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全日本モトクロス2015 Team HRC現場レポート

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vol.19 2015年シーズンに向けた手ごたえ

2015年シーズンに向けた手ごたえ

全日本モトクロス開幕戦(4月5日・熊本・HSR九州)が間近に迫り、Team HRCの準備も仕上げ段階に入りました。今シーズンはIA1クラスに成田亮選手(#1・CRF450RW)、小方誠選手(#2・CRF450RW)、そしてIA2クラスに富田俊樹選手(#317・CRF250RW)という布陣で臨みますが、3選手は名護オールスターモトクロス(3月8日・沖縄・ImaNAGOクロスフィールド)に参加してきたところ。今回の現場レポートでは、芹沢直樹監督が実戦の感触を交えながら、Team HRCの近況を語ります。

昨年のシーズンオフに続いて、2度目の沖縄でした。冬でもマシンテストができる環境を探していたところ、名護に元国際A級ライダーの松田強さんが所有しているコースがあると知り、昨年初めてテストに行ったのです。その時はトロピカルな雰囲気のジャングルみたいなコースでしたが、レギュラーシーズンの気温で性能確認ができたし、ライダーの練習にもなったので、プロ野球のように沖縄キャンプを定例化したいと思いました。

その後、松田さんの熱意によって、今回のオールスターモトクロスの開催が実現したので、今年はマシンテストと参戦を兼ねた沖縄遠征になりました。ImaNAGOクロスフィールドはずいぶん改修されて、昨年よりも広く見渡せるコースに生まれ変わっていました。レース形式は20分プラス1周の2ヒート制。IA1とIA2の混走でしたが、賞典はクラス別で、IA1では小方が総合優勝(2位/1位)、成田が総合3位(1位/5位)、IA2では富田が総合優勝(1位/1位)でした。

ヒート1はスタートから成田が出て、小方が追いかける展開。ここまではいつも通りだったのですが、前半で小方がベストラップを出して前に出たことが、ささやかな収穫でした。その後は周回遅れが出てきたこともあり、成田が抜き返したのですが、小方のタイムが後半になって落ちていたので、当然のなりゆきでした。本当はもう一勝負してほしかったのですが、成田に食らい付けなかったことが小方の反省点です。

ヒート2では小方がスタートを決めてトップに立ち、成田に突っつかれてもリードを保ちました。狭いので抜きどころがあまりなかったとはいえ、再び接戦となりそうだった矢先に成田がスリップダウンして自滅。めったに転ばないライダーが転倒したということは、それだけレースモードでムキになっていたということで、小方の成長ぶりが成田を本気にさせたのだと思います。今までは後ろについても抜けないまま終わっていた小方が、成田の前に出たこと。小方が勝つためには大事な展開です。

成田については、2月上旬に鎖骨とろっ骨を骨折していたので、沖縄のオールスターは無理かもしれないと思っていましたが、本人が「絶対に間に合わせる」と意欲的に取り組み、なんとかレースできるレベルまでコンディションを上げてきました。成田は昨シーズン終了後に足の抜釘手術をしたので、昨年いっぱいは安静にしていて年明けからマシンに乗り始めたのですが、始動後1カ月でケガをしたので、正直に言って厳しいのでは……と思っていました。走り込みが充実していていた昨年ののオフと比べると、練習不足であることは確かでした。

富田は混走レースの中で、成田や小方からは離された3位/3位(IA2クラス1位/1位)でした。富田も成田と同じような状況で、昨シーズン終了後に肩の脱臼癖を治す手術を受けたため、3カ月ぐらいバイクに乗っていませんでした。沖縄でのテストが乗り始めだったのですが、予想よりもいい状態で、成田や小方と同等のペースで走れていたので、慣らしとしては上出来でした。体力面ではまだまだ戻さないといけませんが、戻せる見通しはオールスターのレースでも確認できました。

負傷から回復中の2人とは対照的に、小方はケガもなく課題克服に取り組んできました。自らグアムに2週間行ってフィジカルトレーニングを行い、その後ニュージーランドで1カ月ライディング中心のキャンプを順調にこなしてきました。沖縄での走りには、よくも悪くも変化がありました。スタートが向上している。レース前半でベストラップを出す走りができている。今までは後半にならないとベストを出せない傾向があったので、そこを修正できれば成田の強敵になれるでしょう。後半に強い小方が10分以降ペースダウンしたのは、ニュージーランド帰りの疲れがあったのだろうと思います。

今回のオールスター参戦は、いろいろな収穫がありました。チームとしては、チーフメカの交替などスタッフの入れ替えがあったので、全日本開幕に向けたシミュレーションができたことがよかった。もちろん最初からそういう目的もあって参加したので、全日本と同じ態勢で行きました。違うのは、トラックが行けなかったことと、SHOWAさん、KYBさん、トレーナーが不参加だったことぐらい。ダンロップさんには来てもらいました。全体としてはレース中の流れ、役割分担などを確認できたのがよかったと思います。実際にやってみて初めて分かることもあるので、開幕戦の前にオールスター戦があるのは意義深いことです。

レースをやる側にとっては前哨戦のような位置付けですが、観る側にとっては楽しいオールスターだったと思います。改修されて見違えるようになったコースは、観客席から全体が見渡せるレイアウトでしたし、お客さんの多さは全日本並みのにぎわいでした。HRCでレースをやる目的の一つにHondaのプレゼンス向上というのがありますが、沖縄における販売促進のみならず、モトクロスを底辺から盛り上げるためにも、今後も参加していきたいと思います。

沖縄遠征のあとは、最終チェック的なテストを連日行っています。近々ベン・タウンリー(2004年モトクロス世界選手権MX2チャンプ、2007年AMAスーパークロス・ライツイーストチャンプ)が来日して、テストに合流してもらうことになっています。タウンリーはライディングコーチとして契約したのですが、テストに帯同して一緒に走りながらアドバイスをしてもらうつもりです。小方は先行してニュージーランドに行き、タウンリーの家に下宿しながら特訓を受けてきました。

タウンリーを招聘した経緯ですが、彼はニュージーランドでもHonda系の仕事をやっていたので接点があり、世界とアメリカでチャンピオンになった実績を生かして、日本のライダーをレベルアップしてほしいと考えた結果です。我々は日本のライダーにアメリカや世界のチャンピオンを目指してほしいと考えています。全日本チャンピオンはその過程で獲得できるはず。だから、世界とアメリカを知っているタウンリーに、コーチをお願いしたのです。いろいろ吸収しながらスキルアップさせたいと思います。

今年はIA1とIA2の両クラスを制覇し、ダブルタイトルを獲りたいと思っています。ライダーは3人とも追われる立場になりますが、そこで守るのではなくチャレンジする姿勢を貫きたい。目標を高く掲げているのは、そのためです。Team HRCの開幕ダッシュにご期待ください!