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THE BIG CHALLENGE 伊沢拓也 GP2参戦レポート

Vol.5 ロシア・アラブ首長国連邦

ロシアでは予選で今季最高位の3番手を獲得
最終戦はピットスタートとなり、苦しい展開に

2014年GP2シリーズに参戦する伊沢拓也選手は、第10戦ロシア、最終戦アブダビでの戦いに挑みました。

 

10月10日〜12日にロシア・ソチで開催された第10戦。ソチのサーキットは、今年冬季オリンピックが開催されたメイン会場周辺の一般道などを使用し、1周5.848kmと距離が長く、コーナーも多い全く新しいコースです。参加するだれもが初めてのサーキットでしたが、伊沢選手は予選から好タイムをマークし、今シーズン最高位となる予選3番手を獲得しました。

11日に行われたレース1で、3番手からスタートした伊沢選手は好ダッシュを見せ、一時トップに立ちました。しかし、その後のコーナーでアウトにふくらみ、4番手に下がります。9周目にコース上にマシンがストップし、セーフティカーが入りました。3周のセーフティカーランのあと、レースは再開されましたが、その周に伊沢選手はタイヤをロックさせてしまい、コースアウト。17番手と大きく順位を落としてしまいました。16周目にタイヤ交換のためピットインし、ポジションは最後尾の24番手に後退。その後追い上げを開始しましたが、28周のレースを20位でフィニッシュしました。

12日のレース2では、20番手からのスタートとなりました。追い抜きが難しいコースということもあり、伊沢選手はポジションを変えることなくレースは終盤を迎えました。18周目にタイヤ交換のためピットインを行いましたが、ポジションは変わらず、22位でチェッカーを受けました。

レース後の伊沢拓也選手のコメント
「ソチのコースは、路面が日本のサーキットに似ていて、すばらしくグリップのいいものでした。そして、だれもが初めて走るということも、これまでコースを覚える時間が足りないことが多かった僕にとってはプラスだったと思います。マシンの手応えはこれまでで一番よく、予選ではトップを狙える感触もありました。レース1では、優勝を狙いにいきました。スタートはとてもうまくいきましたが、トップに立った次のコーナーでミスを犯し、順位を下げました。しかし、焦ることもなく周回を重ねていました。それは周りとは作戦が違うからで、上位陣の多くはソフトタイヤでスタートしましたが、我々はミディアムタイヤを選択し、タイヤ交換までの周回を引き延ばす作戦でした。しかし、序盤にセーフティカーが入ってしまい、この作戦は失敗に終わりました。レース再開後、思ったよりタイヤが冷えていて、コースアウトしてしまいました。作戦はうまくいきませんでしたが、勝つためのものですから悔いはありません。セーフティカーが入るまでは、本当に勝てるという感触がありましたし、その手応えを感じながらのレースは、とても楽しいものでした。残念な結果とはなりましたが、この手応えを得られたことはとてもよかったと思います」

 

11月21日〜23日、GP2シリーズ最終戦はアラブ首長国連邦のアブダビで行われました。レースが行われたヤス・マリーナ・サーキットは、シーズン前にテストが行われたコースでもあります。伊沢選手はタイトコーナーが続く第3セクターでタイムが伸びず、予選12番手に終わりました。

22日に行われたレース1では、フォーメーションラップのスタートでエンジンがストップし、ピットスタートとなってしまいます。今回スーパーソフトタイヤでスタートした伊沢選手は、序盤、他車のアクシデントによるセーフティカー導入の際にタイヤ交換をしました。このピットインのタイミングがうまくいき、レース終盤に多くのクルマがピットに入る中で、伊沢選手はポジションを上げることに成功します。結局、ピットスタートから13番手まで順位を上げて、31周のレースを終えました。

23日のレース2では、伊沢選手は慎重にスタートし、スタート直後に起きた前方の混乱もうまくかわして、オープニングラップに10番手にポジションアップしました。しかし、追い抜きが難しいコースで、ピットインのないレースということもあり、ポジションの変化はなく10番手のまま22周のレースを終えることとなりました。

レース後の伊沢拓也選手のコメント
「予選では2セット目のタイヤでのアタック時に、ちょっとしたミスでタイヤにフラットスポットを作ってしまいました。結局、そのタイヤで出したタイムがベストタイムだったので、悔しい結果です。フリープラクティスのときから、ブレーキの調子があまりよくなく、それを予選でも引きずってしまいました。レース1では、クラッチのセンサーにトラブルがあったようで、クラッチミートする位置が変わり、自分の感覚とは違うところでつながってしまって、エンジンが止まりました。ピットスタートとはなりましたが、スーパーソフトタイヤでスタートしていたので、序盤のセーフティカーには少し助けられたと思います。レース2のスタートは、レース1のことがあったので、マージンをもって、慎重に行いました。したがって、スタートでのジャンプアップはできませんでしたが、その後の混乱をうまくかわすことができ、ポジションを上げました。レース中のペースはよかったと思いますが、なかなか前をパスするのが難しいコースで、ポジションを上げることはできませんでした。中盤にちょっとしたミスでタイヤを痛め、その後リアタイヤが苦しくなってペースアップすることはできませんでした。10番手のポジションは守りきりましたが、満足のいくレースとは言えません」

 

2014年のGP2シリーズは全11戦22レースを行い、終了しました。伊沢選手は26ポイントを獲得し、ランキング18位となりました。

シーズンを振り返っての伊沢拓也選手のコメント
「新たなカテゴリーに挑戦し、初めてのサーキットなどもあって思い通りにいかないことが多く、反省点の多いシーズンでした。シーズン後半にいい兆しが見え始めましたが、そうなるのが遅すぎたと思います。ハンガリーでの3位やロシアでの予選3番手など、ところどころいいところはありましたが、やはり平均点をもっと上げなければダメだと思います。全体としては満足いくシーズンとは言えませんし、結果が出ていないので、今はこれが自分の実力だと受け止めなければなりません。本当に悔しい一年でしたが、今年の課題や反省点を必ず次に生かしていくつもりです。まだ来年のことは決まっていませんが、どのレースに出ることになっても、この1年が決して無駄にならないようがんばって、もう一度輝きたいと思います」

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