ROUND20

アブダビアブダビ ヤス・マリーナ・サーキット 2017.11.23(木)

2017 ABU DHABI GRAND PRIX - プレビュー

2017 ABU DHABI GRAND PRIX - プレビュー

Hondaは、FIAフォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第20戦アブダビGP(開催地:ヤス・マリーナ、11月24日~26日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。

※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称

コメント

長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
長谷川 祐介「いよいよ2017年シーズン最終戦、アブダビGPを迎えることになりました。このレースは、シーズン最後のレースというだけでなく、2015年から始まったMcLaren-Hondaとしての最後のレースにもなりますが、これまでと同じく、一人ひとりが目の前の仕事に焦点を当て、マシンから最大限のパフォーマンスを引き出すことに集中したいと思います。

この特別なレースをチームとしていいかたちで終わりたいというのは、全員が共通して持つ想いですし、そのために全力を尽くします。

今回レースが行われるヤス・マリーナ・サーキットは、90度コーナーが連続するストリートサーキットのような低速セクターが特徴のトラックです。エンジニアがセッティングに頭を悩ませるサーキットの一つですが、PUとしてはパワー、エネルギーマネージメントと燃費のバランスに配慮しながら、レースに向けた準備を進めていきます。

今シーズン、このチームのために力を注いでくれたチームのスタッフ全員に大変感謝しています。彼らのためにも、そしていつも熱い声援を送ってくれるファンのためにも、アブダビでは皆さんの記憶に残るような、McLaren-Hondaの名に恥じないレースをお見せできればと思っています」

フェルナンド・アロンソ
#FA14 MCL32-03
フェルナンド・アロンソ「シーズン最後の戦いとなりますが、アブダビはその舞台にふさわしい、素晴らしいサーキットです。最終戦らしい独特の雰囲気があり、シーズンを懸命に戦ってきたチームメンバーが、ウインターブレイクを前に、最終戦でいいパフォーマンスを見せようと意気込みます。ポジティブな結果で一年を終えようと全力を尽くすので、それが素晴らしいレースを作り上げるのだと思います。

ヤス・マリーナ・サーキットは、ブラジルよりも苦戦を強いられるかもしれません。インテルラゴスでの結果は予想以上でしたが、アブダビは厳しくなるのではと予想しています。もちろん、チーム全員が上位で最終戦を終えたいと願っており、MCL32のパフォーマンスを引き出すために懸命に取り組んでいます。このコースはオーバーテイクが難しいので、予選が重要になります。したがって、レースウイークのなるべく早い段階で正しいセットアップを見つけることが大切です。

夕暮れ時から夜にかけてのレースでシーズンを終えるのは本当に素晴らしい気分です。変化していくコンディションに合わせていくのも面白いですし、今年型のマシンでこのサーキットを走るのは、とても楽しいものになると思います。レースを楽しみにしていますし、チーム全員の一年間の努力に報いるため、力強い結果で終えられればと思います」

ストフェル・バンドーン
#SV2 MCL32-04
ストフェル・バンドーン「ここ数戦は初めて走るコースばかりでしたから、よく知っているサーキットでシーズンを終えられるのは私にとってはいいことです。ヤス・マリーナ・サーキットでは、テストでの走行やGP2で2勝を挙げるなど多く経験していて、素晴らしい思い出になっています。コースのレイアウト上、オーバーテイクはかなり難しいですが、F1マシンでこの難しいテクニカルサーキットを攻められるのを楽しみにしています。

GP2のレース時間が異なっていたので、太陽が沈んでいく中でのレースというのは、アブダビで経験していませんが、素晴らしい光景になるでしょう。このサーキットが好きですし、特別な雰囲気を持つグランプリです。オフを迎えるとともに来季へのスタートでもあり、シーズン最後という節目だという気持ちと週末の成果への期待が入り交じった、不思議な気分になります。

今年はいいことも悪いこともたくさんありました。私にとっては、厳しい序盤でしたが、シーズンが進むにつれてチームとともに懸命に取り組んだ成果が見えてきた一年でした。以前よりもマシンをうまく操れるようになってきましたし、後半戦での成長度合いは満足できるものだと思います。難しいシーズンでしたが、多くを学んだことで得るものはたくさんありましたし、来季どうなるかが楽しみです。まずは、少しでも上位でシーズンを終えられるよう、今週末も全力でプッシュしていきます」

エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
エリック・ブーリエ 「2017年の締めくくりとなるアブダビGPへ向かっています。チャンピオンシップで上位につけるような結果は伴いませんでしたが、今季我々がチームとして成し遂げてきた戦いを誇りに思います。それぞれのメンバーが、レースごとにパッケージを進化させるために絶え間なく努力してきました。今週末も例外ではなく、シーズン閉幕まですべてのセッションで全力を尽くします。

これまで、コース上でパッケージを評価し改善する機会をすべて活用し、多くのことを学んできましたから、今週末も同様に重要な時間です。2017年と18年のレギュレーションは変更点が少ないので、これまで収集した多くのデータが、シーズンオフの開発に役立ちますし、来季のパッケージを作っていく上で必要となる意思決定の判断材料になります。

