World Trial 第8戦 ポルトガル 決勝
2015/09/06

トニー・ボウがダブルウイン。日曜日の勝利で9度目のタイトルを獲得

2015年シーズンの世界選手権もいよいよ終盤戦。この週末は、ポルトガルで開催され、その1週間後が、いよいよ最終戦となります。しかし、8度の世界タイトルホルダーであるRepsol Honda Teamのトニー・ボウは、最終戦を待たずに9度目のチャンピオンの座を手にしました。この大会、ボウはダブルウインを果たし、タイトル獲得に自ら花を添えました。

■決勝1日目

前戦アメリカ大会の終了時点で、ランキング2位のアダム・ラガ(ガスガス)に対して34ポイントの差を築いていたボウ。最終戦を前に、そのポイント差を40点にまで広げれば、その時点で、ボウの9度目のタイトルが決定する状況でした。

そのポルトガル大会、ボウが披露したパフォーマンスは、2015年シーズンの戦いの中でも、ベストと言えるほどすばらしいものでした。もちろんそれは、簡単にできることではありません。

ボウの減点は、1ラップ目の第2セクション。ここでの1点減点が、この日の足つき減点のすべてでした。結果には、これに2つのタイムオーバー減点が加わり、トータルで3点の減点が記されています。36セクションのうち、35セクションをクリーン。ラガもベストを尽くして肉薄しましたが、それでもトータル7点。数字以上に大きな点差をつけて、今シーズン12勝目を飾ったのでした。

この勝利で、ボウのポイントリードは37点。日曜日の戦いで、ラガに対してもう3点のリードを広げられれば、9度目のタイトルが決定するところまでやってきました。

他方で、ハイメ・ブスト(Repsol Honda Team)は第2戦チェコ大会ぶりとなる4位入賞。ルーキーイヤーでの大活躍は、本当に驚かされるものです。3ラップ目に3つの5点を取って表彰台は逃しましたが、堂々とトップライダーの仲間入りを果たしています。

藤波貴久(Repsol Honda Team)は、スタート直後から腰の痛みに悩まされるという苦しい戦いを強いられました。その苦しみは、スコアを見れば明らか。藤波は8位で戦いを終えました。

第8戦ポルトガル大会の2日目は、翌日に同じ会場で、同じ12セクションで開催されます。コースは1周12km。選手はこれを3ラップします。

決勝1日目コメント

トニー・ボウ(優勝)
「タイトルにあと一歩のところまで近づきましたが、今日はアダム・ラガ選手がとても力強く追いすがってきました。私にとっての重要課題は、土曜日にまず勝利を得ることであり、日曜日に再び勝利することです。ラガ選手との戦いは非常に激しいですが、同時に、自分のベストを引き出す結果にもつながります。減点の少ない神経戦の戦いは、自分にとって難しいものでしたが、私はまだまだ成長しています。今回の神経戦はうまく勝ち取れました」

ハイメ・ブスト(4位)
「今日は一発やってやるぞ、という気持ちでいっぱいでした。1ラップ目と2ラップ目のライディングはとてもすばらしいものでした。3ラップ目に、いくつかのセクションでマシンをストップさせてしまい、大きな減点をしてしまいました。それでも、今日は私にとってすばらしい一日だったと思います」

藤波貴久(8位)
「とても過酷な一日になりました。この1週間ほど、私は腰の痛みに悩まされていました。痛みの軽減に努めたものの、第2セクションでぶり返すと、以降のすべてのセクションが私を苦しめる舞台となり、減点も増えていきました。今日は、チームが望むようなハイレベルのトライアルができる状況ではなく、また事実、望む結果とはかけ離れた成績が残りました」

ミケール・シレラ監督
「今日は、ボウとブストがすばらしい結果を残してくれました。ブストは3ラップ目に表彰台を逃す結果となりました。今後はこれ以上の結果を出してくれるに違いないと確信しています。藤波については、ベストコンディションで試合に挑めなかったのがとても残念でした。私たちは、すでにコンストラクターのタイトルを獲得していますが、明日は9つ目の個人タイトルの獲得のために、全力を尽くしたいです」

■決勝2日目

いよいよ、ボウの9度目の世界タイトルをかけた戦いが、始まりました。

戦いは、シーズンベストの戦いと言えた、土曜日をリピートしたような展開でした。1ラップ目に1つの5点を含む6点の減点を取ったボウでしたが、ほかに一桁の減点で1ラップ目を終えたライダーはおらず、1日目同様、ラガが10点で肉薄しているという戦況も、土曜日とよく似ていました。

2ラップ目、ボウは12セクションすべてをクリーン。ラガは2点と、彼のベストを尽くしましたが、ボウのベストはそれを上回っていました。

3ラップ目もオールクリーンしたボウは、1ラップ目の減点6のままフィニッシュ。ラガにダブルスコアをつけて、今シーズン13勝目を挙げるとともに、自身9度目の世界タイトル獲得。もちろん前例のない偉業を達成したのでした。

ボウの活躍の陰に隠れてしまった印象がありますが、ルーキーのブストも、土曜日に続くすばらしい走りを披露しました。3位表彰台までわずか1点。とても悔しい4位となりましたが、表彰台に上がる日が近いと実感させられる結果でした。

