決勝1日目「トニー・ボウ、20個目のタイトルを獲得」
トニー・ボウ(Repsol Honda Team)が、自身20個目のタイトルを獲得しました。10個はインドアのタイトルで、そして今回、10個目のアウトドアタイトルを獲得。合計20個の世界選手権タイトルの大記録は、トニー・ボウにしか達成できないすばらしいものとなりました。
山の上に11個のセクションが設定され、スタート地点には第1セクション。合わせて12セクションを3ラップする戦いは、いつにもまして難しいものとされていました。しかしボウは、減点らしい減点をしません。圧巻だったのは第9セクション。ボウ以外の誰もが挑戦をあきらめ、5点のパンチだけもらって先を急ぐ中、ボウだけがトライして、1点2回、クリーン1回のすばらしいスコアを叩き出します。あわせて13点の減点は、2位のアダム・ラガ(TRS)に43点差。圧倒的な勝利でした。
6週間前に手首を骨折し、手術をして今大会に臨んだ藤波貴久(Repsol Honda Team)は、やはり手首の痛みに苦しみます。久々に目の前に見えてきたランキング3位。ライバルのアルベルト・カベスタニー(シェルコ)にはポイントで14点差をつけているのですが、必ずしも安全な点差とはいえません。
ハイメ・ブスト(Repsol Honda Team)は、ランキング5位争いの渦中にありました。しかしライバルのジェロニ・ファハルド(ヴェルティゴ)が表彰台に乗り、対してブストは5位。その差を4点縮められて、1点差まで詰め寄られてしまいます。
藤波は6位となり、内容的には不満の多いものとなりましたが、ライバルのカベスタニーは4位。その差を3点だけ縮められたにとどまりました。あと1戦、望みはつながりました。
ボウがタイトルを獲得した歓喜の反面、チームメートの2人は翌日の戦いに思いを巡らせていました。
決勝2日目「トニー・ボウ、最終戦を勝利で締めくくる」
明けて日曜日。土曜日同様、暑い一日となりました。
トニー・ボウは、第2セクションで5点となり、土曜日とは異なる展開で試合をスタートさせました。アダム・ラガ追撃を期します。
1ラップ目は一進一退。ラガとの今季のタイトル争いを再現するような、好勝負が続きます。この戦いに決着をつけたのは、チャンピオンを決めたボウでした。2ラップ目、ボウは8点で12セクションを走りきり、ラガとのリードを広げることに成功しました。
このまま試合は進み、ボウは今シーズン12勝目を挙げ、土曜日に獲得した2016年チャンピオンに華を添える形でシーズンを終えました。
チームメートの藤波貴久は、この日が最終決戦でした。ランキングポイント11点差で迎えた最終戦。この11点を守りきれば、ランキング3位が決まります。
土曜日に酷使した左手首は、この日は朝から激しい痛みで藤波を苦しめました。しかし藤波はこれによく耐え、最後の最後まで集中力を切らすことなく走りきりました。
序盤は表彰台争いをしていた藤波ですが、今回はさすがに表彰台争いは厳しかったのか、最終リザルトは5位となりました。ランキング争いのライバルであるアルベルト・カベスタニーは4位。ランキングポイントでは9点差で、藤波貴久はランキング3位獲得を決めました。2012年からランキング5位を維持していた藤波ですが、5年ぶりにランキング3位に返り咲きました。
チームの若手であるハイメ・ブストには、苦しい最終戦となりました。1ラップ目にミスが重なって、開幕戦から維持していたランキングを最後の最後に落として、最終的には6位でシーズンを終えることになりました。若いブストには、なお修業を積んで、さらに大きな目標に向かってがんばってほしいところです。
さて2016年のアウトドアトライアル世界選手権は終了しましたが、Repsol Honda Teamの活動はまだ終わっていません。来週末にはトライアル・デ・ナシオンがフランスで開催されます。チームからは、トニー・ボウがスペインチーム代表として、藤波貴久が日本チーム代表として出場します。
トニー・ボウ(優勝)
「今日は、本当に特別な日になりました。チャンピオンシップを獲得するというのは、いつだってすばらしいものです。しかし今年は、シーズン開幕直前に背中をケガして、苦しい戦いを続けなければいけませんでした。しかし終盤になって、調子は徐々に回復し、これまでの中でも最高のシーズンを送ることができました。これはチームのみんなの努力のおかげです。本当に感謝したいと思います。これ以上よい夢を見ることはできないでしょう。そして私は、まだまだ成長を続けていると確信しています。明日、そして来シーズンと、成長し続けたいと思います」
ハイメ・ブスト(5位)
「今日は複雑でした。序盤は、いい調子でトライを進められたのですが、その後、簡単なセクションで失敗したりして、好調を台無しにしてしまいました。2ラップ目に少し調子を取り戻し、3ラップ目になんとか5位のポジションを得ることができました。今日は私の小さな頃からのアイドルであるトニー・ボウが勝利を飾り、チャンピオンを決めました。彼はまだまだ、多くの勝利を獲得していくことでしょう。偉大なライダーと一緒に活動できて、私は幸せです」
藤波貴久(6位)
「本当に過酷な一日となりました。きつい一日になるだろうということは想定していたのですが、それをはるかに超えるきつさでした。セクションは難しかったですし、しかも時間もありませんでした。試合が始まってしばらくはよい走りができていましたが、それも時間の問題でした。右手の痛みもあったのですが、それ以上に全く集中できない走りになってしまいました。しかし結果は6位で、ランキング3位争いのライバルの(アルベルト)カベスタニーにまだアドバンテージを持って最後の戦いに臨めます。これはまだラッキーなことだと思います。今日はトニー(ボウ)がすばらしい記録を打ち立ててタイトルを獲得しました。おめでとう! トニー」
トニー・ボウ(優勝)
「今日は厳しい戦いとなりました。集中力を欠いていたのかもしれません、試合序盤にミスを犯して、それが私を苦しめました。しかし2ラップ目、調子を取り戻してリードを築き、最終戦に勝利をすることができました。これは大変に幸せなことでした
