HondaモータースポーツF1ルーベンス・バリチェロ『自らを語る』
 

 2006年8月6日、ハンガリー・グランプリはホンダ・レーシング・F1チームにとって記念すべきレースになった。2000年に第3期F1グランプリ参戦を開始してから実に6年と半年、ついに待望の勝利を獲得したのだ。
 道のりは険しかった。B・A・Rと手を組んで、少しずつHonda独自のグランプリ・チームへと形を変えていった。2004年、好成績を重ねてコンストラクターズ選手権2位に。そして2005年暮れ、B・A・R株を100%買い取り、名実ともにホンダ・レーシング・F1チームに。活動の本拠地はイギリス・ブラックリーに置きながら、日本のHonda本社、技術研究所の権限を拡大して来た。資金、スタッフ、技術などのリソースを投入して活動を活発化させた。
 2006年、2003年から同チームで走るジェンソン・バトンのチームメイトに、フェラーリで経験を積んできたルーベンス・バリチェロを抜擢、必勝体制を構築した。しかし、なかなか成績が付いてこなかった。開幕からドイツまでバトンもバリチェロも入賞は各々5回。もちろん優勝はなかった。
 それが、第13戦ハンガリー・グランプリでのバトン初優勝。待ちに待った勝利とはこのことだった。バリチェロも4位入賞して、バトンの勝利を祝い、コンストラクターズ・ポイントでチームの後押しをした。
 今回は、ホンダ・レーシング・F1チーム初優勝の直後にバリチェロとかわした会話を交えて、インタビューをまとめた。残念ながら、今回がこのコラム最後のインタビューになったが、優勝が間に合って本当によかったと思う。願うならば、その優勝がバリチェロのものであったなら・・・。

―― ハンガリー・グランプリ、4位入賞おめでとうございます。同時に、チームメイトのジェンソン・バトンが優勝です。あなたはホンダ・レーシング・F1チームに加入してまだ少ししか時間が経っていませんし、以前所属していたチームでは何度もチームメイトの優勝を経験しています。それでも、自分の所属するチームが優勝するということは素晴らしいことだと思います。
RB: その通りだね。まずは、ジェンソンに心からおめでとうと言いたい。彼は素晴らしいドライバーだが、これまでは不運もあったり、タイミングも悪かったりで、なかなか優勝までこぎつけられなかった。しかし、僕はずっとジェンソンのことを優勝する力を持ったドライバーとして認めてきて、そのことが今回の彼の勝利で証明されたことはとてもうれしい。ただし、僕もジェンソンと同様に常に優勝を狙ってレースを戦っているドライバーなのだから、僕がホンダ・レーシング・F1チームに初優勝を捧げられなかったことは残念だね。

―― Hondaは2000年に第3期といわれるF1グランプリ参戦を開始し、長いこと勝利に飢えていました。今回の勝利をどう思いますか。
RB: Hondaに関しては同郷の先輩だったアイルトン・セナから色々と話を聞いているよ。このチームに僕が加わった理由のひとつが、アイルトンの話によるところもあるんだ。Hondaが長い間勝利に渇望していたことも知っている。そのチームに参加して1年目に優勝を経験できたことは、とても誇りに思ってるよ。

―― ところであなたがホンダ・レーシング・F1チームに加入して半年が過ぎました。これまでを振り返り、今までの戦いぶりにはどんな感想を持っていますか。
RB: このチームで仕事をし始めたときは、厳しかった。正直言って、クルマに自分を合わせるのがとても難しかったんだ。しかし、それができ始めてからは、成績が付いてくるようになったんだ。そんな調子だったから、僕はますますの好成績を望んでいたのだけど、現実は、これまで我々が直面していたように、とても満足のいくもではなかった。プレッシャーはとても大きい。でも、そんな状況にしては、僕はチームの中でうまくやっている方だと思う。

―― クルマに自分を合わせられなかったということですが、それはどんなところですか。
RB: これまであちこちのインタビューに何度も答えたが、問題はブレーキだった。Honda RA106のブレーキに自分を合わせることが難しかったんだ。これは、僕のホームページも書いていることだけど。

―― でも、最近の数レースを見ていると成績が次第に上がってきています。今回のハンガリーでも4位に入りました。これはあなたがHonda RA106のブレーキ・システムに慣れてきたからではないですか。そう感じます。
RB: 成績は上がってきている。でも、まだ十分ではないよ。我々はそのために大変な量の仕事をしている。時間が不足しているとまでは思わないけどね。テストも繰り返しやっているし、新しいパーツもテストを重ねている。でも、現状は現状なんだ。もう少し我慢しなければいけないだろうね。

―― 他のミシュラン・ユーザーと比べるとどうですか、Hondaの現状は。
RB: 我々も成績は上がっている。クルマの性能がトップレベルと比べると、まだ十分ではないことはわかっているが、その性能を上げるためにテストを繰り返している。努力をしていないというわけではないんだ。

―― 先のアメリカ・グランプリでは、ミシュランはコンサバティブなタイヤを持ち込んだといわれています。でも、あなたは6位に入賞してしっかりとポイントを稼いだ。あなたはミシュラン・タイヤがコンサバティブだとは思いませんでしたか。
RB: 僕がインディアナポリスをミシュラン・タイヤで走ったのは今年が初めてだから、以前と比べる術がないんだ。だから、コンサバティブかどうかは判断できないね。ミシュランがどうだというのではなく、ブリヂストンが素晴らしい仕事をしたということだと思うよ。でも、我々にとってもインディアナポリスはまずまずだったと思う。予選は4番手となかなかよかったが、決勝レースはそれより下がって6位にしか入れなかった。もちろん、ポイント圏外でレースを終えるよりはよかったが、予選より下の成績ではね。

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