ROUND13

イタリアイタリア モンツァ・サーキット 2017.08.31(木)

2017 ITALIAN GRAND PRIX - プレビュー

2017 ITALIAN GRAND PRIX - プレビュー

Hondaは、FIAフォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第13戦イタリアGP(開催地:モンツァ、9月1日~3日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。

※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称

コメント

長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
長谷川 祐介「タフな戦いとなったベルギーGPを終え、次はイタリアに向かいます。

今年のヨーロッパシリーズ最後の戦いの場となるモンツァは、長いF1の歴史の中でも、一度しかカレンダーから外れたことがなく、最もF1の開催回数が多い、クラシカルなトラックです。コースレイアウトはシンプルで、2つのシケインを除けばほとんどがストレートになっています。地形もフラットなために、カレンダーの中で平均速度が最も速い超高速サーキットとして知られています。

先週末ベルギーGPが行われたスパ・フランコルシャンも高速サーキットとして名高いですが、モンツァはそれ以上にハイスピードな戦いになるため、先週に続き厳しい戦いになることを予想しています。

そのような中でもポイント獲得を目指し、ベストな準備を進めたいと思います。

なお、今回のイタリアGPは、Hondaが勝利した1967年のイタリアGPから節目の50周年にあたります。そのレースでデビューしたRA300は、今年の3月に逝去された故ジョン・サーティース氏のドライブにより、Honda F1にとって2勝目となる貴重な勝利を挙げました。それを記念して、9月3日の決勝前にRA300のデモンストレーションを行う予定です。クラシカルなF1サウンドをぜひお楽しみいただければと思っています」

フェルナンド・アロンソ
#FA14 MCL32-03
フェルナンド・アロンソ「スパ同様に、モンツァも伝統あるサーキットであり、誰もがこうしたコースでレースが行われるのを嬉しく思っていると思います。今季のマシンは幅広でスピードが上がっており、ファステストラップの更新が見られるでしょうし、ストレートでは信じられないほどのハイスピードになるでしょうから、モンツァがこれまでとは違うコースのように見えるかもしれません。

最高速という点では、カレンダー中一番のコースです。ドライバーにとっては、美しい風景の中にあるストレートを駆け抜けタイトなシケインに飛び込み、度胸の試される高速コーナーもあるなど、素晴らしい気分で走ることができます。これまでも言及してきた通り、サーキット特性は我々のパッケージと相性がよくないので、厳しい戦いを強いられることになると思います。ただ、スパと同じようなパワーサーキットですが、異なる点も多くあります。全長の長いスパに対して、モンツァは短く、とても速いレース展開に感じます。

モンツァでなによりも素晴らしいのは、ファンの皆さんです。たとえ(地元フェラーリのカラーである)ティフォシレッドをまとっていなくても、ファンは力を与えてくれますし、レースやモータースポーツに対してものすごく情熱的です。イタリアGPは、多くの人がお気に入りに挙げますが、レースファンを魅了するサーキットで、その評判にふさわしいグランプリだと思います」

ストフェル・バンドーン
#SV2 MCL32-04
ストフェル・バンドーン「モンツァは本当にクールな場所です。これまでにフォーミュラ・ルノー3.5とGP2で経験し、両カテゴリで優勝していて、よく知っている場所ですし、いつも本当に楽しく走れます。ファンの皆さんは最高で、とても情熱的な声援を送ってくれるので、その熱狂に飲み込まれるのではないかと感じるほどです。

スパが厳しいレースだったのは明らかですが、ベルギーとイタリアは異なるレースだと気持ちを切り替えています。ストレート上では集団の中でペースを維持するのは厳しかったですし、モンツァでも同じ事象に直面すると思いますが、好結果を手にするチャンスをつかむべく、週末の間ハードにプッシュし続けます。

もちろん予選結果は重要ですが、レースでもペースを維持してポジションを保てるようにすることが必要です。スパでは、レースにいい影響が出せるように、予選でチーム一丸となって本当にいい仕事ができました。今週末は、さらに多くの取り組みができればと思います」

エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
エリック・ブーリエ 「イタリアGPは、レースファンにとって見逃せないレースです。フェルナンド、ストフェル、McLarenはそれぞれここで素晴らしい勝利を収めた経験があります。モンツァには多くの歴史があり、カレンダーの中でも特に重要な役割を担っており、偉大なドライバーたちと、情熱的なファンによって素晴らしいレースが繰り広げられます。

今回のレースでヨーロッパラウンドは最後となり、この後はアジアへの遠征です。スパとモンツァの連戦は素晴らしい組み合わせですが、我々にとっては厳しい戦いです。スパでは明らかに苦戦しましたし、モンツァにも過度な期待を抱いてはいませんが、いつも通りファイティングスピリットを持ってイタリアに向かい、チーム全員でできることに最大限取り組みます。

こうしたパワーサーキットで自信を持つためには、まだまだすべきことが多くあります。ただ、イタリアの情熱的なファンの皆さんの声援に触れるのを楽しみにしていますし、結果を追求するのはもちろんですが、2017年最後のヨーロッパでのレースを楽しみたいと思います」

サーキット情報

名称モンツァ・サーキット
初開催 1950年
優勝者 2016 ニコ・ロズベルグ

歴史

1922年に設立されたモンツァ・サーキットは、不開催は1980年の一度のみと、F1世界選手権の歴史とドラマを代表する開催地です。英国のブルックランズ、米国のインディアナポリスに続き、世界で3番目に建設された常設サーキットで、当初はオーバルコースとして建設されました。しかし、1961年に事故が起き、オーバルのバンクを使ったコースレイアウトが危険であるとして、1962年からはロードコースのみが使用されています。

