ROUND14

シンガポールシンガポール マリーナ・ベイ・サーキット 2017.09.14(木)

2017 SINGAPORE GRAND PRIX - プレビュー

2017 SINGAPORE GRAND PRIX - プレビュー

Hondaは、FIAフォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第14戦シンガポールGP(開催地:マリーナ・ベイ、9月15日~17日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。

※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称

コメント

長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
長谷川 祐介「5月のスペインGPから始まったヨーロッパでの戦いを先日のイタリアGPで終え、最終戦に向けてアジア、アメリカ大陸、中東への遠征レースが、ここシンガポールを皮切りにスタートします。

東南アジア特有の暑さと湿気は、比較的涼しい欧州の気候に慣れたドライバーやチームメンバーには楽なものではありませんが、ライトアップされた美しい街並みや摩天楼の下を駆け抜けるマリーナ・ベイ・サーキットでのナイトレースは、だれもが楽しみにしているグランプリの一つです。

イタリアGPでのレース結果は非常に残念なものでしたが、高速サーキットのモンツァで、ある程度の速さを見せられたことは前向きに捉えています。また、今回のシンガポールGPは、前戦とは一転してタイトな低速コーナーが多いテクニカルなストリートサーキットです。同様の特徴を持つハンガリーでもいい結果を残せたので、我々にとってはポイントを獲得するための大きなチャンスだと考えています。マシンとPUのセットアップがカギになってきますが、シーズン終盤戦に向けていい流れを作るためにも、まずはここシンガポールでいい結果を残せればと思っています」

フェルナンド・アロンソ
#FA14 MCL32-05
フェルナンド・アロンソ「スパ、モンツァの連戦が厳しい戦いになることは分かっていましたが、2戦合計で3つのリタイアというのは残念でした。ただし、ポイント獲得にはつながらなかったものの、予想よりもいいペースを発揮することはできました。

ヨーロッパでのレースを終え、シーズン終盤戦となる遠征に気持ちを切り替えています。シンガポールは、そのフライアウェイ初戦としては最高の舞台です。ほかのサーキットよりも我々のパッケージに合っているので、いい結果が得られる大きなチャンスです。

コースは“東のモナコ"と言えるかもしれません。都市の中心部にある美しいサーキットで、雰囲気もすばらしいのです。ただ、高温多湿のタフな環境は、マシンとドライバーにとっては厳しいものになります。バンピーでタイトなコースには力を試されますが、うまく走れれば気分は最高で、本当に楽しいサーキットです。低速コーナーでのトラクションと、高いダウンフォースが求められるので、信頼性が確保できれば、間違いなく我々にチャンスがあるはずです」

ストフェル・バンドーン
#SV2 MCL32-04
ストフェル・バンドーン「シンガポールでのレース経験はありませんが、ここ数年チームに帯同していたので、レースウイークの流れは分かっています。(すべてがナイトセッションのため)ヨーロッパ時間に合わせて動き、眠りにつくのが午前6時というのは不思議な感じがしますが、それもこのグランプリが特別なものである一因だと思います。シンガポールはすばらしい都市なので、街中を見て回るのも楽しみですね。

未経験ではありますが、シンガポールは年間で最もワクワクするグランプリの一つです。ほかのレースとは全く違った経験になるでしょう。グランプリの雰囲気は独特で、照明の下、街の中心部でレースをするのは、とてもいい気分だと思います。レース時間はカレンダー中でも最長の部類に入るので、高温多湿の環境下でいつも以上にスタミナが必要になりますが、その準備はしっかりできています。

この2戦、チームとしては厳しい結果でしたが、私にとってはコース上で見せたパフォーマンスに勇気づけられた面もあります。いい結果で終えることはできませんでしたが、すべてのセッションでポジティブな手応えを得られました。今回は運が向いてくるはずですから、週末を通じてパッケージの競争力を最大化できればと思っています。そして、日曜のレースではいい位置でフィニッシュしたいです」

エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
エリック・ブーリエ 「シンガポールGPはシーズンの中でも主要なレースと言え、アジアラウンドでもとりわけ注目度が高いので、チーム全員が毎年楽しみにしています。湿度の高い環境で昼夜逆転生活を送り、照明の下で、壁に囲まれた厳しいレイアウトのコースを走るという、かなり独特なグランプリです。ファンの皆さんも、この素敵な街の中心地で最高のレースを見ることができるでしょう。 チームとそのパートナー、そしてファンの全員にとって、すばらしい光景が広がり、だれもがその体験を待ち焦がれています。カレンダーの中でもベストと言えるレースが生まれ、さまざまなドラマが見られるはずです。

ここ2戦は厳しい結果に終わりましたが、我々はこれからのことに気持ちを切り替えています。シンガポールは、過酷な市街地コースが我々のパッケージにマッチするので、一年の中でも最大のチャンスが訪れるサーキットの一つです。結果に影響を及ぼすようなペナルティーを受けないように懸命に取り組んできましたし、まだ確認できていませんが、モンツァでのストフェルのリタイアで、新たなパワーユニットのエレメントを使用しなくて済むように願っています。

シンガポールGPが10周年を迎えるのはすばらしい成果であり、ファンとチームが毎年楽しみになるような最高の環境を用意してくださっている主催者の皆さんに、お祝いを述べたいと思います。McLaren-Hondaは全力で臨み、前を行くライバルたちにできるだけ近づけるように頑張ります」

