ROUND17

アメリカアメリカ サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA) 2017.10.19(木)

2017 UNITED STATES GRAND PRIX - プレビュー

2017 UNITED STATES GRAND PRIX - プレビュー

Hondaは、FIAフォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第17戦USGP(開催地:オースティン、10月20日~22日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。

※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称

コメント

長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
長谷川 祐介「アジアでの連戦を終えたシーズンはここから終盤戦を迎えますが、次は南北アメリカ大陸での連戦に向かいます。

McLaren-Hondaとして最後のホームグランプリとなった鈴鹿は、我々にとってはほろ苦い結果になりました。週末を通してそれなりの速さを見せられていただけに、ストフェルの第2コーナーでの接触等の不運により、最終的にホームのファンの前でポイント獲得に至らなかったことは残念でした。ただ、フェルナンドが見せた最後まで諦めない走りは、先々のレースに向けてチーム全員に勇気を与えるものでした。

今週末のUSグランプリが行われるサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)は、2012年に作られた比較的新しいサーキットで、大きな高低差の中に、低速・中速・高速と、バリエーションに富んだコーナーを持つテクニカルなレイアウトです。特に第1セクターは、坂を駆け上がった先の第1コーナーの後に、シルバーストーンや鈴鹿に似たS字の高速コーナーが配されており、エキサイティングな展開が予想されるレースの中でも、見所の一つになると思います。パワーユニットとしては、コーナーが連続する箇所が多いので、特にドライバビリティーのセッティングが重要になってくると考えています。

今回のレースは、我々のマシン特性を考慮すると残り4戦の中でも、特に我々にとってポイント獲得のチャンスが大きいレースだと想定しており、高いモチベーションで臨みます」

フェルナンド・アロンソ
フェルナンド・アロンソ「我々のパッケージが本来持っているペースを発揮できず、フラストレーションのたまる2戦でしたが、米国へ向かうのは楽しみにしています。米国のファンはとても情熱的かつ熱狂的で、今年のインディ500参戦の際は素晴らしい時間を過ごしましたし、オースティンでの雰囲気も楽しみです。

COTAは本当に楽しいコースで、すべてのセクターが異なる性質を持っていますし、時間とともに変化する路面コンディションに合わせ、セットアップを変更していくという点で、ユニークなチャレンジになります。さらに、他よりもコース幅が広く、オーバーテイクのチャンスもあると思うので、日曜にそれができればと願っています。

米国では楽しい時間を過ごし、いい思い出がたくさんあります。オースティンでは、結果が出ない中でも続けてきた努力が実を結び、勢いが加速すればうれしいですし、持てる力をすべて出しきればポイント獲得が可能だと思います。さまざまな要素を考慮しなければならないですし、オースティンではここ数年トラック内外でかなり多くのドラマが生まれています。何が起こるかは分かりませんが、チャンスを逃さずに取り組めばいい結果が出ると前向きに考えています」

ストフェル・バンドーン
ストフェル・バンドーン「米国・メキシコの2連戦で、未経験のコースを走れるのをとても楽しみにしています。多くのドライバーからCOTAはさまざまな要素を持った人気のコースだという評判を聞いています。また、オースティンへはここ数年リザーブドライバーとして訪れていますが、とてもいい都市で、中心部のロケーションや、地元のレストランは素晴らしいです。

未経験のコースに行くのは、たしかに経験済みの場所で走るのとは違いますが、必要以上にナーバスになることはありません。どのグランプリでも、いつもと同じようにエンジニアと準備に取り組んでいますし、現実の世界で走ったことはなくとも、シミュレーターでは十分に走りこんでいます。ですから、金曜にはすぐセットアップに取り組めますし、できるだけ早くコースへ出たいと思います。

私にとっては、マレーシア、シンガポールとポジティブなレースが続いていましたが、日本ではスタートの不運により順位を下げてしまい、残念な結果になりました。

今回のオースティンは、エンジンパワーの影響度から見ると、私たちにとっては相性がよさそうですが、広い幅のコーナーはやっかいですし、カギは一周を通じてバランスを保てるセットアップを見つけることだと思います。オーバーテイクのチャンスも多くありそうですし、いい結果が得られればと思います」

エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
エリック・ブーリエ 「USグランプリは2012年にCOTAで開催されるようになって以来、とても評判が良く、今やF1カレンダーの中でも代表的なイベントになりつつあります。オースティンはすばらしい街で、ファンもチームも楽しめる要素がたくさんありますし、人々は素晴らしい雰囲気で迎えてくれます。

ドライバーにとっては、素晴らしいコースでの戦いが待っており、私も多くのファンと同様に新型マシンがロングストレートやコーナーセクションでどのような走りを見せるのか、楽しみで仕方ありません。上り坂を駆け上がって1コーナーへ向かっていくマシンの姿は、USグランプリを象徴する光景の一つと言えます。さまざまな要素を持つこのサーキットではいつも素晴らしいレースを見られますし、変わりやすい天候もレースを面白いものにしてくれると思います。

F1の主催者は米国の会社ですので、その“ホーム”で彼らがどんな企画を用意しているのか楽しみですし、エキサイティングで素晴らしい週末になると期待しています。米国のF1ファンは毎年増えているようにも感じます。オースティンの雰囲気はいつも最高で、温かく迎えてくれるので、どのチームも米国に来るのを楽しみにしています。ファンにも、ドライバーにとっても、COTAはレースをするのに最高の場所でしょう」

