2012年6月9日(土)・決勝 会場:テキサス・モーター・スピードウェイ
天候:快晴 気温:29〜31℃
テキサス・モーター・スピードウェイでのシーズン第7戦は、今年初めてのナイトレースとして開催。そして、今年初めての1.5マイル・オーバルでのレースとして開催されました。
メキシコ湾に面するテキサス州では、6月はすでに真夏。例年よりは幾分涼しめだったとはいえ、レースデイの日中は気温が32℃にも達し、夜7時過ぎのスタート時でも31℃と、暑さが残ったままでした。
グランド・スタンドの裏へと太陽が沈み、気温が次第に下がりはじめた中でレースはスタート。テキサスでの2年連続ポールポジションからアレックス・タグリアーニ(Bryan Herta Autosport)が好スタートを切ってトップを保ちました。
予選2番手のダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)は、序盤からハンドリング不調でポジションを落としていき、代わって予選4番手だったスコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing)がレースをリードしました。ディクソンは、最多リードラップを記録して快走を続けましたが、バックマーカーに追いついた際に乱気流を浴びてスピンしてしまい、アクシデントによりリタイアを喫しました
今シーズンから導入されている新型シャシーのDW12と、それに伴う新しい空力レギュレーションによって、テキサスでのレースは様相が一変していました。マシン同士が接近したままアクセル全開で走り続けるタイプのレースは不可能となり、マシンとマシンにある程度のスペースをあけて、ドライバーがテクニックを発揮しやすいバトルとなったのです。空力によるグリップが得にくいため、タイヤの消耗が激しくなり、同じタイヤで周回を重ねるとラップタイムが大きく落ち込みました。そこからのマシンコントロールが今日の勝敗を決することになりました。
レースが終盤を迎え、残り30周を切ったところでトップに立ったのは、予選3番手のグレアム・レイホール(Chip Ganassi Racing)でした。彼はキャリア2勝目へと周回を重ねましたが、ゴール前3周でターン4の壁にヒット。走行を続けることはできましたが、トップはジャスティン・ウィルソン(Dale Coyne Racing)の手にわたり、テキサスでのレースウイナーとなりました。今シーズン初勝利は、ウィルソンのキャリア7勝目。うれしいオーバル初勝利で、Dale Coyne Racingにとっても、初のオーバル優勝を飾りました。レイホールは2位でゴール。Hondaエンジンはインディ500からの3連勝。今シーズン3勝目を1-2フィニッシュで達成しました。
佐藤琢磨(Rahal Letterman Lanigan Racing)は、予選は10番手でしたが、ファイナルプラクティス後にエンジン交換を行ったため、20番グリッドからのスタートとなりました。後方から追い上げるレースを戦うことになった佐藤でしたが、スタート直後からオーバーテイクを重ねる目覚ましい走りを見せ、序盤のうちに6番手へとジャンプアップを果たしました。優勝争いへと絡んでいく勢いを見せたのです。しかし、64周目のターン2出口で突如としてマシンのリアがグリップを失い、スピンしてコースの内側にストップ。3戦連続のリタイアを喫しました。
全16戦のうち7戦まで終了し、Honda勢のポイントリーダーはスコット・ディクソンの2位で、トップとは36点差がある状態です。ポイント3位には、今日4位でゴールしたジェイムズ・ヒンチクリフ(Andretti Autosport)がつけています。
マニュファクチャラーポイント争いは、シーズン中盤を迎えて白熱してきました。Hondaが3連勝を挙げ、トップとのポイント差が4点にまで縮めました。
ジャスティン・ウィルソン(優勝)「ファンタスティック! エンジニアのビル・パパスに感謝します。そして、Dale Coyne Racingで働くクルーたち全員に、同じように感謝します。彼らは長時間のハードワークをこなしてきてくれているんです。チームオーナーのデイル・コインも大きなエネルギーをつぎ込んでくれています。今日、こうして勝つことができたなんて、信じられない気持ちです。マシンがファンタスティックでした。周回を重ねるほどにマシンのフィーリングはよくなっていきました。多くのドライバーたちがマシンをスライドさせていましたので、自分のラインを守り続けることが必要だとわかっていました。グレアム・レイホールのマシンは、ゴールを前にしてスライド量がどんどん大きくなっていっていました。しかし、チャンスがあるとは思えませんでした。彼が壁にヒットしたのを見たとき、『ここからだ』と思いました。ターン3の入り口からターン4を脱出するまで、4輪をドリフトさせての走りになっていました。すべてを出しきっての勝負になっていたのです」
佐藤琢磨(21位)「エキサイティングで、しかも挑戦のしがいがあるレースとなっていました。いいスタートを切り、ポジションをいくつか上げました。その後はポジションが落ち着き始めましたが、着実に1つずつ、さらに順位を上げていくことができました。今日の私たちは小さなダウンフォースで走ったため、ドライビングは難しく、すべてのコーナーでアクセルを開閉しなければなりませんでした。そのためにドライビングは難しくなっていましたが、同時にそれがレースをすばらしいものにしていたと思います。私たちのチームはピットストップも速く、さらにポジションをアップできました。クルーたちが見事な作業をしてくれました。そしてリスタートでポジションをさらに2〜3上げることができ、いい展開になっていると見えていました。しかし、ピットストップのあとのマシンは動きが神経質になっていて、ターン2の出口で突如としてリアが流れ出し、コントロールを失い、レースを終えることとなりました。本当に残念でなりません。がっかりしています。今回も私たちのチームはいいパフォーマンスを見せることができていました。次のレースでこそ、力強いフィニッシュを実現できることを願っています」
ロジャー・グリフィス|HPD テクニカル・ディレクター「ジャスティン・ウィルソンとDale Coyne Racingが、またやってくれました。小さなチームだというのに、本当にすばらしいレースを戦っていました。インディ500で彼らは速さを見せ、テキサスでオーバル初優勝を飾りました。もうジャスティンと彼らのチームはオーバルでも常にトップ争いをできる力を身につけていると思います。長年一緒に働いてきているエンジニアとドライバーなので、お互いを理解し合い、マシンを高いレベルに仕上げることができているのだと思います。グレアム・レイホールとChip Ganassi Racingもファンタスティックなレースを戦っていました。アウト側のラインを走り、危ないシーンが見られたあと、残り3周で壁にヒットしてしまったのは本当に悔しいでしょうが、何とか走り続けて2位フィニッシュを果たしました。この1-2フィニッシュは本当にうれしいものです。残り40周ごろにはライバルのエンジン勢がトップ4を独占していました。スコット・ディクソンがアクシデントを起こすという、予想もしなかった事態のあとは、ライバルチームが1-2-3体制になるなど、戦況はかなり厳しいものと見えていました。しかし、残り30周前後で、先行するライバルマシンがペナルティでピットに入ったころから、逆転できる可能性が大きくなり、1-2フィニッシュを実現できたのです。これでマニュファクチャラーポイントの差をまた縮めることができました。もちろん、今後の戦いも厳しいものになるでしょう。これからもエンジン開発でプッシュを続けていきます」
