2012年4月1日(日)・決勝 会場:栃木県ツインリンクもてぎ 天候:晴れ 気温:12.3℃ 観客:7000人
昨年でRS125が歴史の幕と閉じ、全日本ロードレース選手権は完全4ストローク化となりました。新たな幕開けを告げる開幕戦はGP-MONOが姿を消し、JSB1000、J-GP2、J-GP3 、ST600と4クラスに統合されました。
最高峰クラスJSB1000はV3を狙う秋吉耕佑(F.C.C.TSR Honda)を核にライバルたちは「打倒秋吉」を掲げています。Hondaのエースを狙う高橋巧(MuSASHi RT ハルクプロ)も、その一人。先輩である秋吉を倒すことで、自身の力を示そうとしています。また、昨年のST600クラスチャンピオンの山口辰也(TOHO Racing with MORIWAKI)がJSB1000に復帰。それぞれタイヤメーカーをダンロップとブリヂストンに変更した加賀山就臣(スズキ)と中須賀克行(ヤマハ)、さらに柳川明(カワサキ)といったライバルたちがひしめき合い、JSB1000は4メーカ―による激しい戦いが予想されます。
開幕戦では木曜日にテスト走行が行われるのが定例で、今シーズンも各車、コンディションを確認しました。その走行で秋吉が午前の走行開始3ラップ目、2コーナーで転倒、マシンが自身に落ちてくるアクシデントで左大たい骨を骨折しました。金曜日に手術し、第3戦の筑波復帰を目指すことになりました。秋吉不在となったフリー走行で、唯一1分49秒台に入れてトップタイムとなったのが高橋。秋吉不在をカバーしようと、高橋の走りは気合いがこもったものとなりました。
土曜日の午後に行われた予選はノックアウト方式でした。あいにくの雨模様で、風も強く吹きつけるコンディション、降ったりやんだりと天候が読めない状況となったセッション1、トップは中須賀。23台が進出したセッション2は、雨が本格的に降り出す中でトップには高橋。12台で競われる最終予選のセッション3では、開始前に雨と風が強くなり赤旗が提示され、セッション中止となりました。これを受けてセッション2での順位で予選グリッドが決められることになり、高橋がポールポジション(PP)を獲得しました。
決勝日は、雨も上がり、路面温度40℃と上昇する好天の中、ドライコンディションでレースが行われました。ホールショットは加賀山。2番手につけた高橋は3コーナーでしかけて前に出ますが、5コーナーで再び加賀山が高橋をパス。これに対し高橋も引かず、ダウンヒルで加賀山に並ぶと、90度で飛び込み前に出ました。
そこからは、高橋の独壇場で、加賀山以下を引き離し始めます。高橋の後方では、加賀山、中須賀、柳川が2番手争いを繰り広げます。今季からJSB1000に復帰した山口は5番手。高橋は5ラップ目にファステストラップ1分49秒629を記録し、2番手加賀山に4秒3ものアドバンテージを築きます。49秒台を叩き出し、さらに独走態勢となりました。3位争いから中須賀が抜け出して49秒台にタイムアップしますが、高橋もタイムアップし4秒差は変わりません。
ですが、周回遅れの出現とあわせ、V字コーナーで高橋が痛恨のシフトミス。ワイドラインになり、その差が2秒と詰まりました。さらに、12ラップ目に大量の周回遅れが絡み、高橋の背後に中須賀が迫ります。2台はテール・トゥ・ノーズとなり、14ラップ目には中須賀が高橋の前に出て、トップを奪います。中須賀がタイムアップする後方で、高橋には不運なことに周回遅れが絡み、その差を広げました。そのまま中須賀が逃げきり優勝。2位は高橋、3位は柳川、4位は加賀山、5位は山口となりました。
J-GP2は、昨年チャンピオンの中上貴晶がMoto2に参戦するため、ゼッケン1が不在。中上に代わってチームメートの浦本修充(MuSASHi RT ハルクプロ)がST600からスイッチして挑むことになりました。激しいアタック合戦となった予選、PPは逆転で関口太郎(Team TARO PLUS ONE)が獲得。浦本は2番手となりました。
