JMX 第10戦 スポーツランドSUGO 決勝
2015/10/25

今シーズン、AMAスーパークロスで活躍したカナードがIA1総合優勝

全日本モトクロス選手権は、今季最後となる第10戦が、第53回MFJ-GPモトクロス大会として開催されました。コースは、今季第4戦と第7戦でも舞台となった、宮城県のスポーツランドSUGO。昨年から、大会ごとにコース変更が加えられてきましたが、前大会がマディでフルコースを使用できなかったことから、今大会はレイアウトが踏襲されました。

土曜日の夕方に降り出した雨は朝には止み、決勝日の朝は晴天に恵まれたものの、その後に雲が多くなると、時折り雨が降り、風が強く吹き続けるなど、荒れた天候となりました。しかし路面は、基本的にはドライコンディションが保たれました。

今大会は、海外ライセンスで参加できる国際格式として開催され、Hondaからは、IA1にトレイ・カナード(Team Honda HRC)、IA2にティム・ガイザー(Honda Gariboldi)が出場しました。カナードは、2015年のAMAスーパークロスで、2度の優勝を含む7度の表彰台登壇を果たしています。ガイザーは、モトクロス世界選手権のMX2クラスで、今季のシリーズタイトルを獲得しました。

●IA1(450/250)ヒート1
スタート直後の1コーナーで、4台ほどが絡むクラッシュが発生。カナードはこれに巻き込まれることなく2番手でクリアすると、1周目にクーパー・ウェブ(ヤマハ)を抜いてトップに浮上しました。Team HRCは、逆転王者の可能性を残した成田亮が4番手、小方誠が7番手で1周目をクリアしました。

2周目、成田はロマン・フェーヴル(ヤマハ)に抜かれましたが、小島庸平(スズキ)をパスしたことからポジションは変わらず。次周以降、単独走行となりました。カナードとウェブは接近戦を続けながら、2周目には早くも、後方を10秒以上引き離しました。また4周目には、小方が1台を抜いて6番手に浮上しました。

6周目、トップを守っていたカナードが転倒し、2番手に後退。ウェブを約7秒差で追うことになりました。この段階で、成田は完全に単独走行となる4番手。小方は、小島に少しずつ迫っていきました。レース後半、トップ2台の差はこう着状態に。小方は12周目に小島をパスしました。そしてレースは18周で終了となり、カナードがウェブに次ぐ2位、成田が4位、小方が5位となりました。

●IA1(450/250)ヒート2
カナードがホールショットを奪い、スタート直後からレースをけん引。フェーヴル、ウェブ、小方がこれに続きました。成田は、1コーナーの進入で転倒して最後尾に。しかし、その周だけで9台をパスし、12番手まで一気にポジションを回復しました。2周目、カナードとフェーヴルは、同じ海外組のウェブをも引き離して、マッチバトルを開始しました。

小方は、前後ともに間隔がある単独走行になり、成田は怒涛の追い上げを続けて2周目に10番手、3番手には6番手にポジションをアップ。4周目に熱田孝高(スズキ)をパスして5番手に浮上すると、8秒ほど前を走る小方を追いました。レースが中盤に入っても、カナードとフェーヴルの激しい接近戦は続きました。

レース後半、成田は小方の背後に迫り、12周目に逆転。カナードは、トップの座を守り続けました。ラスト2周となった17周目、カナードはフェーヴルに逆転を許すも、すぐに再逆転。最後はフェーヴルを振りきって勝利を収めました。成田は4位、小方は5位でゴール。この結果、大会総合成績ではカナードが優勝となり、成田が日本勢トップ、小方が同2位に輝きました。

●IA2(250/125)ヒート1
ティム・ガイザー(Honda Gariboldi)がホールショット。最大のライバルであるジェレミー・マーティン(ヤマハ)が、2コーナーで転倒して後れたことから、楽な展開になるかと思われました。しかし2周目に入ったところで、今度はガイザーが単独で転倒。これで5番手にポジションを下げました。前戦で年間タイトルを決めているTeam HRCの富田俊樹は、1周目4番手からのレースとなりました。

ガイザーは、3周目に4番手に浮上すると、次周には富田と竹中純矢(スズキ)を抜いて2番手に。トップの勝谷武史(カワサキ)を追いました。7周目、富田は竹中をパスして3番手に浮上。次周、ガイザーは勝谷を抜いてトップに返り咲くと、その後は独走しました。13周目、富田はマーティンに抜かれて4番手に後退。レースは17周でフィニッシュとなり、ガイザーが優勝、富田が4位に入賞しました。

