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“2H2+O2→2H2O”中学校で習った水の電気分解を表す化学反応式。あれから十余年が経った今、この化学反応が自動車業界に革新をもたらしていたことを、私はまったく知りませんでした。
4月18日、Hondaウェルカムプラザ青山内は、小学生たちが湧き起こす歓喜と興奮の渦に包まれていました。その中心にあった一台の自動車が『FCXクラリティ』。2005年には燃料電池電気自動車として、世界で初めて個人リース販売が始まった自動車の試乗、誕生までの歴史に触れられる『燃料電池電気自動車教室』が開催されたのです。
まずは、現在危ぶまれている地球温暖化の現状が解説されていきました。この百年で地球の温度は0.6度上昇したこと、このままでは氷が溶けて動植物が住めなくなってしまうこと、それを回避するにはCO2増加を食い止める必要があること……。子供たちへの質問を交えながら進む授業はみるみる活気を増して行きます。「CO2増加の原因のひとつである自動車の排気ガス。じゃあ自動車をなくせば、人も地球も快適に暮らせる未来が来るのかな?」しかしその質問には子供たちも沈黙し、顔をしかめてしまいました。「便利で快適、乗って楽しい自動車の良さをもっと進化させた、未来のクルマを作ることはできないのか。そこで私たちは“水”が出来るときに発生する、ある力に注目しました」舞台上に用意された実験キットの周りに子供たちを集め、解説は続きます。「電気を作る機械は身の回りにもたくさんあるけど、実は“水”にもその力があることを知っていますか? 液体の中の水素と酸素がくっついて水になるとき、さて、何が起こるのかよく見ていてくださいね」すると、電線で結ばれた先のモーターが回転したのです。「エネルギーだ!!」一人の男子が思わず声を上げました。「正解。モーターが動いたということは電気エネルギーが生まれたということ。エンジンもガソリンも使わずに、水が出来るときに生まれる電気の力だけでクルマを動かしてみよう! そんなワクワクと水の仕組みをぎゅっと詰め込んだのが、燃料電池電気自動車なんです。」「……でもホントに走るのかな?」にわかにはその事実を受け入れ難い私たちは、いざ『FCXクラリティ』に乗り込み街へと繰り出したのでした。
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なるほどエンジンがないというのはこういうことか! 『FCXクラリティ』の車内BGMはまるで鳥のさえずりや街の音、とすら言えるほどに静かで振動もなく、乗車感覚も従来のものとは全く異なるもの。キィーン、ビュィーンッ!! “きんと雲”に乗った孫悟空ってこんな気分なのでしょうか。「カッケー」「目閉じてたら走ってるか止まってるか分からないほど静かだった」「後ろからホントに水が出てた」「免許取れる歳になったらすぐに買いたい!!」子供たちの口からも、無邪気な感想がこぼれ続けていました。でも――。燃料電池電気自動車が世間に普及するまでには、あと十年ほどの時間が必要なのだそうです。奇しくもその未来は、子供たちが成人を迎える頃に訪れます。「みんなが自動車を運転できる頃には、『FCXクラリティ』が街中を走っている時代になっているようこれからも頑張ります。そして今度は大人になったみんなが、このクルマを超える未来のクルマを作って私たちを驚かせてください」今と未来を繋ぎ、また、さらなる未来へ繋げるメッセージが修了証と共に子供たちへ手渡され教室は締めくくられました。……の、はずが。
教室終了後も、子供たちの好奇心は止まることを知りません。展示自動車の運転席に座ってハンドルを握ったり、自動車デザインを前後左右から眺めうっとりしたり。その様子を見て開発責任者の藤本さんが呟きました。「僕も小学生の頃から自動車が大好きで、“いつか自分の手で未来のクルマを作るんだ”と胸踊らせていました。実際には、前例のないことへの挑戦は困難が付きもので、開発途中は知識や技術不足を突きつけられ正直何度も諦めかけて。でもこうして子供たちと触れ合っていると、絶対実現できる! って力をもらえたから不思議でしたね。“こんなクルマに乗ってみたい!”という彼らの想像力と真っ直ぐな情熱は、夢のクルマがカタチになるために必要だった、もう一つの大きなエネルギーだったと思います」その瞳の奥に、小学生時代から変わらぬ彼の純粋さ、そして『FCXクラリティ』誕生を支えた多くの人たちの情熱を、私は確かに見た気がしました。



