全日本トライアル選手権の第4戦は、5月に開催予定でした第3戦九州大会が震災の影響で7月に延期となったため、今シーズン3試合目の戦いとなりました。会場は鳥取県のHIROスポーツパーク。山の奥深いところにあるこのコースは、トライアルらしいコンディションで走り応えがあり、ライダーには好感触でした。
ここまで開幕2連勝を飾っているのが小川友幸(Honda)。ここで勝てば開幕3連勝と同時にシーズン4連覇に向けても、ぐっと有利になってきます。それは同時に、ライバルの黒山健一(ヤマハ)が背水の陣でこの戦いに臨んできているということでもありました。
小川友幸
小川友幸
序盤、難セクションを攻略していたのは、小川、黒山に加えて、小川毅士(ベータ)の3人でした。難しいのは山の上に入った第4セクションから第10セクションまで。小川は試合をまとめようとしますが、細かい失点が目立ちます。第7セクションでタイムオーバーの5点をとったあとに、9セクションでもまさかの5点。ここは比較的好スコアをマークする選手の多いセクションだっただけに、小川には手痛い失点となりました。
1ラップ目の12セクションを終えた段階で、小川のポジションは3番手。トップの黒山は14点、2番手には小川毅士が19点でつけ、小川は21点で続きました。ばん回のチャンスはありますが、今回は少し苦しい展開となりました。
2ラップ目では、少しずつ雲行きが怪しくなってきます。予報では、大会終了ごろに雨が降り始めるということでしたので、関係者は、なんとか最後まで持ってほしいと願うばかりでした。ライダーは持ち時間を追いかけるのが手いっぱいで、雨が降る前にセクションをこなすという作戦をとる余裕はないようでした。
追い上げたい小川でしたが、第6セクションで5点。ここは土のヒルクライムが主体で、途中に丸太が行く手を阻んでいます。それでもここを抜け出る選手は多く、難しいセクションの多い今大会では、比較的難度が低いものでした。小川にとっては意外な失点となってしまいました。小川は1ラップ目もここで後輪を滑らせて苦戦。2点を失っていました。
それでも2ラップ目の小川は、1ラップ目より減点を10点減らして、2番手のポジションを奪い取りました。残るライバルは黒山一人ですが、この日の黒山は好調。2ラップ目は5点が一つもなく、8点で12セクションを走り終えています。対して小川は、第6セクションでの5点もあって11点。トータルすると、黒山は22点、小川は32点。ちょうど10点差で2ラップの戦いを終えました。
小川友幸
残るは2つのSS(スペシャルセクション)。観客の見やすい位置に設定されたSSは、難易度はさらに高くライダーを悩ませます。さらに悪いことに、1つ目のSSが始まるころから、雨が降ってきました。こうなるとトライ順が遅いトップライダーの方が不利となります。SSのトライ順は、この日のスタート順と同じで小川は一番最後にトライします。
結局、SSの1つ目は、だれ一人として走破することができませんでした。最後の登りの岩場が鬼門。そして迎えた2つ目SSでは、平滑なコンクリートブロックが雨に濡れてツルツルになっていました。これを斜めからトライして登っていけという設定のため、難易度は最高レベルに。ライダーは次々に跳ね返されていきます。
2ラップを終えたところで、黒山と小川の点差は10点。しかもクリーンの数は黒山が5つほど多かったので、この時点で事実上勝利は黒山のものとなっていました。SSの2つ目を小川がクリーンして黒山が両方5点となれば10点差を取り返して同点となりますが、その場合はクリーン数が多いほうが勝利を得るからです。
しかし試合の最後を締めくくるSS。ライダーにとっては、ライバルに対して最後に実力を見せつけて終わりたい場面です。開幕3連勝を逃した小川としては、この勝負には勝っておきたいところ。しかし今回はそれも叶いませんでした。ここではライバルの黒山が2点で抜けて歓声を浴びる中、小川は5点で試合を終えることになりました。最終的には、13点差で2位という結果です。
小川友幸(中央)
3戦中2勝1敗。ランキングでは3ポイント差でリーダーの座を守っていますが、シリーズ争いはひとまず振り出しに戻った感じとなりました。7月の第3戦九州大会、そして北海道大会が、今シーズンの流れを決める大事な戦いとなりそうです。
若手が台頭してきている国際A級(IA)ですが、今シーズンの勝利者はHondaのベテランライダーばかりです。そして今回は、本多元治(Honda)が勝利を手にしました。
デモンストレーションなどの仕事があり、全戦参加が難しくなっている本多は、出られる大会には必勝を期して臨んできます。開幕戦では惜しくも2位、第2戦近畿大会は欠場となり、今回がシーズン2戦目の戦いとなりました。
1ラップ目からトップに立った本多は、2ラップ目に5点を連発してしまうなど、危ない局面もありましたが、うまく試合をまとめて勝利に突き進みました。開幕戦の2位と、今回の優勝を合わせ、ランキングでも4位に浮上しています。
小野貴史
一方、第2戦で勝利した村田慎示(Honda)は、今回も安定感を発揮し、4位につけました。シリーズランキングは2位。そして開幕戦で勝利した小野貴史(Honda)は、今回は6位。少し残念な結果となりましたが、それでもシリーズランキングはトップの座を守っています。上位3人のポイント差が2点しかない国際A級のチャンピオン争いは、これからが正念場です。