決勝ホールショットは関口、2番手野左根航汰(ヤマハ)、それを追って渡辺一樹(カワサキ)のオーダー。浦本はスタートで出遅れ6番手からの追い上げとなります。2ラップ目2コーナーで野左根が転倒、3ラップ目には渡辺が関口をかわしてトップに立ち、浦本は野田を捕らえ3番手に浮上します。浦本は6ラップ目に中上が残したレコードタイムを更新、遂に8ラップ目のダウンヒルで関口に並び、90度でインに飛び込んで2番手に浮上します。
浦本はトップの渡辺を追撃、3番手に関口が続きます。4番手には岩田悟(CLUB PLUS ONE)、5番手に野田弘樹(テルル&イー・モバイル★KoharaRT)となり単独走行。トップ争いから関口が遅れ、浦本、渡辺の一騎打ちとなり激しい攻防戦が繰り広げられますが、最終ラップの90度で勝負をかけた浦本が先行。初優勝のチェッカーをくぐり抜けました。2位は渡辺、3位は関口、4位は岩田、5位は野田となりました。
J-GP3は、GP-MONOからの参加組も加わり45台がエントリー、40台が予選を通過しました。PPを獲得したのは、昨年のGP-MONOチャンピオン長島哲太(Projectμ7C HARC)。長島はテストで転倒してしまい、右足の付け根にヒビが入るケガを負ってしまいました。ですが、GP-MONOからの乗り換えもケガのハンデも感じさせない走りを見せました。
また、今季からMoto3に参戦する藤井謙汰(F.C.C.TSR-CIP Honda)が特別参戦(賞典外)。昨年のチャンピオンである藤井がゼッケン1を付けて、2番手から決勝に挑みます。スタートで真っ先に1コーナーに飛び込んだのは藤井、それを長島が追い3コーナーでトップに。藤井と長島は2位以下を引き離してトップ争いを繰り広げます。
4ラップ目に藤井がトップを奪いますが、長島は、3コーナーでしかけ前へ、また90度の飛び込みで藤井が前に出るなど、激しい攻防が続きます。そこへ、スタートの出遅れから猛然と追い上げてきた山本剛大(Team NOBBY)が追いつき、トップ争いは3台となります。4位争いは徳留真紀(MuSASHi RT ハルクプロ)と全日本ロードレース選手権初参戦の13歳、國峰啄磨 (JARIRacing+ENDURANCE)の戦いとなり、抜きつ抜かれつのバトルを展開します。
藤井、長島、山本のトップ争いは6ラップ目から最終ラップまで続き、90度コーナーで3台のラインがクロス、その中からはじかれるようにビクトリーコーナーで長島が転倒、山本がトップに立ち、逃げきりの開幕勝利。2位藤井、3位徳留、4位國峰となりました。藤井は章典外のため、優勝は山本、2位は徳留、3位は國峰となり、3人が表彰台に上りました。
ST600は、チャンピオンの山口辰也がJSB1000にスイッチしたため、このクラスもチャンピオン不在の戦いとなります。PPは昨年復帰した井筒仁康(カワサキ)。地元ライダーである渡辺一馬(KoharaRacing)が僅差で2番手。決勝スタート、ホールショットは井筒でレースをリード。2ラップ目、トップ井筒を追いデチャ・クライサルト(ヤマハ)、3番手に浮上したのは小林龍太(MuSASHi RT ハルクプロ)。渡辺も4ラップ目には4番手に浮上し、トップ争いを繰り広げます。5番手に大崎誠之(ヤマハ)、6番手にチャロポン・ポラマイ(ヤマハ)、以降、佐藤裕児(ヤマハ)、横江竜司(ヤマハ)、中冨伸一(ヤマハ)がトップ集団を形成します。
5ラップ目にクライサルトは90度コーナーで前に出て首位を奪います。6ラップ目に井筒がしかけますが、90度でかわされ、さらに7ラップ目で追い上げてきたポラマイにも先行を許し3番手となります。渡辺は小林をパスして4番手に浮上、5番手小林、6番手に岩崎哲朗(カワサキ)、佐藤までがコンマ差にひしめきます。クライサルト、ポラマイはタイムアップして逃げにかかりますが、井筒らも食らいついていきます。12ラップ目、トップ争いに加わっていた小林がV字で転倒、再スタートしますが、上位入賞は厳しくなってしまいます。
14ラップ目、トップ争いは4台にしぼられクライサルト、ポラマイ、井筒、渡辺となります。5位争いは岩崎、佐藤。最終ラップにはポラマイがしかけ、優勝はポラマイ、2位にクライサルト、3位に井筒。4位に渡辺。小林は18位でチェッカーを受けました。
