シーズン前半最後の1戦となる全日本モトクロス選手権の第5戦が、兵庫県の神戸空港特設コースで開催されました。特設コースで全日本選手権が開催されるのは、2001年の開幕戦である島原大会以来14年ぶりです。また、全日本に新コースが導入されるのは、12年の第5戦・北海道大会以来です。
空港がある人工島の一角に設けられたのは、ジャンプとヘアピンカーブを多く使った、スーパークロス風レイアウトのコース。IAライダーでドライコンディションであれば、1周のラップタイムが1分5秒ほどと、短めの設定でした。
天候は、各クラスの予選が行われた7月4日(土)は雨。特に午後からは強く降り、コースはマディとなっていきました。しかし日曜日は、前日の正午時点では荒天の予報でしたが、本格的な降雨はなく、空は雲に覆われていたものの、薄日が差す瞬間もあるほどに回復しました。
●IA1(450/250)ヒート1
ポイントリーダーの小方誠(Team HRC)が、田中教世(ヤマハ)に次ぐ2番手で1コーナーをクリア。しかし小方は、新井宏彰(カワサキ)に抜かれて3番手に後退しました。前戦の両ヒートを制覇している成田亮(Team HRC)は、スタートで出後れて1周目8番手と、抜きどころが少ないコースで厳しい位置からのレースとなりました。
レース序盤、成田は熱田孝高(スズキ)の転倒や新井と池谷優太(スズキ)のクラッシュで4番手に浮上。田中、小方、小島庸平(スズキ)がバトルを繰り広げている間に差を詰め、トップ争いに加わりました。そして中盤、5番手の三原拓也(カワサキ)までが僅差のトップ集団を形成しました。
10周目、小方がトップに浮上し、成田は転倒により8番手に後退。小方は次周に田中を抜いた小島に粘られ、終盤まで2〜3秒のアドバンテージしか築けずにいました。それでも小方は、焦ることなく26周のレースを走破。今季3勝目を挙げました。成田は、熱田とのバトルを制して7位でゴールしました。
●IA1(450/250)ヒート2
今季はこれまで好スタートを連発していた小方が出後れ、混戦の中で3台ほどを抜いてもなお、1周目を9番手という波乱の展開。成田は、4番手からの上位進出を狙いました。
レース序盤、成田はすぐ後ろを走る新井とともに、3番手の星野裕(KTM)を猛追するも、パスするチャンスを得られずにいました。
小方は2周目に2台を抜き、3周目からは6番手の星野優位(SEKI Racing MotoRoman&KBF-RS)とバトルを展開。6周目に、両者はポジションを入れ替えました。レースが中盤に入る8周目、成田はようやく3番手に浮上。また、新井が転倒して後退したことから、小方が5番手、星野優位が6番手になりました。
10周目、小方は星野裕をパスすると、3番手の成田に接近。12周目に小方が前に出ると、成田の後方には星野優位が迫りました。レースが終盤に入った17周目、星野優位が逆転に成功。次周には、2番手だった熱田が転倒し、4番手に後退したため小方が小島に次ぐ2位、星野優位が3位、成田が6位となりました。
●IA2(250/125)ヒート1
スタート直後の1コーナーで、10台近いマシンによるマルチクラッシュが発生。田中雅己(ナカキホンダ)らが大きく出後れました。そんな中、ポイントリーダーの富田俊樹(Team HRC)は、岡野聖(ヤマハ)に次ぐ2番手で1周目をクリア。2周目に入ったところで岡野をパスすると、2周ほどが経過してから、後続との差を周回ごとに拡大していきました。
中盤、能塚智寛(カワサキ)に代わって竹中純矢(スズキ)が2番手に浮上すると、レースが後半に入ったところで能塚は4番手へ後退。これに大塚豪太(T.E.SPORT)が迫り、終盤には逆転に成功しました。そしてレースは、富田が最後まで安定した走りで優勝。大塚は、ラスト3周のところで能塚の再逆転を許して5位。激しい追い上げを続けた田中が6位に入賞しました。
●IA2(250/125)ヒート2
スタート直後の1コーナーで、再びマルチクラッシュが発生。大塚らがこれに巻き込まれました。富田は好スタートを決め、古賀太基(N.R.T.)らを1周目に抜いてトップに浮上。最初の数周こそ竹中と競りましたが、その後はまたしても独走態勢を築いていきました。一方、3番手争いはし烈。古賀を先頭に、田中や馬場大貴(TEAM 887)がこれに加わりました。
