Hondaの関連施設や連携会社が多く所在する埼玉県のウエストポイント オフロードヴィレッジは、Hondaのモトクロスカテゴリーにおいて、開幕戦の舞台となった熊本製作所に隣接する、HSR九州に次ぐもう一つのホームコースです。今季第2戦は、このオフロードヴィレッジで開催されました。
2つの川に挟まれた、平坦な河川敷に設けられたコースは、タイトターンとバリエーション豊かなジャンプが配され、米国で人気のスーパークロステイストに仕上げられています。決勝が開催された4月17日(日)の天候は、曇りのち晴れ。朝から非常に強い風が吹き、特に昼前には突風で巻き上げられた土ぼこりが、ライダーと観客の視界を遮りました。
今季、HondaワークスチームのTeam HRCは、最高峰クラスのIA1に成田亮、IA2には今年からHondaに移籍した能塚智寛が参戦。両者、開幕戦では両ヒート優勝を達成しており、コースサイドから多くの歓声が聞こえる中、2戦連続の両ヒート制覇を狙いました。
IA1(450/250)ヒート1
このコースは、幅が狭くてパッシングポイントが少ないことから、スタートダッシュが好成績を挙げる大きなカギとなります。そのため、Team HRCの成田は、事前テストの段階から本番を意識したスタート練習を数多く実施。決勝ヒート1では、その成果がしっかりと表れて、ホールショットを奪うことに成功しました。
レース序盤、トップを走る成田は星野優位(KTM)のマークを受け、最初の5周を終えた段階でもその差は2秒弱と、得意の先行逃げきり態勢に持ち込めずにいました。すると成田は、6周目に最速ラップタイムを記録して、さらなる攻めの姿勢に。レース前半で4秒以上のリードとしました。
後半、成田はなおもハイペースを守り、1周につきコンマ数秒と、少しずつアドバンテージを重ねていきました。すると、ラスト5周となった16周目以降、根負けした星野のペースが落ち、これで勝負あり。成田はラストラップに再び1秒以上もペースアップする余裕をみせ、トップでチェッカーを受けました。
IA1(450/250)ヒート2
レース中にその日一番の突風が吹き、巻き上げられた土ぼこりで前がほとんど見えない時間帯があったヒート1と比べれば、午後に行われたヒート2は青空の範囲も広がって穏やかな天候。ただし依然として風は強く、いつも以上に繊細なライディングが要求されました。そんな状況下で、成田は再びホールショットを決めました。
このレースで、トップを走る成田を最後まで追ったのは平田優(ヤマハ)でした。序盤の3周で、成田は2秒以上のリードを築いたものの、次周に1秒ほどペースを落としたことから、再び平田の接近を許してしまいました。しかし、成田はすぐに走りを修正。その後は再びラップタイムを上げていきました。これにも平田が対応したことから、レース前半が終わった10周目の段階で、成田のリードはまだ2秒ほど。しかし、後半になってもハイペースを守る成田に対して、平田は次第に遅れ、ラスト5周となったころには、成田のアドバンテージは4秒以上になっていました。そして成田が、再びトップでチェッカーを受け、開幕4連勝を達成しました。
IA2(250/125)ヒート1
Team HRCから参戦して、全日本選手権の開幕戦で両ヒート優勝を達成したことで、緊張から解放された状態で今大会に臨んだ能塚智寛。ヒート1では、Hondaのワークスマシンのパワーを生かして、最高のスタートダッシュ。見事にホールショットを奪うと、序盤からじわじわと後続を引き離していきました。一方で、2番手争いは非常にし烈な状況に。序盤は、田中雅己(TEAMナカキホンダ)がこれを牽引しました。
レースが中盤に入るころ、そんな田中に代わって2番手に浮上したのは小川孝平(Team ITOMO)。さらに古賀太基(N.R.T.)も田中を抜き、表彰台圏内に入りました。しかし終盤、2番手集団のHonda勢は岡野聖(ヤマハ)の先行を許すことに。レースは、能塚が最後は大きくペースを落としながらも、余裕のトップチェッカー。小川が3位、田中が4位、古賀が5位に入りました。
IA2(250/125)ヒート2
ヒート2では、好スタートの古賀と田中に、横澤拓夢(N.R.T.)と道脇右京(TEAM KOHSAKA)、さらに大塚豪太(T.E.SPORT)と近藤祐介(Baroque Works)も続き、オープニングラップのトップ6を、Honda勢が占めました。一方で、能塚はスタートでの出遅れに加えて転倒を喫し、1周目24番手と絶望的な位置からのレースとなりました。レース前半、古賀と田中は後続を離しながら、僅差のトップ争いを演じました。
一方で大きく遅れた能塚は、驚異的な追い上げをみせ、5周目までに、ポジションを6番手まで上げていました。レースが後半に入った11周目、田中はついに古賀の攻略に成功。しかしこのとき、両者の背後にはすでに能塚が迫っていました。そして能塚は、あっという間に両者をパスすると、最後は独走して勝利。田中が2位、古賀が3位、横澤が4位、大塚が5位で、Honda勢がトップ5を占めました。
成田亮(IA1 優勝/優勝)
「コースは好きなのですが、昨年はスタートが決まらず、苦手意識がありました。そのため、事前テストで徹底的にスタート練習をして、大会に臨みました。今大会の直前に、熊本県を中心とした大きな地震が発生し、多くの方々が被災されました。僕たちレーシングライダーができることは限られていますが、アグレッシブなレースをすることで、人々に勇気を届けられると信じています。今回は、Hondaの二輪車を生産する熊本製作所の関係者はもちろん、被災地域に住むすべての方々に、少しでも想いが届くようにと願いながら走りました。まだ、行方不明の方もいらっしゃると聞いていますが、一つでも多くの命が救われ、そして被災された方々が一日でも早く、元の生活に戻れることを祈っています」