高橋巧(JSB1000 2位)「秋吉さんが欠場になったので、僕が勝たなければと思っていました。テストから調子がよく、レースウイークもいい状態で過ごせたので、スタートから自分のペースで走ることができました。ですが、途中からうまく走れなくなってしまいました。決勝のコンディションに合わせたセットアップを出しきれなかったのだと思います。この悔しさを晴らすためにも、次は絶対に勝ちます」
山口辰也(JSB1000 5位)「今回はトラブルがあり、なかなか原因を見つけられなかったのですが、予選中にようやく突き止められました。決勝朝のフリー走行で試しで走りましたが、まだまだの状態でした。次戦の鈴鹿2&4レースには準備が整うので、今戦以上の走りがしたいと思っています。上位の4台に届くことはとても難しいと思いますが、少しでも差を詰められるようにがんばっていきたいと思います」
浦本修充(J-GP2 優勝)「レース序盤のペースが速く、遅れてしまいましたが、絶対に追いつけるから、落ち着いていこうと思いました。本当は早めに抜いて、逃げて勝ちたかったのですが、渡辺選手とのバトルになってしまいました。ヘアピンでスピードをのせて90度で刺すしかないと思っていました。最後に勝つことができてよかったです。PPが取れなかったことも、レコードを出せなかったことも悔しいです。次は、悔しい思いをしないようにがんばります。でも、勝てたことはうれしい。勝ててよかったです」
関口太郎(J-GP2 3位)「昨年の最終戦でのアクシデントで、左肩から腕が腋窩神経麻痺(えきかしんけいまひ)というケガから完治していなく、レース中盤からアクセルを開ける感覚も、ブレーキをかけている感覚もなくなってしまい、追い上げることができませんでした。中上選手がいなくなったのに、同じカラーリングの浦本修充選手に負けたのが悔しい。でも、この状態で3位に入れたのでよしとします」
山本剛大(J-GP3 優勝)「スタートが苦手なのですが、それでも追いつける自信がありました。落ち着いていけば、最終ラップには勝負ができるだろうと考えていました。藤井謙汰選手のマシンがスピードにのっていたので、1台のスリップでは追いつかないと思いました。ガンガン攻め込んでくるタイプなので、最終ラップでV字までには2番手に上がり、90度コーナーで自信のあるブレーキング勝負だと思っていました。安定して力を出していくことが課題なので、次もがんばります」
徳留真紀(J-GP3 2位)「4ストロークの乗り換えも問題なく、準備期間がなかった割にはいいスタートが切れました。ハルクプロに加入し、期待されてのレースでしたが、セッティングはまだ納得できる状態ではありません。これからの部分も多く、サスペンションセットなども試行錯誤している状態ですが、その中でもタイムを落とすことなく走りきれたのはよかったと思います。トップ争いがしたかったですが、スタートが思ったよりうまくいって、表彰台に上れてよかったと思います」
國峰啄磨(J-GP3 3位)「スタートをミスして焦ってしまい、最初に抜かれてしまいました。ですが、1台1台抜いて徳留さんに追いつけたので、勉強したいと思い、ついていきました。最終ラップまで抜きたくてがんばりましたが、やはり抜けませんでした。でも、たくさん勉強できたうえに、3位で表彰台にも上れたのでうれしいです。これからも、結果を残せるようにがんばります」
渡辺一馬(ST600 4位)「悔しいです。トップが見える位置で、さらに3位の井筒さんも目の前だったのですが、しかけられずに終わってしまいました。地元のもてぎなので、応援に来てくれた方もたくさんいました。そのみなさんの前で見せるレースをできなかったのが残念です。レースの組み立てとしては、自分の想定通りでした。自分のペースを守り、ペースダウンしてきたライダーを捕らえて前に出ようとしました。次はマシンもタイヤも自分自身もいいところを引き出せる走りができるようにしたいです」
小林龍太(ST600 18位)「予選からの流れは悪くなく、それを決勝につなげられませんでした。スタートはうまく決まり、トップ争いに加わることができました。ですが、自分のミスで転倒してしまいました。無理していたわけではなかったのですが、対処できませんでした。そのなかでも、久しぶりにトップ争いができたことで自信につながった部分もあります。確実に自分自身も上向いていると思うので、次戦の筑波は地元ですし、勝ちを狙っていきます」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 21 | 中須賀克行 | ヤマハ | 33:11.103 |