レースが中盤に入ると、古賀は次第に後退し、田中が上位2台とは大きく差が開いた3番手集団の先頭に。能塚や馬場が、田中を猛烈に追いました。すると田中は、能塚にパスされて4番手に後退。17周目には、馬場も田中を抜きました。そしてレースは26周でチェッカーとなり、富田が2大会連続の完全制覇となる優勝。馬場が4位、田中が5位に入賞しました。
小方誠(IA1・優勝/2位)
「ヒート1は、スタート直後に前を走っていた田中選手がミスをして、その影響で自分も失速。その間に新井選手の先行を許しましたが、その後は落ち着いてポジションを上げられました。途中からは完全に自分の走りができていたので、数秒後ろに小島選手がいることも分かっていましたが、プレッシャーは全くありませんでした。ヒート2は、スタート直後の1コーナーへの進入時に行き場所を失い、驚くほど出後れました。成田選手を抜いて3番手に浮上した段階で、トップの小島選手とは10秒以上の差がある状態。それでも、あきらめずに追い上げて差は詰まったのですが、周回後れの発生するタイミングでまた離されたこともあり、逆転できませんでした。熱田選手の転倒というラッキーもあっての2位ですが、優勝できなかったので、悔しいという気持ちのほうが上です」
成田亮(IA1・7位/6位)
「今回から、プロトタイプのファクトリーマシンに乗っています。違和感なく乗れる非常に高性能なマシンで、自分も乗れている感じがあったので、これはいけるだろうと思っていました。しかしヒート1では、スタートで出後れてしまい、これが後々まで響いてしまいました。トップグループに追いついた段階で、これなら勝てると感じていたのですが、集団でのバトル中に転倒してしまいました。短いコースなので、かなり周回しても時間がたっぷり残っているにもかかわらず、パッシングポイントが少ないということもあって、焦りすぎてしまった結果です。ヒート2は、転倒したくないという意識からうまくマシンを操れず、自分のミスでポジションを下げてしまいました。しかしポイントランキングでは、まだ十分にばん回できる位置にいます。シーズン後半はホームコースが多いので、巻き返します」
富田俊樹(IA2・優勝/優勝)
「どちらも独走での優勝なので、結果には満足しています。ただし走りという点では、ヒート2の序盤に硬さがありました。後続を引き離すまで、少し時間がかかったと感じています。ヒート2は、コースのライン部分がすでに乾いていて、滑りやすい場所があったので、どこまでは大丈夫かを試しながら走る必要があったことも、最初の数周にペースを上げられなかった原因かもしれません。もっとも、後続が離れるまでは、抜かれないラインを選択していたので、ミスなく走り続ければ大丈夫だと思っていました。次からシーズン後半戦ですが、まずは得意の藤沢スポーツランドです。夏のインターバルにアメリカでレースをする予定なので、次戦で再び両ヒートを制覇し、弾みをつけたいです」
芹沢直樹|Team HRC監督
「小方はヒート2で、今年になって初めてというほどの悪いスタートを切ってしまいましたが、そういう状況でもしっかり追い上げられたので、内容としてはよかったと思います。今年になって小方がすごく成長したのは、競り合いでの強さ。また、ときにはアグレッシブなバトルも演じられるようになりました。もちろんヒート1は優勝なので、言うことはありません。成田は今回から、ファクトリー仕様のプロトタイプ車に乗り替えています。シーズン中にマシンをチェンジするというのは、それによってマシン性能がどんなによくなるとしても、かなり大変なことです。そういう中で、成田ならではの対応力で、うまく走らせてくれました。リザルトには結びつきませんでしたが、すでに改善点は見えています。次戦は問題ないと確信しています。富田は、再び両ヒートで優勝することができました。しかし、もっと速くなれるライダーだと思うので、チームとしても目線をより先にして、その実力をさらに伸ばすことができるようにサポートしていきたいです」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 小方誠 | Honda | 26 | 32'25.560 |
2 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 26 | +00'04.893 |
3 | 16 | 田中教世 | ヤマハ | 26 | +00'06.224 |
4 | 822 | 三原拓也 | カワサキ | 26 | +00'07.134 |
