2 | 3 | 野崎史高 | スコルパ | 0 | 17 | 18 |
3 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 22 | 16 |
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 31 | 13 |
5 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 0 | 35 | 13 |
6 | 7 | 野本佳章 | ベータ | 0 | 47 | 11 |
9 | 12 | 斎藤晶夫 | 0 | 62 | 8 | |
13 | 11 | 砂田真彦 | 0 | 80 | 2 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | 寺澤慎也 | 0 | 10 | 14 | |
2 | 13 | 久岡孝二 | ガスガス | 0 | 14 | 15 |
3 | 7 | 磯谷玲 | ベータ | 0 | 15 | 16 |
4 | 2 | 村田慎示 | 0 | 15 | 15 | |
5 | 8 | 平田貴裕 | スコルパ | 0 | 16 | 16 |
6 | 10 | 平田雅裕 | スコルパ | 0 | 16 | 16 |
8 | 24 | 小野貴史 | 0 | 20 | 14 | |
13 | 19 | 松浦翼 | 0 | 39 | 6 | |
16 | 17 | 高橋由 | 0 | 46 | 5 | |
17 | 41 | 鈴木克敏 | 0 | 50 | 4 | |
26 | 50 | 多田雅志 | 0 | 88 | 0 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | 西村亜弥 | ベータ | 0 | 9 | 16 |
2 | 2 | 小玉絵里加 | 0 | 32 | 7 | |
3 | 1 | 小谷芙佐子 | スコルパ | 0 | 33 | 7 |
4 | 4 | 佐々木淳子 | ベータ | 0 | 53 | 5 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | 小川友幸 | 97 | |
- | 2 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 84 |
- | 3 | 3 | 野崎史高 | ヤマハ | 79 |
- | 4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 65 |
- | 5 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 53 |
- | 6 | 6 | 田中善弘 | ベータ | 48 |
▼ | 9 | 12 | 斎藤晶夫 | 30 | |
- | 13 | 11 | 砂田真彦 | 6 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 24 | 小野貴史 | 73 | ||
- | 2 | 2 | 村田慎示 | 73 | ||
- | 3 | 13 | 久岡孝二 | ガスガス | 73 | |
▲ | 4 | 1 | 永久保恭平 | ベータ | 57 | |
▲ | 5 | 7 | 磯谷玲 | ベータ | 50 | |
▼ | 6 | 11 | 本多元治 | 48 | ||
▲ | 8 | 6 | 寺澤慎也 | 43 | ||
▼ | 10 | 3 | 徳丸新伍 | 29 | ||
▲ | 16 | 19 | 松浦翼 | 7 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 6 | 西村亜弥 | ベータ | 100 |
- | 2 | 2 | 小玉絵里加 | 81 | |
- | 3 | 1 | 小谷芙佐子 | スコルパ | 77 |
- | 4 | 3 | 稲垣和恵 | シェルコ | 46 |
- | 5 | 5 | 寺田智恵子 | シェルコ | 44 |
- | 6 | 4 | 佐々木淳子 | ベータ | 41 |
小川友幸(優勝)
「ようやく、集中したいい走りができました。しかしやりたかったオールクリーンができず、大満足というところには至っていません。オールクリーンの可能性のある大会というのはそんなにあるものではないので、今回はチャンスだと思って取り組んだのですが残念でした。勝利とタイトル争いについてはいい材料ですが、まだまだ取り組むべきところは多くあります」