能塚智寛(IA2 優勝/優勝)
「ヒート1は、スタート直後からずっとトップで、久々に気持ちがいいレースができました。ところがヒート2は、自分のミスによりスタートで出遅れ、さらに2コーナー付近で他車と絡んで転倒。ほぼ最後尾からのレースでした。でも、このヒートはとてもよく乗れていて、周囲が見えていました。予選までは、コースに対して苦手意識が残っていたのですが、ヒート1で勝利したことでそれが払拭されていたことも、自信と余裕がある攻めの走りにつながり、さらに前を走るライバルという目標があることから、いつも以上に気持ちが入れやすかったと思います。パッシングポイントがないコースで、最初はどこまで追い上げられるか分かりませんでしたが、途中でトップに届くと確信しました」
芹沢直樹 | Team HRC監督
「かなりの強風が吹き荒れる非常に特殊なコンディションに、成田と能塚はよく対応してくれたと思います。その走りを支えるメカニックなどのチームメンバーも、ミスなく各自の役割をこなしてくれたので、感謝しています。成田と能塚には、強風がジャンプに与える影響について考えながら走るように、指示しました。ただし、両者ともスキルの高いライダーなので、飛ぶ飛ばないといった判断は各自に委ねました。またチーム全体に対しては、パドックを中心とした安全管理の徹底を促し、突風で物が飛ばないよう配慮しました。成田は、予選で珍しくスタートに失敗しましたが、その修正方法も事前テストの段階で分かっていたことから、決勝ではしっかりホールショットを奪えました。能塚は、この大会で計3回の転倒を喫していて、これをなくすことが今後の課題となりそうです。ただし、ヒート2の追い上げはすばらしかったです」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 982 | 成田亮 | 20 | 31'48.111 | |
2 | 166 | 星野優位 | KTM | 20 | +00'08.840 |
3 | 6 | 三原拓也 | ヤマハ | 20 | +00'12.161 |
4 | 2 | 熱田孝高 | スズキ | 20 | +00'13.354 |
5 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 20 | +00'13.599 |
6 | 13 | 深谷広一 | スズキ | 20 | +00'21.339 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 982 | 成田亮 | 20 | 31'45.525 | |
2 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 20 | +00'05.864 |
3 | 6 | 三原拓也 | ヤマハ | 20 | +00'16.597 |
4 | 2 | 熱田孝高 | スズキ | 20 | +00'29.854 |
5 | 166 | 星野優位 | KTM | 20 | +00'31.159 |
6 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 20 | +00'31.737 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 28 | 能塚智寛 | 20 | 31'48.614 | |
2 | 31 | 岡野聖 | ヤマハ | 20 | +00'04.668 |
3 | 912 | 小川孝平 | 20 | +00'05.925 | |
4 | 113 | 田中雅己 | 20 | +00'11.845 | |
5 | 122 | 古賀太基 | 20 | +00'25.161 | |
6 | 29 | 竹中純矢 | スズキ | 20 | +00'26.732 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 28 | 能塚智寛 | 20 | 32'37.328 | |
2 | 113 | 田中雅己 | 20 | +00'11.678 | |
3 | 122 | 古賀太基 | 20 | +00'20.042 | |
4 | 36 | 横澤拓夢 | 20 | +00'22.583 | |
5 | 34 | 大塚豪太 | 20 | +00'23.204 | |
6 | 32 | 渡辺祐介 | ヤマハ | 20 | +00'35.438 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 982 | 成田亮 | 100 | |
▲ | 2 | 6 | 三原拓也 | ヤマハ | 74 |
▼ | 3 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 69 |
▼ | 4 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 68 |
▲ | 5 | 2 | 熱田孝高 | スズキ | 66 |
▼ | 6 | 1 | 小島庸平 | スズキ | 64 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 28 | 能塚智寛 | 100 | |
- | 2 | 113 | 田中雅己 | 82 | |
- | 3 | 31 | 岡野聖 | ヤマハ | 77 |
▲ | 4 | 122 | 古賀太基 | 66 | |
- | 5 | 912 | 小川孝平 | 62 | |
▼ | 6 | 29 | 竹中純矢 | スズキ | 51 |