サーキット情報

名称サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)
初開催 2012年
優勝者 2016 ルイス・ハミルトン
2015 ルイス・ハミルトン
2014 ルイス・ハミルトン

歴史

USグランプリは、長く、さまざまな歴史を持つ大会です。1959年のカレンダー登場以来、10のサーキットで開催されてきましたが、F1開催を目的に設立されたのはCOTAが初めてです。McLarenの創立者、ブルース・マクラーレンは1959年の初回グランプリで優勝していますが、それ以降、1961年のフィル・ヒルや1978年のマリオ・アンドレッティといったチャンピオンの誕生もあり、米国でのF1ファンは急速に増加しました。

米国で唯一のF1開催であるだけでなく、コースは高速かつリズムが必要で、F1マシンの能力を存分に発揮できます。スパ・フランコルシャンよりも高速コーナーが多い一方で、ハンガロリンクよりも低速コーナーがあり、チームはセットアップに頭を悩ませますが、一周のうちにオーバーテイクポイントが数多くあるコースゆえ、レースは毎年見ごたえのあるものになります。

2015年には土曜日に大雨が降ってセッション中止となり、翌日に決勝レースと同日開催となるハプニングもありました。

McLarenはこれまでUSグランプリで12勝を挙げていますが、直近の勝利はCOTA初年度の2012年。予選2番手のルイス・ハミルトンが、スタートRed Bullのマーク・ウェバーにかわされて3番手に上がるも、そこから追い上げ、ウェバー、さらには同じくRed Bullのベッテルをオーバーテイクして優勝を飾りました。

ちなみに、今年は主催者がファンサービスとしてショーを開催し、ジャスティン・ティンバーレイクが土曜日に、スティービー・ワンダーが日曜日にコンサートを行います。

コース

全長 5.515㎞ ※カレンダー中9番目の長さ。
2016ポールポジション ルイス・ハミルトン 1分34秒999
2016ファステストラップ セバスチャン・ベッテル 1分39秒877(55周目)
ラップレコード 1分39秒347 (セバスチャン・ベッテル、2012年)
エンジニアリング 低速コーナーが多く、極限までマシンのダウンフォースを引き出すことが必要となる。しかし、2本のロングストレートとDRSゾーンも配置されているため、トップスピードも欠かせない。加えて、路面はかなりバンピーなので、ドライバーにとっては乗り心地が悪いサーキットである。
ドライビング 特にセクター1で、高速での方向転換が必要な箇所があるため、滑らかで正確なステアリングがカギ。そのため、ファステストラップを記録するのは一見、最も地味な走りのドライバーであることが多い。スタートからは急勾配の上り坂となり、ドライバーはその頂点にあるターン1でブレーキングして切り込まなければならないので、タイヤがロックされやすい。ターン11の出口からはサーキットで最も長いストレートが続くため、ドライバーにとってはこちらも重要なセクションとなる。
マシンセットアップ コース内に多くの低速コーナーとロングストレートが配置されているため、ダウンフォースに関しては中程度~最大の間で妥協点を見出す必要がある。路面は滑らかだが、年を重ねるごとにバンプが増えているので、車体をより高くすることが求められる。
グリップレベル 高い。アスファルトは2012年に敷設されたため、まだ路面が新しく、グリップ力は高い。今年は定期的にレースが開催されているので、多くのラバーが路面に付着しており、例年よりもさらに高いグリップが期待できる。
タイヤ ウルトラソフト(紫)、スーパーソフト(赤)、ソフト(黄) ※この組み合わせは今季8回目
ターン1までの距離 280m(カレンダー中最長はバルセロナの730m)
最長ストレート 1090m ※ターン12へ向かう直線
トップスピード 時速320㎞(ターン12への進入時)
スロットル全開率 63%
ブレーキ負荷 中程度。ブレーキを使うセクションは10箇所あるが、その内の4つが大きなブレーキングポイントとなっている。
燃費 1周あたり1.8㎏を消費。カレンダー中の平均程度。
ERSの影響 中程度。1ラップにつき、35%で使用する。
ギアチェンジ 54回/1ラップ、3,024回/レース

レース

周回数 56ラップ
スタート時間 現地時間14時(日本時間月曜午前4時)
グリッド ポールポジションは右側のレーシングライン上。反対側よりもグリップは高いが、ターン1は左コーナーのため、スタート直後にイン側をブロックすることが重要となる。
DRS ゾーンは2つ。ターン1とターン12へ向かうストレート上に配置されている。
戦略 ここ数年、このサーキットで優勝したドライバーの戦略は、11周目と31周目あたりでの2ストップ。しかし、今年ピレリは一段階ソフト側のコンパウンドを持ち込むので、セーフティカー導入がなければピット回数が増える可能性がある。
ピットレーン 385m。1回のストップでのタイムロスは約20秒。
セーフティカー 出動率は50%。これまでに多くの事故やアクシデントがあったが、コース幅が広く、マーシャルも優秀なので、セーフティカーの出動回数は減少している。
注目ポイント 今回のレースでは、伝説的なリングアナウンサーのマイケル・バッファーが全選手の紹介を行うため、ピットレーンが通常よりも15分早くオープン。レース前の興奮もお見逃しなく。
見どころ 毎年、多くのオーバーテイクが見られるサーキットで、最後の最後までどのドライバーが勝つか分からない激しいバトルが展開される。トラックは非常にチャレンジングで、今年はコーナリングスピードもさらに上がることが予想されるため、ドライバーにとっては身体的にも厳しいレースとなる。

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