そして今日は、我らチームの誇り、『Fuji』藤波貴久のランキング3位獲得が決まった日でもあります。彼は手首を負傷して、大変な最終戦を迎えました。この夏、彼はここイタリアでランキング3位を獲得するために、あらゆる努力を重ねてきました。Fujiがチームにいることは、我々の大きな力です。おめでとう、Fuji。
シーズンが終わって、来週はトライアル・デ・ナシオンです。これは特別なレースです。私たちはこの特別な大会を楽しみたいと思います」
藤波貴久(5位)
「ランキング3位です。今は本当にわくわくした気分を味わっています。もう長いこと、このポジションから遠ざかっていましたからね。今回は手首の骨折があって、とても厳しい戦いとなっていましたから、その喜びはひとしおです。大会中は、手首の痛みとの戦いでした。今回はドクターにもパドックに入ってもらい、手首のケアをしてもらいながらの戦いでした。ドクターはもちろんですが、今日の日のためによい仕事をしてくれたチームのみんなに本当に感謝です。トニーのタイトル獲得と合わせて、ランキング3位獲得はチームにとっても、とても重要な結果だと思います。モンテッサにとって、Hondaにとって、HRCにとって、そしてもちろんRepsol Honda Teamにとってもです! 久々のランキング3位は、本当にうれしいです。来年も、いや来年は、もっと上を目指します」
ハイメ・ブスト(7位)
「今日はちょっと悲しい一日になりました。毎ラップともにミスが多く、そしていい調子で走ることができませんでした。難しいセクションではよい走りをしていても、簡単なところでミスをしてしまい、そして順位を落としてしまいました。望む結果にはなりませんでしたが、このチームでシーズンを1年間戦えて、私は幸せ者です」
ミゲール・シレラ監督
「トニー(ボウ)の20回目のタイトル、19回目のメーカータイトル。すばらしい記録が残りました。しかしその陰には、多くの人の多くの仕事がありました。今はすべての人に感謝したいと思います。トニーについては、どこまでこの記録が続くのか、我々の想像が及ばない強さを持っていると思っています。藤波(貴久)とは、彼のすべての世界選手権キャリアを共に戦ってきました。そして今年、再びランキング3位に返り咲いたその実力は、本当に不屈の精神というほかはありません。彼もまた、その力が衰えることなく、今後も戦い続けるに違いありません。ハイメ・ブストは、若いライダーです。これからいろんな経験を積んで、この失敗を教訓としていかなければいけません。シーズン序盤のハイメは本当にすばらしかった。この調子がシーズン終盤まで維持できるようになれば、ハイメにとってチームにとって、すばらしいシーズンとなることでしょう」
順位 | No. | ライダー | マシン | ラップ1 | ラップ2 | ラップ3 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | トニー・ボウ | ![]() |
6 | 2 | 5 | 13 | 26 |
2 | 2 | A.ラガ | TRS | 20 | 18 | 18 | 56 | 16 |
3 | 3 | J.ファハルド | ヴェルティゴ | 24 | 39 | 23 | 86 | 8 |
4 | 4 | A.カベスタニー | シェルコ | 28 | 28 | 33 | 89 | 9 |
5 | 6 | ハイメ・ブスト | ![]() |
41 | 33 | 17 | 91 | 15 |
6 | 5 | 藤波貴久 | ![]() |
30 | 38 | 29 | 97 | 8 |
13 | 24 | オリオール・ノゲイラ | ![]() |
49 | 35 | 45 | 129 | 2 |
15 | 10 | エディー・カールソン | ![]() |
49 | 50 | 49 | 148 | 2 |
順位 | No. | ライダー | マシン | ラップ1 | ラップ2 | ラップ3 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | トニー・ボウ | ![]() |
15 | 8 | 13 | 36 | 23 |
2 | 2 | A.ラガ | TRS | 16 | 18 | 16 | 50 | 23 |
3 | 3 | J.ファハルド | ヴェルティゴ | 23 | 13 | 19 | 55 | 17 |
4 | 4 | A.カベスタニー | シェルコ | 28 | 17 | 12 | 57 | 14 |
5 | 5 | 藤波貴久 | ![]() |
25 | 22 | 20 | 67 | 12 |
6 | 18 | M.グラタローラ | ガスガス | 31 | 23 | 27 | 81 | 12 |
7 | 6 | ハイメ・ブスト | ![]() |
40 | 24 | 21 | 85 | 12 |
13 | 24 | オリオール・ノゲイラ | ![]() |
40 | 44 | 41 | 125 | 9 |
15 | 10 | エディー・カールソン | ![]() |
40 | 46 | 41 | 127 | 4 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
- | 1 | トニー・ボウ | ![]() | 289 | |||||
- | 2 | A.ラガ | TRS | 252 | |||||
- | 3 | 藤波貴久 | ![]() | 190 | |||||
- | 4 | A.カベスタニー | シェルコ | 181 | |||||
▲ | 5 | J.ファハルド | ヴェルティゴ | 173 | |||||
▼ | 6 | ハイメ・ブスト | ![]() | 168 | |||||
- | 12 | エディー・カールソン | ![]() | 61 | |||||
▲ | 15 | オリオール・ノゲイラ | ![]() | 32 | |||||
- | 17 | 小川友幸 | ![]() | 14 |