2 | 634 | 高橋巧 | Honda | +8.376 |
3 | 87 | 柳川明 | カワサキ | +21.147 |
4 | 71 | 加賀山就臣 | スズキ | +32.748 |
5 | 104 | 山口辰也 | Honda | +46.867 |
6 | 1 | 芹沢太麻樹 | カワサキ | +52.041 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 65 | C.ポラマイ | ヤマハ | 34:52.151 |
2 | 30 | D.クライサルト | ヤマハ | +0.094 |
3 | 77 | 井筒仁康 | カワサキ | +1.52 |
4 | 3 | 渡辺一馬 | Honda | +2.929 |
5 | 6 | 佐藤裕児 | ヤマハ | +6.956 |
6 | 9 | 岩崎哲朗 | カワサキ | +8.445 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 634 | 浦本修充 | Honda | 34:36.928 |
2 | 26 | 渡辺一樹 | カワサキ | +0.103 |
3 | 2 | 関口太郎 | TSR | +5.08 |
4 | 34 | 岩田悟 | Honda | +14.487 |
5 | 10 | 野田弘樹 | TSR | +17.79 |
6 | 51 | 高橋英倫 | カワサキ | +32.304 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 4 | 山本剛大 | Honda | 28:34.512 |
※ | 1 | 藤井謙汰 | Honda | +0.217 |
2 | 634 | 徳留真紀 | Honda | +5.593 |
3 | 55 | 國峰啄磨 | Honda | +5.69 |
4 | 16 | 亀井雄大 | Honda | +15.567 |
5 | 31 | 佐野優人 | モリワキ | +15.803 |
6 | 3 | 仲城英幸 | Honda | +15.895 |
※藤井謙汰選手は賞典外の特別出場
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 中須賀克行 | ヤマハ | 25 |
2 | 高橋巧 | Honda | 22 |
3 | 柳川明 | カワサキ | 20 |
4 | 加賀山就臣 | スズキ | 18 |
5 | 山口辰也 | Honda | 16 |
6 | 芹沢太麻樹 | カワサキ | 15 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | C.ポラマイ | ヤマハ | 25 |
2 | D.クライサルト | ヤマハ | 22 |
3 | 井筒仁康 | カワサキ | 10 |
4 | 渡辺一馬 | Honda | 18 |
5 | 佐藤裕児 | ヤマハ | 16 |
6 | 岩崎哲朗 | カワサキ | 15 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 浦本修充 | Honda | 25 |
2 | 渡辺一樹 | カワサキ | 22 |
3 | 関口太郎 | TSR | 20 |
4 | 岩田悟 | Honda | 18 |
5 | 野田弘樹 | TSR | 16 |
6 | 高橋英倫 | カワサキ | 15 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 山本剛大 | Honda | 25 |
2 | 徳留真紀 | Honda | 22 |
3 | 國峰啄磨 | Honda | 20 |
4 | 亀井雄大 | Honda | 18 |
5 | 佐野優人 | モリワキ | 16 |
6 | 仲城英幸 | Honda | 15 |