5 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 26 | +00'07.697 |
6 | 8 | 深谷広一 | Honda | 26 | +00'27.162 |
7 | 1 | 成田亮 | Honda | 26 | +00'36.322 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 26 | 31'22.877 |
2 | 2 | 小方誠 | Honda | 26 | +00'03.363 |
3 | 7 | 星野優位 | Honda | 26 | +00'14.040 |
4 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 26 | +00'17.466 |
5 | 4 | 熱田孝高 | スズキ | 26 | +00'23.599 |
6 | 1 | 成田亮 | Honda | 26 | +00'23.664 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 317 | 富田俊樹 | Honda | 25 | 32'25.202 |
2 | 31 | 竹中純矢 | スズキ | 25 | +00'14.707 |
3 | 34 | 岡野聖 | ヤマハ | 25 | +00'25.664 |
4 | 32 | 能塚智寛 | カワサキ | 25 | +00'34.550 |
5 | 36 | 大塚豪太 | Honda | 25 | +00'36.431 |
6 | 113 | 田中雅己 | Honda | 25 | +00'49.902 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 317 | 富田俊樹 | Honda | 26 | +31'36.900 |
2 | 31 | 竹中純矢 | スズキ | 26 | +00'23.788 |
3 | 32 | 能塚智寛 | カワサキ | 26 | +00'27.068 |
4 | 42 | 馬場大貴 | Honda | 26 | +00'35.429 |
5 | 113 | 田中雅己 | Honda | 26 | +00'38.305 |
6 | 34 | 岡野聖 | ヤマハ | 26 | +00'53.386 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 小方誠 | Honda | 217 |
2 | 小島庸平 | スズキ | 197 |
3 | 熱田孝高 | スズキ | 187 |
4 | 成田亮 | Honda | 186 |
5 | 新井宏彰 | カワサキ | 178 |
6 | 田中教世 | ヤマハ | 147 |
7 | 三原拓也 | カワサキ | 140 |
8 | 星野裕 | KTM | 129 |
9 | 星野優位 | Honda | 119 |
10 | 安原志 | ヤマハ | 115 |
16 | 小林雅裕 | Honda | 42 |
18 | 深谷広一 | Honda | 26 |
19 | 島崎優 | Honda | 23 |
21 | ハリオンボルグ・エルデンビルグ | Honda | 10 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 富田俊樹 | Honda | 239 |
2 | 能塚智寛 | カワサキ | 190 |
3 | 竹中純矢 | スズキ | 188 |
4 | 岡野聖 | ヤマハ | 184 |
5 | 田中雅己 | Honda | 169 |
6 | 大塚豪太 | Honda | 100 |
7 | 馬場亮太 | Honda | 98 |
8 | 渡辺祐介 | ヤマハ | 92 |
9 | 斉藤嵩 | スズキ | 88 |
10 | 石浦諒 | スズキ | 88 |
13 | 馬場大貴 | Honda | 77 |
14 | 道脇右京 | Honda | 71 |
16 | 古賀太基 | Honda | 66 |
21 | 横澤拓夢 | Honda | 38 |
23 | 近藤祐介 | Honda | 28 |
25 | 高輪喜樹 | Honda | 16 |
26 | 佐々木孝多 | Honda | 13 |
27 | 垣内伊吹 | Honda | 5 |