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September 7 2015, RACE All Japan Trial Championship Haratakiyama Trial Park
原瀧山トライアルパーク
2015年9月6日(日)・決勝 会場:原瀧山トライアルパーク(岡山県) 天候:雨、ときどき曇り
気温:22℃ 観客:332人 セクション:泥・岩
岡山大会は、12セクション2ラップ、そして2つのスペシャル・セクション(SS)で構成されます。全日本にはよくある試合構成ですが、この第5戦は未明から雨が降り、近年まれにみる悪コンディションとなり、ライダーを苦しめました。第4戦までの対戦成績がイーブンとなった小川友幸(Honda)と黒山健一(ヤマハ)のトップ争いも、やはり厳しい戦いとなりました。
高低差のあるセクションと、滑る石灰岩、さらに雨が降ると絶望的に滑る土質、雨の原瀧山は手強い会場の一つです。昨年の大会では、午前中に降った雨が昼前には止んで、急速に路面が乾いていくという難しいコンディションでしたが、今年の雨は最後まで降ったり止んだりで、太陽は最後まで顔を出しませんでした。そのため、路面が完全に乾くこともなく、水分を含んだ土は重くタイヤやマシンにまとわりつき、ライダーの行く手を阻みました。
この日、なんとかクリーンが出せそうなセクションは、第1セクションと第2セクション。しかし、簡単にクリーンができるものではありません。1ラップ目、第1セクションをクリーンしたのはトップの5人。第2セクションをクリーンしたのは野崎史高(ヤマハ)だけでした。
セクションが進むと、クリーンはさらに難しく、3点でアウトすれば上出来というコンディションばかり。小川友幸の1ラップ目は、第6セクション以降、すべて5点でした。ライバルたちも、いくつかのセクションをなんとか3点で抜けているだけという状況ではありましたが、そのわずかの差によって、小川友幸はトップの黒山から5点差の4番手となってしまいました。2番手は野崎、3番手は小川毅士(ベータ)で、5点の中で4人のライダーが争うことになりました。
小川友幸は4番手で1ラップ目を終えましたが、ばん回は可能と考えていました。しかし、その頃から雨が止み、路面が少しずつ乾き始めます。雨が降り続くと、コンディションが悪化するように思えますが、表土の泥が流れることで、グリップはかえってよくなります。午前中の雨はかなり激しかったのですが、それでもグリップは悪くない状況でした。それが雨が止むことで、泥が粘土のように重くまとわりつきます。そのコンディションの変化を見て、小川友幸は危機感を感じたそうです。クリーンができるのは、第1セクションと第2セクションのみ。このコンディションでは、それ以降のセクションは抜けられても3点。5点を逆転するには、かなり厳しい状況となりました。
そして、2ラップ目の第1セクションで、小川友幸の前を走る野崎が5点。1ラップ目とは、まるきり違うセクションとなりました。ここでさらに、小川友幸は危機を感じました。野崎に続いて、黒山も5点。これは小川友幸にとってチャンスでもありますが、2人がともに5点となるほどに難しいということでもありました。気持ちを引きしめてトライし、第1セクションを2点。黒山との5点差を、2点に縮めました。
続く第2セクション、1ラップ目には1点を失っていますが、2ラップ目はクリーンを狙いました。しかし、それには大きなリスクがありました。クリーンをするには、完ぺきなライディングをしなければいけません。余裕を持ってアクセルを開けていくと行き過ぎてしまい、足を出してマシンを抑えることになります。クリーンをするにはアクセルの開け方も針の穴を通すような正確さが要求されます。それがほんのわずかでも足りなかった場合、マシンは後ろに下がり落ちてしまい、5点。1点なら安全、しかしトップを奪い、さらにリードを広げるために、小川友幸はリスクを承知でクリーンを狙いました。小川友幸のライディングは完ぺきでした。野崎5点、黒山3点に対し、見事なクリーン。ここで小川友幸はトップを奪い、黒山に対して1点のリードを築くことに成功しました。
これ以降、小川友幸は抜けられるところは確実に抜け、合計で97点。トップのスコアで2ラップを走り終えました。残すは2つのSSのみ。第10セクションと第12セクションの設定を変更して行われます。通常なら、SSは難度を高めて設定されるものですが、今回は設定を見直し、少し難易度を下げた設定となりました。
難しい設定のままなら、ライバルが5点となり順位は変わりません。しかし、クリーンも5点もあり得る設定加減では、わずか3点の差がひっくり返る可能性も出てきます。この不安を払拭するためには、SSをクリーンするしかありません。小川友幸はSSについて、SS第2は3点で仕方がない、しかしSS第1はクリーンが可能かもしれないと考えていました。
トライするライダーが次々に5点となり、迎えた小川友幸のトライ。クリーンを狙いますが、やはり足をすくいにかかる重たい土の影響で3点となり、SS第1をアウトします。それでもこのセクションをアウトしたのは小川友幸が初めてでした。
続いてトライした黒山はクリーンを狙いましたが、このセクションは3点でアウト。3点差のまま、最後のSS第2を迎えました。ここで、小川友幸が5点、黒山がクリーンなら、逆転されてしまいます。小川友幸が3点、黒山がクリーンの場合は、点数は同点。同点の場合はクリーン数が多い方に軍配が上がります。クリーン数は小川友幸の方が1つ多かったのですが、とにかく3点差を守ってゴールすることが、勝利への条件だと考えていました。
ポイントの一つひとつを丁寧に運びましたが、ここでもクリーンはならず、スコアは3点となりました。そして最後に黒山のトライ。黒山も粘りましたが、勝負は3点差のままで決着しました。
第4戦で同点となったチャンピオン争いは今大会で3点差がつき、残りは2戦。次戦は10月11日(日)に、愛知県岡崎市キョウセイドライバーランドで開催の中部大会となります。
小川友幸(優勝)
「1ラップ目は調子が悪かったのですが、そのときはしっかり立て直し、ばん回を考えていました。しかしコンディションが変化して、果たしてばん回ができるか、正直不安でしたが、我慢のトライアルを続けたことと、ライバルのミスもあって、勝利を得ることができました。2ラップ目の第2セクションは大きな賭けでしたが、失敗していたら、それが敗因となっていたでしょう。チャンピオン争いで3点のリードをとなりましたが、すべてはこれからの残り2戦にかかっています」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 小川友幸 | Honda | 0 | 103 | 2 |
2 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 106 | 1 |
3 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 113 | 2 |
4 | 3 | 野崎史高 | ヤマハ | 0 | 114 | 2 |
5 | 5 | 柴田暁 | Honda | 0 | 116 | 2 |
6 | 8 | 加賀国光 | シェルコ | 0 | 122 | 0 |
10 | 14 | 砂田真彦 | Honda | 0 | 126 | 0 |
13 | 13 | 佐藤優樹 | Honda | 0 | 133 | 0 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 小川友幸 | Honda | 92 |
2 | 黒山健一 | ヤマハ | 89 |
3 | 野崎史高 | ヤマハ | 73 |
4 | 小川毅士 | ベータ | 71 |
5 | 柴田暁 | Honda | 54 |
6 | 田中善弘 | ベータ | 49 |