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THE BIG CHALLENGE 伊沢拓也 GP2参戦レポート

Vol.3 オーストリア・イギリス・ドイツ・ハンガリー

過密日程を戦い抜き、
ハンガリーで3位入賞を果たす

6月20日〜22日にオーストリアで行われた第4戦から、7月25日〜27日の第7戦ハンガリーまでの模様をレポートします。6週間に4戦という、シーズン中最も過密なスケジュールでの戦いを、伊沢拓也選手はハンガリーでの3位獲得という好成績で締めくくることとなりました。

 

6月20日〜22日、第4戦オーストリア・レッドブルリンクでは、予選17番手からスタート。好スタートで6台をパスしたあと、早めのタイヤ交換でレース後半に勝負をかける作戦が功を奏し、9位でフィニッシュ。開幕戦以来の入賞を果たしました。9番手からスタートとなったレース2でもスタートダッシュが決まり、6番手までアップしましたが、その後他車と接触してマシンにダメージを抱えます。苦しい展開ながらマシンをコントロールして8位でチェッカーを受け、連続入賞を果たしました。

レース後の伊沢拓也選手のコメント
「レース1ではスタートがうまく決まりました。後半、替えたタイヤの温まりが悪く、ペースが上げられなかったので苦しい展開でしたが、なんとかポジションを守りきることができました。レース2でもスタートはうまくいったのですが、その後フロントにダメージを負ってフラフラの状態でした。ガソリンが軽くなってペースは上がりましたが、終盤になればなるほどマシンは曲がらなくなりました。2レース連続でポイントは獲得できましたが、この位置ではまだまだという感じです。やはり予選で速くないとダメですね。それを早くなんとかしなければと思います」

 

7月4日〜6日、イギリス・シルバーストーンでの第5戦は、予選24番手からスタートし、安定したペースで16位まで順位を上げてゴール。レース2では12番手からのスタートで上位を狙いましたが、終盤他車と接触してタイヤにダメージを受け、ピットインせざるを得なくなり、リタイアとなりました。この接触によって、レース後、伊沢選手に対して、次戦5グリッド降格のペナルティーが科されることになりました。

レース後の伊沢拓也選手のコメント
「シルバーストーンは鈴鹿に似たサーキットというイメージでした。フリープラクティスの45分間では、このサーキットを学ぶのに時間が足りず、これまでで一番難しいサーキットだと感じました。レース1ではスタートがうまくいって順位を上げることができましたが、最初に履いていたミディアムタイヤがあっという間にタレてしまいました。ハードタイヤに替えてからはいいペースで走ることができて、ポジションを上げましたが、スタートの順位を考えるとこれが限界だと思います。レース2のアクシデントについては、後ろのマシンには注意していましたが、あそこであの入り方をされては当たるしかないと思います。裁定には納得できませんが、これがGP2のレースなんでしょうし、今後はより気をつけなければならないと思います。今回、レースを通して、マシンのセットアップが進み、いい状態になってきました。結果はよくありませんでしたが、その点では手応えを感じられました」

 

7月18日〜20日、ドイツ・ホッケンハイムでの第6戦は予選16番手のタイムでしたが、ペナルティーでのグリッド降格により、23番手からのスタートとなりました。タイヤ交換を後半にする作戦によって一時8番手を走行し、交換後もポジションを上げて13位でフィニッシュ。レース2は突然の雨によって、タイヤ戦略が難しいレースとなりました。伊沢選手はウエットタイヤでスタート。8周目にドライタイヤに換えましたが、この時点ではまだタイミングが早く、ペースが上げられない状態が続きました。終盤ペースを取り戻し、数台をパスしましたが、19位でレースを終えました。

レース後の伊沢拓也選手のコメント
「ホッケンハイムは以前走ったことのあるサーキットなので、その分、気合も期待も持って臨みました。セッティングも自分なりのやり方で進め、マシンの出来栄えについては手応えを感じられるものでした。予選ではシングル(9番手以内)を狙っていたのですが、きちんと一ラップをまとめきれなかった自分のミスです。走行経験のあるサーキットで、マシンもよくなっていただけにとても悔しい結果でした。レース1ではポジションを10上げることができましたが、もっと上を狙えるレースのつもりでしたから、満足いくものではありません。レース2は、雨の難しいコンディションで、アクシデントを回避するのに必死でした。チームの指示でドライに替えましたが、これは少し早いタイミングだったと思います。僕もチームも今年のタイヤで雨の走行をしたことがなく、セットアップが合いませんでした。残念ながらドイツでは結果を残せませんでしたが、ドライでのセットアップの方向性は確認できましたので、次につながるものと思っています」

 

7月25日〜27日に行われたハンガリー・ハンガロリンクでの第7戦。予選は26番手と出遅れました。レース1では、序盤に発生したアクシデントによりセーフティカーが導入され、そのタイミングでタイヤ交換をした伊沢選手は大きくジャンプアップ。その後、ペナルティーやアクシデントなどが多発する波乱のレースとなります。順調にポジションを上げた伊沢選手は、後半にオーバーテイクを繰り返し、4番手でチェッカーフラッグを受けました。その後、2番手の選手にペナルティーが科され、伊沢選手は3位に繰り上がりました。レース2では6番手という好ポジションからのスタートでしたが、1周目に他車と接触しフロントウイングに大きなダメージを受けたため、ピットに戻らざるを得なくなり、順位を大きく下げてしまいました。そして、最終周、他車と接触してコースアウトし、レースを終えています。

レース後の伊沢拓也選手のコメント
「ハンガロリンクは路面のバンプ(凹凸)が激しく、マシンが安定しないし、コースにもなかなか慣れなくて予選はうまくいきませんでした。レース1では、早めのピットインを想定していて、その作戦がうまく決まりました。レース中のマシンの状態はよかったですし、ペースもよかったと思います。レース終盤はタイヤのマネージメントもうまくいき、数台をパスすることもできました。予選26番手という経験は初めてでしたが、そこから3位まで上がったという結果には満足しています。レース2では、スタート直後に当てられてフロントウイングを壊してしまい、これでレースは終わってしまいました。修復後のマシンの状態とペースは、これまでで一番よかったので、とても残念です」

 

GP2シリーズは全11戦中7戦を終え、およそ1カ月のサマーブレイクに入ります。次戦は8月22日〜24日、ベルギー・スパフランコルシャンでの第8戦です。シーズン終盤を前に、これまでのレースを振り返り、今後の抱負を語ってもらいました。

伊沢選手のコメント
「シーズンの序盤は、初めてのコース、初めてのマシン、初めてのタイヤと、慣れないことが多く、戸惑った部分もありましたが、マシンについてはセットアップの方向性やその出来もかなりよくなって、今は確実に進歩しているという実感を持っています。それだけに結果がついてこないことが悔しいですが、ハンガリーで3位という結果を出せたことは、進歩の成果として、とても自信になりました。
初めてのコースは、短いフリープラクティスだけでは習熟に時間が足りず、すぐに予選ということで、なかなか予選での結果を残せないという状況が続いていますが、レースでは上位に負けないペースで走れていて、周りに対して歯が立たないとは全く思っていません。
GP2は僅差の争いであるとともに、とても荒っぽいレースになるということも分かりました。自分が気をつけていても、どうしようもないこともありますが、それでも周りを十分に注意しなければいけないですね。
残り4戦、マシンの仕上がりがよくなってきた手応えは十分にありますので、それを結果に結びつけられるよう、これまで以上にがんばりたいと思います」

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