そのバンクは今なお保存されており、旧式のグランドスタンドも多くが現存。90年以上の歴史を持つコースで最新技術の粋であるF1マシンが戦う、独特の雰囲気が魅力で、熱狂的なイタリアのファンには「La Pista Magica(イタリア語で“魔法のコース”)」という愛称で親しまれています。

全長5.793㎞のコースで、平均時速259㎞というカレンダー最速のレースが行われます。今季型のマシンでは最高速は変わると目されていますが、時速330㎞に達する箇所が4つあります。数々の名場面が生まれたモンツァですが、1971年のレースではトップから5位までが0.61秒差という大激戦に。優勝したピーター・ゲシンと2位のロニー・ピーターソンの差はわずか0.01秒。ゲシンにとってはこれが唯一のF1における勝利となりました。

McLarenは過去に10勝を挙げていますが、なかでも1968年のモンツァ初勝利が印象的です。チームオーナーでもあったブルース・マクラーレンがレースの半分近くをリードしましたが、オイル不足によりピットイン。しかし、チームメートのデニー・ハルムが代わってトップに立ち、チームにグランプリ2勝目をもたらしました。

ちなみに、モンツァではモナコ以上にポールポジションが重要で、直近18レース中13戦でポールシッターが優勝しています。

コース

全長 5.793㎞ ※カレンダー中6番目の長さ。
2016ポールポジション ルイス・ハミルトン 1分21秒135
2016ファステストラップ フェルナンド・アロンソ 1分25秒340(51周目)
ラップレコード 1分21 秒046 (ルーベンス・バリチェロ、2004年)
エンジニアリング ストレートスピードをいかに高められるか。ドラッグが増した今季型のマシンでは、ストレートエンドでのスピードが昨年比で時速15㎞程度落ちると見られ、速度を上げるためにチームがダウンフォースを削る姿が見られるだろう。ただし、ハードブレーキングが必要な場面で優位に立つためには、ブレーキングの安定性も重要である。
ドライビング ターン8~10の“アスカリ・シケイン”の攻略がタイムに大きな影響を与える。左-右-左の高速シケインで、それぞれのコーナーの頂点を的確にとらえ、ターン10出口での加速につなげなければならない。また、ダウンフォースが少ないマシンは暴れやすく、簡単にミスを引き起こす。グリップを得るためには縁石をすべて使う必要があるが、乗りすぎると安定性を欠くので注意が必要。さらに、ターン6~7の“レズモ”も難所。ターン7では時速250㎞に達し、アンダーステアに陥りやすいので、出口ではらまないように気を付けたい。
マシンセットアップ ダウンフォースを低く設定。ここモンツァとアゼルバイジャンのバクーが、シーズン中で最もダウンフォースを少なくするコースである。
グリップレベル 低い。路面は比較的古くて滑りやすい上、マシンのダウンフォースが削られているので、さらにグリップは減る。
タイヤ スーパーソフト(赤)、ソフト(黄)、ミディアム(白) ※この組み合わせは今季6回目
ターン1までの距離 380m(カレンダー中最長はバルセロナの730m)
最長ストレート 1.12km ※ターン1へ向かう直線
トップスピード 時速370㎞(ターン1への進入時) ※カレンダー中最速
スロットル全開率 75% ※カレンダー中最大
ブレーキ負荷 高い。ブレーキングポイントは6カ所しかないが、すべて高速からのハードブレーキングなので、ブレーキ温度が高くなりやすい。
燃費 1周あたり1.89㎏を消費。カレンダー中での平均に近い
ERSの影響 中程度。ロングストレートが4本あり、それぞれ時速330㎞以上に達するが、エネルギー回生ができるブレーキングポイントは少ない。
ギアチェンジ 46回/1ラップ、2438回/レース

レース

周回数 53ラップ
スタート時間 現地時間14時(日本時間21時)
グリッド モンツァは年間を通じてさまざまなレースが開催されているため、路面がクリーンで他のコースに比べてグリッドアドバンテージは少ない。ポールポジションがレーシングライン上に位置し、コースのアウト側にあたるため、よりクリーンな状態の路面である。
DRS ゾーンは2つ。ターン1へ向かうストレートと、ターン8へ向かうストレート。
ピットストップ 昨年1ストップ戦略を採用したチームで、ポイントを獲得したのはメルセデスのみ。両ドライバーともにレース距離の半分でピットインした。2ストップ戦略では、16周目と33周目のピットインが多かったが、今年はタイヤコンパウンドが硬めになっているので、ほとんどのマシンが1ストップを採用すると見られる。
ピットレーン 420m。1回のストップでのタイムロスは約21秒。ピットレーンへはストレートから進入するが、時速370㎞で走行するマシンに対してピットレーンの制限速度は時速80㎞と速度差が大きいため、ピットイン時のタイムロスの影響はシーズン中最大となる。
セーフティカー 出動率は45%と低い。
注目ポイント 最終コーナーとなるターン11の“パラボリカ”。180°の右コーナーで、出口に向けてカーブが緩くなっていくので、いかに早く加速し、後に続くコース最長のストレートでのスピードにつなげることが重要。
見どころ 伝統、最新技術、そして情熱的なイタリアファンの熱狂が交差する雰囲気。旧コースのバンクは多くの場所で見えるようになっており、その風景の中でファンがF1を愛するファンが大きな声援を送る。

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