●IA2(250/125)ヒート2
ホールショットのマーティンを、ガイザーが猛追。1周目でパッシングに成功しました。ところが2周目、IA1クラスのヒート1でカナードが転倒したのと同じコーナーで、今度はガイザーが激しく転倒。再スタートに時間がかかり、トップのマーティンから約40秒遅れの28番手で、レースに復帰することになりました。富田は、ガイザーの転倒で3番手に浮上し、勝谷を追いました。

ガイザーは、全日本組の間を、縫うように次々とパスし、レースが後半に入った9周目には、入賞圏内となる6番手までポジションアップ。しかしこの段階で、5番手とは約10秒、4番手とは約29秒も離れていました。富田は、9周目の段階で勝谷から約10秒遅れて単独走行。ガイザーは12周目に5番手へと浮上するも、それ以上には届かず。マーティンが優勝し、富田が3位、ガイザーが5位となりました。

コメント

成田亮(IA1・4位/4位)
「スポット参戦の外国人ライダー勢と、少しでもバトルができるようにと思っていましたが、土曜日朝の練習走行を走った段階で、タイム差がありすぎて無理だと悟りました。悔しいですが、そういう中でも全日本勢のトップになれたのはよかったと思います。ヒート2は、1コーナーでバランスを崩して転倒しました。ここはいつも西日がきついので、ゴーグルのレンズをスモークタイプにしたところ、途中で暗くなって雨が強く降り出し、しかも捨てレンズもなくなり、それが最も焦りました。開発を兼ねる日本のファクトリーライダーならではの難しさを感じたシーズンでしたが、一方で後半戦は特に、自分のスピードがまだ全日本トップレベルにあることを確認でき、来年につながる内容だったと思います」

小方誠(IA1・5位/5位)
「ヒート1は、スタート直後に自分の直前でクラッシュが起こり、これを避けたことで少し出遅れました。序盤の追い上げに手間取り、その間に成田選手には逃げられてしまい、悔しさが残りました。ヒート2は、好スタートを切ったのですが、前を走る海外勢は圧倒的に速く、まるでついていけませんでした。途中で雨が強く降ってきて、路面に影響を与えるほどになり、ミスしたところで成田選手の先行を許しました。後ろから成田選手の走りを見られたことで、自分のライン取りの悪かった部分などに気づき、抜かれたあとは成田選手をずっとマークできたのですが、逆転の機会はありませんでした。今季は、ランキングトップにいながら第8戦で負傷し、ノーポイントレースとなってしまったことがすべての敗因でした」

富田俊樹(IA2・4位/3位)
「両ヒートで、昨年度全日本王者の勝谷選手に敗れ、悔しいですが、同時に自分はまだまだであると確認できた大会でした。ヒート1は、だれからも硬いと言われるほど、ガチガチの走りになってしまいました。勝谷選手を意識しすぎたあまり、力が入りすぎてしまったようで、腕上がりでうまく乗れませんでした。ヒート2は、それに比べればマシでしたが、攻めきれていなかったですし、勝谷選手が速かったと思います。一番の目標であるチャンピオンというのはクリアできましたが、同時にこの最終戦で、来年に向けての課題が見つかりました。外国人ライダーに関しては、ライディングに対する考え方の部分で大きく違っていると思います。本当はしばらくゆっくり休むはずでしたが、少しでも近づけるよう、すぐにでも来年に向けて始動します」

芹沢直樹(Team HRC監督)
「IA1では、カナードがさすがの走りを披露してくれました。ヤマハからも世界トップクラスのライダーが参戦したことで、非常に高いモチベーションでレースに臨み、それを結果につなげました。日本人勢は、正直なところ勝負するところまでいけませんでしたが、一緒のコースをプラクティス、予選、決勝と走ることで、吸収できたものは大きかったと思います。その中で、Team HRC勢が日本人の1-2となりました。成田は、ヒート2では最後尾から追い上げ、実力を証明できたと思います。小方は、持てる力を発揮できていない部分が多くあったのですが、両ヒートをまとめられた点は評価したいと思います。IA2に参戦したガイザーは土曜日まで、日本のコースに戸惑っていましたが、決勝ではしっかり修正してきました。ヒート2の転倒は、19歳という若さが出たのかなと思います。富田は、昨年の王者である勝谷選手に敗れました。スピードよりも、この大会にかける気持ちの差で負けたと思います。来年に向けての課題が見つかりました。チームとしては、予期せぬことが何度も起き、勝つことの難しさを改めて知ったシーズンでした。IA1のタイトルは、来年奪回します」