チームを代表して、McLaren-Hondaに関わる全員が、希望と敬意を持ち、一丸となってアブダビへ乗り込むということを申し上げておきます。この3年間、一人ひとりが信じられないほどのハードワークを見せてくれましたし、いい時も悪い時も常に絶やさなかったコミットメントを、最後まで継続していきます。チーム全員が目指すところは一つ、懸命に取り組んでいいかたちでシーズンを終わるということです」

サーキット情報

名称ヤス・マリーナ・サーキット
初開催 2009年
優勝者 2016 ルイス・ハミルトン
2015 ニコ・ロズベルグ
2014 ルイス・ハミルトン

歴史

アブダビGPは、今年で9回目を迎えます。1200億円以上をかけて建設されたサーキットは、F1開催の素晴らしい舞台であり、地下道を通るピットレーンや、エアコン付きのガレージ、世界最大の常設照明システムなど、特徴的な箇所が多数あります。

カレンダー中5つしかない反時計回りのサーキットの一つで、高速コーナーの配置されたセクター1、ロングストレートのあるセクター2、低速セクションのセクター3と、特性の異なるセクターで構成されています。そして、F1唯一のトワイライトレースであることも見逃せません。

ヤス島のマリーナ沿いにコースが走り、日が暮れ行く中でレースが進むさまは、息を呑むほど美しい光景です。舗装に際しては、アスファルト用に英国・シュロップシャー州のベイストンヒルにある採石場から切り出された硬砂岩が輸入されています。

このヤス・マリーナ・サーキットが最終戦の開催地となるのは、6度目です。2010年には、4人のドライバーがタイトル獲得の可能性を持って最終戦を迎えました。フェルナンド・アロンソはランキング首位でこの大会に臨みましたが、7位に終わり、優勝したセバスチャン・ベッテルが逆転でチャンピオンの座を手にしました。

コース

全長 5.554㎞ ※カレンダー中7番目の長さ。
2016ポールポジション ルイス・ハミルトン 1分38秒755
2016ファステストラップ セバスチャン・ベッテル1分43秒729(43周目)
ラップレコード 1分40秒279 (セバスチャン・ベッテル、2009年)
エンジニアリング コース序盤の高速コーナーは、今季型マシンでは全開で抜けられることが予想されるため、エンジニアリング面では2本のロングストレートと終盤の低速コーナーに焦点が当てられる。21のコーナーのうち、6つが時速100㎞以下であり、低速時のトラクションが重要。また、タイヤ表面をオーバーヒートさせないようにも気を付けなければならない。
ドライビング 縁石の利用がカギ。高速コーナーであるターン3の出口にある縁石はポイントの一つで、シケインでもうまく使いたい。また、ターン19ではバリアにかなり接近して走らなければタイムは伸びない。コンディション変化への対応も求められる。日が沈む前後で温度がかなり異なるので、マシンバランスが大幅に変わってしまう。風向きも時間帯によって変化し、マシンパフォーマンスに影響を及ぼす。
マシンセットアップ ダウンフォースは中程度以上。直線でのスピードは必要だが、低速セクションでのトラクションも重要となる。
グリップレベル 中程度。路面はスムーズだが、砂漠から流れてくる砂によって滑りやすくなる箇所がある。
タイヤ ウルトラソフト(紫)、スーパーソフト(赤)、ソフト(黄) ※この組み合わせは今季10回目
ターン1までの距離 300m
最長ストレート 1200m ※ターン1へ向かう直線
トップスピード 時速320㎞(ターン8への進入時)
スロットル全開率 63%
ブレーキ負荷 高い。ブレーキングポイントは13カ所あり、一周のうちでブレーキを使用する割合は18%。
燃費 1周あたり1.80㎏を消費。カレンダー中でも比較的高め
ERSの影響 中程度。ERSのデプロイを低速コーナー出口で効果的に使用するのが重要だが、ブレーキングポイントが多いので回生する機会は多い。
ギアチェンジ 69回/1ラップ、3,740回/レース

レース

周回数 55ラップ
スタート時間 現地時間17時(日本時間22時)
グリッド ポールポジションはコース右側のレーシングライン上。ターン1は左コーナーだが、アウト側からの方がトラクションを多くかけられるので、ブレーキングゾーンで有利になる。
DRS ゾーンは2つ。ターン8と11へ向かうストレート。
ピットストップ 2ストップ戦略が定石。昨年のルイス・ハミルトン、2015年のニコ・ロズベルグはともに2ストップで優勝し、ともに10周と25周前後でピットインした。今季使用されている硬めのタイヤ特性から、1ストップの可能性もあるが、デグラデーション次第。
ピットレーン 360m。1回のストップでのタイムロスは約22秒。ピット出口のトンネルでクラッシュしないように注意が必要。
セーフティカー 出動率は40%。接触があるとすればシケインの場合が多く、低速でのクラッシュとなる。そのため、デブリが比較的少なく、セーフティカーの可能性も低くなる。
注目ポイント 日没時。ターン14と19は西向きで日が沈む方向にあるため、視界への影響がある。レース中わずかなタイミングではあるものの、ここはブラインドコーナーなので慎重な走行が必要。
見どころ トワイライトレースでは、すべての光景が美しく映える。エンジニア、ドライバーともに腕が試されるチャレンジングなレースだ。

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