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終了時間の午後6時にはすべてのマシンがアタックを終わり、決勝に進める33台すべてのスターティンググリッドが決まるというのが理想である。事実1999年の予選がこの理想通りに終ったことは記憶に新しい。 しかし、完璧なかたちにおさまらない年のほうが圧倒的に多いのも事実で、エンジン・ブローやクラッシュによって予選は中断され、コースの安全が確かめられて予選が再開されるまでに費やされる時間は果てしなく長く感じる。加えてインディアナポリスの5月は西風に乗った冷たい空気が風雨をともなって訪れることでも有名で、この不安定な天候も大きな障害となる。しかしこれらの不確定要素がインディ500の予選をより複雑にし、しかし皮肉にも展開をエキサイティングにしていくというのも事実である。 現行ルールのもとでは、予選初日にアタックに成功したマシンには、フロントローから順番にグリッドが与えられる。したがって、たとえば予選初日の5月10日に16台が予選を無事に終えたとすると、4ラップの平均時速が速い順に33台中16台分のグリッドがフロントローから与えられる。予選初日に最も速い4ラップ平均時速を記録したマシンがインディ500のポールポジションを獲得することになり、同時に莫大な賞金を手にすることにもなる。 予選2日目となる5月11日のアタックに成功したマシンは、いくら予選初日のマシンよりも速い4ラップの平均時速をたたき出したとしても、初日にスターティンググリッドを獲得したマシン（上記例の場合は16台）の後に順に並ぶことになる。同様に、予選最終日の5月18日のアタックに成功したマシンは、予選2日目にスターティンググリッドを獲得したマシンの後方に並ぶことになる。したがって、ポールポジションを獲得したドライバーよりも速いドライバーが後方のグリッドに位置するという摩訶不思議な現象が起こることもあり得るのだ。 そして、最後にインディ500の名物「バンプデイ」が始まる。本戦出場枠の33台分のグリッドが埋まったからといって、予選が終了するわけではないのだ。予選最終日の午後6時まで、予選は何があっても続くのだ。最初の33台が埋まったあとに行なわれるアタックを「バンプ（はじかれる）デイ」と呼んでいるが、この「弾き出しゴッコ」ともいうべきシステムがインディ500の予選をますますエキサイティングなものにする。 予選初日にポジションを得ていようが、スターティンググリッドのどこに位置していようが、予選を通じて4ラップの平均時速が一番遅いマシンは「バブル（泡）の上にのっている」と表現される。残された予選の時間内に規定グリッドの33台から漏れたドライバーがそのバブルの上のマシンが記録した平均時速を上回る記録を出せば、代わってスターティンググリッドの最後方におさまることになる。仮に、予選初日にアタックに成功したマシンの最後尾（先述の例でいえば上位16台目のマシン）が弾き出された場合は、そのグリッドが空いて後続のクルマ（１7台目以降）が1つずつポジションアップすることになる。
ご想像の通り、コース、パドック、ピットレーンは予選最終日の午後には収拾がつかないほどのパニックに陥る。元F1ドライバー、エディ・チーバーの1993年のように、マシンを3回替え、6回（合計24周）の必至のアタックの末にようやく本戦出場を果たした例もある。 もし皆さんが今年インディ500の予選を3日間集中して追いかけていたにもかかわらず、途中で頭の中の整理がつかなくなっても、決して落ち込まないでいただきたい。インディアナポリス・モーター・スピードウェイのスタンドにいるほとんどのファンも同様に混乱しているはずだ。でも、そこはサーキット専属のベテランアナウンサーがちゃーんと状況を整理して、わかりやすく伝えてくれるのでご心配なく。 それでもまだ混乱しているようだったら、まあ肩の力を抜いて、順位など気にしないで、インディ500本戦に出場しようとするレーサーたちのスリリングな抜きつ抜かれつのショーと、サーキット上に張り詰めた緊張感を心ゆくまで楽しんで欲しい。 （日付けなどの記述、写真等は2003年時のもの） |
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