トレイ・カナード(IA1・2位/優勝)
「とてもすばらしい週末でした。土曜日のプラクティスも問題なかったですし、予選もよかったと思います。決勝ヒート1のクラッシュがちょっと残念でしたが、ヒート2では最終ラップまでバトルを楽しませてもらい、しかも勝つことができました。このコースは、アメリカに比べてちょっとタイトな部分もありますね。ラフでバンピーな路面やたくさんのワダチに驚きましたし、結構苦しかったです。アメリカとはまた違った感じでしたが、いい経験になったと思います。ケガなく終わることも今回の目標だったのですが、ヒート2の終盤は、100%の力を出しきりました。来日は今回が初めてで、レースだけでなく、日本の雰囲気やファンとの交流も楽しめました。来年また、ぜひここに戻って来たいですね」

ティム・ガイザー(IA2・優勝/5位)
「ヒート1は、完ぺきなレースだったと思います。優勝できて本当にうれしいです。ヒート2は、マシンのフィーリングも本当によくて、スタート直後にトップのマーティン選手をパスしたのですが。リードを広げようとプッシュした途端、ワダチに引っかかってしまい、振られて前転してしまいました。再始動に時間を要し、追い上げを試みたのですが、そこでまたクラッシュ。残念ですが、ここでレースできたことは本当にうれしいです。AMAチャンピオンのマーティン選手とバトルできたことも、すばらしい経験の一つだと思います。また日本のレースに出たいという気持ちでいっぱいです。ファンの方々から、たくさんのプレゼントをもらいました。こうしたことはヨーロッパで経験したことがなかったので、とてもうれしかったです」

リザルト

IA1(ヒート1)
順位 No. ライダー マシン 周回数 タイム/差
1117C.ウェブヤマハ1833'23.971
2241トレイ・カナードHonda18+00'05.446
3461 R.フェヴレヤマハ18+00'37.050
41成田亮Honda18+01'09.369
52小方誠Honda18+01'35.142
644小島庸平スズキ18+01'45.591
74熱田孝高スズキ18+01'49.130
88深谷広一Honda18+01'51.809
9331新井宏彰カワサキ18+01'53.811
10500安原志ヤマハ18+01'57.045
 
177星野優位Honda17+1Lap
1861島崎優Honda16+2Laps
IA1(ヒート2)
順位 No. ライダー マシン 周回数 タイム/差
1241トレイ・カナードHonda1833'35.272
2461R.フェヴレヤマハ18+00'01.755
3117C.ウェブヤマハ18+00'54.593
41成田亮Honda18+01'30.651
52小方誠Honda18+01'32.875
64熱田孝高スズキ17+1Lap
7331新井宏彰カワサキ17+1Lap
88深谷広一Honda17+1Lap
9822三原拓也カワサキ17+1Lap
10500安原志ヤマハ17+1Lap
 
1561島崎優Honda16+2Laps
RT7星野優位Honda6DNF
IA2(ヒート1)
順位 No. ライダー マシン 周回数 タイム/差
1243 ティム・ガイザーHonda1731'51.748
2111J.マーティンヤマハ17+00'23.305
3888勝谷武史カワサキ17+00'25.950
4317富田俊樹Honda17+00'48.086
531竹中純矢スズキ17+00'59.144
632能塚智寛カワサキ17+01'10.696
701古賀太基Honda17+01'29.901
834岡野聖ヤマハ17+01'30.618
946横澤拓夢Honda17+01'36.653
10777 L.スチュワートKTM17+01'50.284
 
11113田中雅己Honda17+02'07.926
2038小川孝平Honda16+1Lap
2304高輪喜樹Honda16+1Lap
2750道脇右京Honda16+1Lap
2842馬場大貴Honda16+1Lap
IA2(ヒート2)
順位 No. ライダー マシン 周回数 タイム/差
1111J.マーティンヤマハ1732'04.797
2888勝谷武史カワサキ17+00'22.466
3317富田俊樹Honda17+00'36.942
432能塚智寛カワサキ17+00'48.139
5243 ティム・ガイザーHonda17+00'57.961
631竹中純矢スズキ17+01'26.077
7113田中雅己Honda17+01'31.416
846横澤拓夢Honda17+01'43.509
937井上眞一カワサキ17+01'49.426
1038小川孝平Honda17+01'53.016
 
1101古賀太基Honda17+01'54.368
1550道脇右京Honda16+1Lap
2442馬場大貴Honda16+1Lap
2904高輪喜樹Honda16+1Lap

スケジュール

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