順位 | No. | ドライバー | チーム | エンジン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 18 | ジャスティン・ウィルソン | Dale Coyne Racing | Honda | 01:59:02.0131 |
2 | 38 | グレアム・レイホール | Chip Ganassi Racing | Honda | +3.9020 |
3 | 2 | R.ブリスコー | Team Penske | シボレー | +5.8619 |
4 | 27 | J.ヒンチクリフ | Andretti Autosport | シボレー | +10.4511 |
5 | 4 | J.R.ヒルデブランド | Panther Racing | シボレー | +18.7749 |
6 | 77 | シモン・パジェノー | Schmidt/Hamilton Motorsports | Honda | +21.3883 |
7 | 3 | H.カストロネベス | Team Penske | シボレー | - |
8 | 12 | W.パワー | Team Penske | シボレー | - |
9 | 98 | アレックス・タグリアーニ | Bryan Herta Autosport | Honda | - |
10 | 19 | ジェームズ・ジェイクス | Dale Coyne Racing | Honda | - |
11 | 11 | T.カナーン | KV Racing Technology | シボレー | - |
13 | 67 | ジョセフ・ニューガーデン | Sarah Fisher Hartman Racing | Honda | - |
14 | 10 | ダリオ・フランキッティ | Chip Ganassi Racing | Honda | - |
16 | 14 | マイク・コンウェイ | A.J. Foyt Racing | Honda | - |
18 | 9 | スコット・ディクソン | Chip Ganassi Racing | Honda | DNF |
22 | 15 | 佐藤琢磨 | Rahal Letterman Lanigan Racing | Honda | DNF |
23 | 83 | チャーリー・キンボール | Chip Ganassi Racing | Honda | DNF |
順位 | ドライバー | チーム | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | W.パワー | Team Penske | 256 |
2 | スコット・ディクソン | Chip Ganassi Racing | 220 |
3 | J.ヒンチクリフ | Andretti Autosport | 208 |
4 | H.カストロネベス | Team Penske | 203 |
5 | シモン・パジェノー | Schmidt/Hamilton Motorsports | 199 |
6 | ダリオ・フランキッティ | Chip Ganassi Racing | 192 |
7 | R.ハンターレイ | Andretti Autosport | 181 |
8 | R.ブリスコー | Team Penske | 177 |
9 | T.カナーン | KV Racing Technology | 160 |
10 | ジャスティン・ウィルソン | Dale Coyne Racing | 156 |
11 | グレアム・レイホール | Chip Ganassi Racing | 149 |
12 | J.R.ヒルデブランド | Panther Racing | 149 |
13 | O.セルビア | Panther DRR Racing | 141 |
14 | チャーリー・キンボール | Chip Ganassi Racing | 132 |
15 | 佐藤琢磨 | Rahal Letterman Lanigan Racing | 124 |
16 | E.J.ヴィソ | KV Racing Technology | 118 |
17 | R.バリチェロ | KV Racing Technology | 118 | 18 | M.アンドレッティ | Andretti Autosport | 118 |
19 | マイク・コンウェイ | A.J. Foyt Racing | 111 |
20 | ジェームズ・ジェイクス | Dale Coyne Racing | 109 |
21 | ジョセフ・ニューガーデン | Sarah Fisher Hartman Racing | 104 |
22 | E.カーペンター | Ed Carpenter Racing | 103 |
23 | アレックス・タグリアーニ | Bryan Herta Autosport | 102 |
24 | S.ブルデー | Dragon Racing | 86 |
25 | S.デ・シルベストロ | HVM Racing | 83 |
26 | K.レッグ | Dragon Racing | 76 |
27 | A.ベアトリス | Andretti/Conquest Racing | 28 |
28 | タウンゼント・ベル | Schmidt Hamilton Racing | 26 |
29 | ミシェル・ジョルダイン | Rahal Letterman Lanigan | 16 |
30 | S.サーベドラ | Andretti Autosport | 14 |
31 | ブライアン・クラウソン | Sarah Fisher Hartman Racing | 13 |
32 | ウェイド・カニンガム | A.J. Foyt Racing | 13 |
33 | J.アレジ | fan Force United | 13 |
順位 | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|
1 | シボレー | 54 |
2 | Honda | 51 |
3 | ロータス | 28 |