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SPOTLIGHT ON THE FIGHTERS 「世界につながるJ-GP2クラス」

高橋裕紀選手(たかはし ゆうき)

チームとして世界に返り咲くために
全戦全勝で連覇をねらいます

2005年、Honda Racingのスカラーシップ制度2期生として、ロードレース世界選手権にフル参戦。以来9年間にわたり戦いの場を世界においてきた高橋裕紀選手は、2014年度その舞台を日本に移すと6戦中4勝し、表彰台を逃したのはわずかに1戦という圧倒的な強さでJ-GP2クラスチャンピオンに立った。30歳になった高橋選手は再びJ-GP2クラスの制覇をねらうが、同時に今シーズンはアジア選手権のスーパースポーツクラス(600CC)にもダブルエントリーし、すでにセパンサーキットでの初戦(レース1)で優勝している。

■圧倒的な強さで全戦優勝し、チームで世界へ返り咲き

今シーズンの目標は、昨年に引き続き全戦優勝して世界へ返り咲くことです。それは変わりません。もちろんライダーとして世界に出ていくだけではなく、チームとして世界で戦えるだけの実績とデータを蓄積することが大切だと考えています。予選での一発の速さも大切ですが、チェッカーを受けるまでのレーシングタイムやレース中の最速ラップも昨年を上回り、他を寄せつけない勝ち方にこだわりたいですね。もちろん天候によるコースコンディションの違いがあるので、公約通りにすべてをクリアできるとは思いませんが、どんな条件であれ、そのときのベストで勝利を奪い取ります。それが十分できるチーム体制になっていますから。

■大治朗とワンツーフィニッシュが夢ですね

昨年との大きな違いは、チームメイトの日浦大治朗君の存在ですね。20歳になった大治朗君とはちょうど10歳離れていますが、よきライバルだと思っています。彼とは走行データやセッティング内容など、お互いオープンにして共有できるようにしています。彼は180cm近くあって僕とは体格も違うし、ライディングスタイルも違うので全く同じデータを転用できるわけではありませんが、テストや予選などで不具合が生じたとき、あえて2台とも同じセットで走行し、不具合の存在を確認しているんです。同じような症状が出れば、マシン調整すべきだとわかるし、不具合が一方だけの場合はライダーになにかしら要因があるとわかるので、セットアップや開発のタイムロスが減り、他チームに対するアドバンテージを築けます。もちろん、ライダーとしてはお互いに負けるわけにはいきませんが、尋ねられればアドバイスしています。結果としてワンツーフィニッシュすることも夢じゃないと思っています。その時のてっぺんは譲れませんけどね。

■アジア選手権とのダブルチャンピオンも狙っています

アジア選手権とのダブルエントリーも今シーズンから取り組んでいます。エントリーしているスーパースポーツクラスはJ-GP2と同じ600ccのバイクで戦いますが、一般の方でも購入できるプロダクションマシンをベースとしているので、まるで違う特性をもったマシンになっています。ちなみに先週(全日本ロードレース選手権第2戦の1週間前)はマレーシアのセパンサーキットでアジア選手権の初戦が開催され、レース1で優勝することができました。今シーズンは全日本ロードレースとアジア選手権の日程が重なっていないので、両カテゴリーにフルエントリーして、最終的にダブルチャンピオンを獲りたいと考えています。そして、再び堂々と世界GPに挑むつもりです。

高橋裕紀 高橋裕紀 高橋裕紀 高橋裕紀

関口太郎選手(せきぐち たろう)

勝てるチャンスは必ず来る
そのタイミングを見逃さないレースをします

レース関係者はもとよりファンの大半は「太郎さん」や「たろさ」のニックネームで呼ぶことが多い。2001年にGP250クラスで年間チャンピオンを奪うと、2002年には世界GPに参戦し、翌年にはヨーロッパ選手権で8戦全勝の偉業を達成。2009年に全日本ロードレースへ復帰するまでの5年間を世界GPで戦い、その速さを世界にアピールしたが、一方で相次ぐケガに泣かされ、シリーズを通しての成績上位獲得は果たせなかった。国内復帰後はST600クラス参戦を経て、2012年からJ-GP2クラスに参戦。今シーズンは2012年以来の優勝をねらっている。

■ディフェンディングチャンピオンの裕紀くんに一矢報いたい

まわりからはすっかりベテラン扱いされていますが、いつもフレッシュマンのつもりでレースに取り組んでいます。特に今年度はMuSASHi RT HARC-PROの本田重樹監督からマシンを貸与していただき、さらに昭和電機さんのサポートを受け、恵まれたレース環境を整えていただいたので、シリーズを通じて常にトップ争いのできるチーム体制が実現できました。年間を通しての目標は、同じホンダ勢でディフェンディングチャンピオンの裕紀くん(高橋裕紀選手)に一矢報いることですね。予選では昨年度チャンピオンにあとわずかのところまで迫ることができましたし、決勝当日の朝に行われたウォームアップ走行ではトップタイムをマーク。十分戦える手応えを感じていましたが、表彰台には届かず悔しい開幕戦となりました。それでも決勝レースでは、最終ラップまで2位グループでバトルを展開しましたので、自分なりに評価できるのではないかと感じています。

■2位争いの悔しさを次戦につなぐ

悔しいけれど、3台でバトルしながらライバルたちの挙動やマシン特性を分析・観察できたのは、シリーズを戦ううえで大きかったと思います。僕なりにプッシュしてパッシングをしかけたポイントがありましたが、ある区間ではそのアドバンテージが一気に逆転されるということを繰り返したレース展開でした。おかげで自分自身のマシンの状態も痛いほどわかったし、ライバルたちの状況も理解できました。さすがに6秒差をつけられた裕紀くんについては観察する時間が全くありませんでしたが、決して歯が立たない相手ではありません。コンディションも変われば、サーキットごとの特性もあるので、必ず勝つチャンスは巡ってきます。そのチャンスが来たときにしっかりつかみとる。それこそが僕の勝利の方程式ですね。

■レースリザルト以上に大きな収穫もあった

実を言うと、一昨年バセドウ病に罹患していることがわかり、今も病気と向き合いながらレース活動に取り組んでいます。幸いにも僕の場合は軽度の症状なのですが、それでも罹患直後にはレース後半に脈拍が急激に不安定になり、ラップタイムも大幅にダウンすることがありました。そのためシーズンオフを活用し、スポーツトレーナーさんの指導のもとトレーニングを行い、症状も少しずつ改善されてきました。ただ事前テストではレースと同じ長さのロングランができなかったので、若干の不安を抱えながらの開幕戦だったことは事実です。表彰台に上れませんでしたが、ラストラップまで表彰台争いができたことは、そういった意味でも大きな収穫だったのです。シーズンは始まったばかりですが、開幕戦のリザルトと身体に関する自信を糧に、ステップアップしていきたいと考えています。

関口太郎 関口太郎 関口太郎 関口太郎