サーキット情報

名称マリーナ・ベイ・サーキット
初開催 2008年
優勝者 2016 ニコ・ロズベルグ
2015 セバスチャン・ベッテル
2014 ルイス・ハミルトン

歴史

シンガポールGPは、2008年より毎年開催され、今年で10周年を迎えます。F1唯一のナイトレースとして、現地時間の夜8時、日没の2時間後にスタート。サーキットは1500以上のランプによって照らされます。シンガポールの中心部で照明の中に浮かび上がったコースをマシンが駆け抜けるさまは、息をのむほど壮観です。

レース時間は毎年カレンダー中最長となり、過去5年間のうち3レースでFIAの定めた2時間ルールが適用され、スタート後2時間経過時点での周回でチェッカーフラッグが振られました。

開催地のマリーナ・ベイ・サーキットは年間で2番目に平均時速の低いコースですが、ドライバーへの身体的負担は最大となります。湿度80%にもかかわらずコックピット内は50℃を超え、23のコーナーを持つロングサーキットを走るため、ドライバーはレース中に体重が3㎏も減ってしまいます。

初開催となった2008年にはハプニングが続出。なかでも、“クラッシュゲート"として有名な、ルノーのネルソン・ピケ Jr.による故意のクラッシュと、当時フェラーリのフェリペ・マッサが給油中にピットアウトしてホースを引きちぎってしまった場面が話題を呼びました。

このシンガポールGPと、マレーシアGPの開催により、東南アジアでのF1人気が急速に高まっています。シンガポールのレースには多くの観客が詰めかけますが、その半数は海外からやってきます。ちなみに、シンガポールでは1961年と1973年にトムソンロード市街地コースで非選手権レースとしてグランプリが行われています。

McLarenは、シンガポールでこれまで1勝、2つのポールポジションとファステストラップ1回を記録しています。

コース

全長 5.065㎞ ※カレンダー中13番目の長さ。
2016ポールポジション ニコ・ロズベルグ 1分42秒584
2016ファステストラップ ダニエル・リカルド 1分47秒187(49周目)
ラップレコード 1分47秒187 (ダニエル・リカルド、2016年)
エンジニアリング マリーナ・ベイ・サーキットはバンピーでコーナーの多い市街地コースである上、気温が高いため、モナコ仕様をさらに強化したバージョンが持ち込まれる。
ドライビング ロングコーナーはごくわずか。一番多いのが90度コーナーで、ドライバーはステアリングを思いきり切れ込ませる。最も差がつくのはコーナーの入口と出口でいかにウオールに近づけるかだ。 また、ターン5の出口とターン7の入口が難所。この2カ所は特にバンピーでミスをしやすい。ターン5の出口ではパワーを抑えてクリーンに抜けることが重要。その先には9秒間フルスロットルになる最長のストレートが控えている。
マシンセットアップ グリップを高めるため、ダウンフォースを最大に設定。また、バンプや縁石を乗り越えるので、サスペンションを柔らかくする。
グリップレベル 低い。年1回しか使われないサーキットかつ普段は公道なので、金曜日のプラクティス開始時の路面は汚れていて滑りやすい。コース上にラバーが乗ってくると、ラップタイムは急速に向上するが、定期的ににわか雨が降り、ラバーを流してしまうことがある。
タイヤ ウルトラソフト(紫)、スーパーソフト(赤)、ソフト(黄) ※この組み合わせは今季7回目
ターン1までの距離 200m(カレンダー中最長はバルセロナの730m)
最長ストレート 832m ※ターン7へ向かう直線
トップスピード 時速305㎞(ターン1への進入時) 。最大のフルスロットル継続時間は9秒
スロットル全開率 47%
ブレーキ負荷 高い。ブレーキングポイントが16カ所あり、ブレーキ冷却が可能なストレートは少ない。
燃費 1周あたり1.9㎏を消費。ストップ&ゴー型サーキットのため、カレンダー中でも比較的高め。
ERSの影響 中程度。ERSの利用箇所は多いが、回生できるブレーキングポイントも多い。
ギアチェンジ 80回/1ラップ、4880回/レース

レース

周回数 61ラップ
スタート時間 現地時間20時(日本時間21時)
グリッド ターン1までの距離は短いが、レーシングライン上のグリップは大きいのでアドバンテージがある。ただし、ポールポジションはターン1でのアウト側に位置している。
DRS ゾーンは2つ。ターン1へ向かうストレートと、ターン7へ向かうストレート。
戦略 オーバーテイクが難しいコースなので、予選とレーススタートが非常に重要。勝敗は序盤の200mで決してしまうこともある。
ピットレーン 420m。1回のストップでのタイムロスは約29秒。制限速度時速60㎞となるピットレーンが長いので、1回のストップにおけるタイムロスはシーズン最大。
セーフティカー 出動率は100%。これまでのレースでは少なくとも1回は出動しているので、チームも戦略に組み込む重要な要素と見ている。
注目ポイント 雨が降るかどうか。これまで一度もウエットレースになったことはなく、雨が照明下での視界にどういう影響を与えるのか、はっきりしていない。 カギになるのはターン20・21のシケイン。ピット前ストレートに向かう右-左のシケインで、ここでのコントロールがその後のスピードの伸びを左右する。
見どころ ナイトレースの魅力はもちろんだが、チーム・ドライバーにとってはシーズンで最も過酷なグランプリの一つでもある。ドライバーはレース後に3㎏の体重減となるほどの環境で戦うが、今季はマシン変更によってさらにペースが上がることも予想されている。

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