藤波もまた、前日同様の戦いとなりました。ただし藤波の場合は、ボウやブストほどにはいい結果とはなりませんでした。腰の痛みと戦いながら、なんとか試合を走り終えた藤波は9位でした。その結果は到底満足のいくものではありませんが、ランキング5位はほぼ確定したと言え、守るべき順位を確実に守った結果でした。

次はいよいよ最終戦スペイン。ラ・コルーニャで、1週間後に開催されます。

決勝2日目コメント

トニー・ボウ(優勝)
「9度目のタイトル獲得はほんとうにうれしいです。満足すべき成果を得ることができました。前日のトライアルがあまりに簡単だったので、今日は少しは難しくなっているかと思いましたが、終わってみれば大差はなかったです。そんな中、ライバルの踏ん張りが、私にいい影響を与えていて、高い志気を保って走りきれました。両親、ガールフレンド、郷里の皆々、そしてタイトルを達成するために働いてくれたチームのメンバーに、最大限の感謝をしたいです」

ハイメ・ブスト(4位)
「第2セクションで2度も5点を取ってしまいました。そのために3位表彰台を逃してしまいました。とても厳しい戦いだったと思います。ボウのチャンピオンが決まる表彰台だったので、そこに私が乗っていれば、いい祝福になっただろうと、悔しい思いです。全体的には、マシンは最高の仕上がりですし、ライディングもよかったと思います。今シーズンはあと1戦残っていますから、私が表彰台に上がるチャンスもまだ残っていると思います」

藤波貴久(8位)
「前日の結果がよくなかったので、今日はそれをばん回するためにがんばったのですが、問題はさらに多くなっていました。セクションのほとんどで、前日に残った課題を改善できずに終わってしまい、それがメンタルを悪い方向に向けてしまったようです。1週間後は、シーズン最後の戦いですので、この不本意な結果をばん回し、いい形でシーズンを終えたいです」

ミケール・シレラ監督
「この週末はまず第一に、9度のアウトドア世界タイトルを獲得したトニー・ボウを祝福したいと思います。トライアルでは、“しのぐ”ことが、とても重要な要素であると、改めて痛感させられます。ボウ以外でも、今日の結果は悪くありませんでした。ブストはほとんど表彰台に上がったかのような活躍をみせました。藤波も、今回の彼の体調を考えると、やるべきことをすべてやった結果であったと思います。そしてライダーを含め、すべてのプロフェショナルなスタッフの面々に、心から祝福を送りたいです。タイトルを獲得するのは簡単そうに見えているかもしれませんが、それを何度も手にしようとすると、その難しさが際立っていきます。我々は長年にわたって世界タイトルを獲得していますが、世界タイトルを失った年もまた、少なからずあるのです。現在Repsol Honda Teamは、数年先のビジョンに向かって、日々の仕事をこなしています。そんな仕事ぶりが、結果やチームワークにつながっていると思います。私は、私たちと一緒に戦った人々に祝福を送り、また明日からよりいいマシンを作るために、がんばっていただきたいと思っています。ライダーと、それを支えたすべての人に、もう一度“おめでとう”と言わせてください」

決勝1日目リザルト

順位 No. ライダー マシン ラップ1 ラップ2 ラップ3 総減点 クリーン数
1 1 トニー・ボウ モンテッサ(Honda) 2 0 1 3 35
2 2 A.ラガ ガスガス 4 0 3 7 33
3 4 J.ファハルド ベータ 15 8 3 26 26
4 15 ハイメ・ブスト モンテッサ(Honda) 8 7 16 36 26
5 3 A.カベスタニー シェルコ 17 10 9 36 26
6 7 J.カサレス ベータ 16 17 13 46 25
 
8 5 藤波貴久 モンテッサ(Honda) 33 22 10 65 12
11 14 エディー・カールソン モンテッサ(Honda) 30 11 37 80 16

決勝2日目リザルト

順位 No. ライダー マシン ラップ1 ラップ2 ラップ3 総減点 クリーン数
1 1 トニー・ボウ モンテッサ(Honda) 6 0 0 6 34
2 2 A.ラガ ガスガス 10 2 0 12 31
3 3 A.カベスタニー シェルコ 14 3 7 24 27
4 15 ハイメ・ブスト モンテッサ(Honda) 12 5 8 25 29
5 4 J.ファハルド ベータ 15 11 1 27 29
6 7 J.カサレス ベータ 23 19 2 44 22
 
8 14 エディー・カールソン モンテッサ(Honda) 30 24 27 81 13
9 5 藤波貴久 モンテッサ(Honda) 36 31 22 89 14

総合順位

順位 ライダー マシン 総合ポイント
1 トニー・ボウ モンテッサ(Honda) 311
2 A.ラガ ガスガス 268
3 J.ファハルド ベータ 220
4 A.カベスタニー シェルコ 205
5 藤波貴久 モンテッサ(Honda) 181
6 ハイメ・ブスト モンテッサ(Honda) 164
 
10 エディー・カールソン モンテッサ(Honda) 87
16 小川友幸 Honda 16
23 佐藤優樹 Honda 1

スケジュール

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