今回は5名の参加となったレディース全日本選手権。前回オールクリーンで勝利した西村亜弥(ベータ)は実績からしても別格の強さを持っています。今回も1ラップ目にはオールクリーンして好調をアピールしました。しかし、これに続いて2位となったのが、小玉絵里加(Honda)でした。小谷芙佐子(スコルパ)との、ほんの数点差の厳しい勝負に勝っての2位表彰台に登壇。開幕戦で4位となっている小玉ですが、2戦連続の2位で、ランキングも小谷と同点の2位に浮上しています。
小玉絵里加
試合中はレディースが集まってラインの相談をするなど、厳しい勝負をしながらも仲のよさが見えるレディース独特の雰囲気も、全日本に新鮮な印象を与えています。
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 29 | 16 |
2 | 1 | 小川友幸 | 0 | 42 | 11 | |
3 | 3 | 野崎史高 | スコルパ | 0 | 51 | 12 |
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 58 | 12 |
5 | 6 | 田中善弘 | ベータ | 0 | 80 | 7 |
6 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 0 | 82 | 6 |
9 | 12 | 斎藤晶夫 | 2 | 94 | 2 | |
15 | 11 | 砂田真彦 | 1 | 119 | 0 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 11 | 本多元治 | 0 | 43 | 9 | |
2 | 1 | 永久保恭平 | ベータ | 0 | 53 | 7 |
3 | 13 | 久岡孝二 | ガスガス | 0 | 56 | 10 |
4 | 2 | 村田慎示 | 0 | 59 | 5 | |
5 | 15 | 西和陽 | ガスガス | 1 | 62 | 6 |
6 | 24 | 小野貴史 | 0 | 66 | 7 | |
20 | 6 | 寺澤慎也 | 0 | 110 | 1 | |
28 | 39 | 生田目俊之 | 0 | 118 | 0 | |
31 | 60 | 泉祐大 | 0 | 120 | 0 | |
34 | 05 | 寺岡昭雄 | 0 | 120 | 0 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | 西村亜弥 | ベータ | 0 | 7 | 17 |
2 | 2 | 小玉絵里加 | 0 | 35 | 4 | |
3 | 1 | 小谷芙佐子 | スコルパ | 0 | 38 | 2 |
4 | 3 | 稲垣和恵 | シェルコ | 0 | 68 | 0 |
5 | 5 | 寺田智恵子 | シェルコ | 0 | 75 | 1 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | 小川友幸 | 57 | ||
- | 2 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 54 | |
- | 3 | 3 | 野崎史高 | ヤマハ | 45 | |
- | 4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 39 | |
▲ | 5 | 6 | 田中善弘 | ベータ | 32 | |
▼ | 6 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 31 | |
▼ | 9 | 12 | 斎藤晶夫 | 15 | ||
▼ | 13 | 11 | 砂田真彦 | 6 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 24 | 小野貴史 | 45 | ||
- | 2 | 2 | 村田慎示 | 43 | ||
- | 3 | 13 | 久岡孝二 | ガスガス | 43 | |
▲ | 4 | 11 | 本多元治 | 37 | ||
▲ | 5 | 1 | 永久保恭平 | ベータ | 33 | |
▼ | 6 | 7 | 磯谷玲 | ベータ | 27 | |
▼ | 8 | 3 | 徳丸新伍 | 19 | ||
▼ | 9 | 6 | 寺澤慎也 | 18 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 6 | 西村亜弥 | ベータ | 60 |
▲ | 2 | 2 | 小玉絵里加 | 47 | |
▼ | 3 | 1 | 小谷芙佐子 | スコルパ | 47 |
▲ | 4 | 3 | 稲垣和恵 | シェルコ | 35 |
▲ | 5 | 5 | 寺田智恵子 | シェルコ | 31 |
▼ | 6 | 4 | 佐々木淳子 | ベータ | 28 |
小川友幸(2位)
「開幕3連勝を意識しすぎて、どうも走りが固かったようです。普段ならクリーンを狙っていくところを、今回は足をついてまとめていこうと考え、それが裏目に出たところもありました。ライディング自体は悪くはなかったと思いますが、みんながクリーンをしたりしているところで5点となったりもしていて、結果はよくなかったです。シリーズ争いもだいぶ取り返されましたが、まだまだタイトル争いのことは考えません。九州、北海道で勝負をしてから考えます」