FIA公式記者会見

2017年9月15日(金)

FIA公式記者会見


出席者:
森山 克英 執行役員 ブランド・コミュニケーション本部長
山本 雅史 モータースポーツ部長
フランツ・トスト Toro Rossoチーム代表

■FIAオフィシャルMCからの質問

Q1:森山さん、今日、マクラーレンとの離別およびトロ・ロッソとの提携が発表されました。Hondaの代表として、この件についてコメントしてもらえますか?

A1:Hondaのモータースポーツを統括しており、Hondaの代表としてここに出席させていただいている森山です。まず質問にお答えする前に、今回短期間で交渉をまとめるにあたりご協力をいただいたFIAおよびリバティメディアに感謝するとともに、このような場を与えてくれたことに感謝を申し上げたい。マクラーレンとは、高い志を掲げてパートナーシップを始めたが、目標に到達する前にこうして関係を終えることは非常に残念だ。また、その非常に大きな理由として我々のPUが目標としていたパフォーマンスに到達できなかったことがあることは非常に残念に思っている。
ただ、来年からトロ・ロッソという、有能な若手ドライバーを多く輩出してきた経験豊富で勢いのあるチームと、新たなスタートを切れることはとても光栄に感じている。また、Honda F1にとって新たなの幕開けになると思うし、今から来年の開幕を心待ちにしている。

Q2:森山さん、ここ数ヶ月、Hondaの役員会議で撤退を検討しているという噂が出ていたが、それは本当か?また、なぜ最終的にHondaはF1に残ることを選択したのか。

A2:HondaにとってF1は、非常に特別なものだ。創業者の本田宗一郎が参戦を夢に描いていたところから始まり、50年以上もの関わりを持っている。いまやHondaにとってF1は大きな企業文化であり、DNAである。確かに、今は非常に厳しいタイミングにあり、社内でも厳しい議論があったことは事実だ。誰もが現状で満足しているわけではなく、その苦境をどう脱するかと言うことについて議論したと言うのが事実で、状況を改善するためにどうするかということを議論してきた。よって、撤退と言うことは一言も出ていない。このような苦境にチャレンジして乗り越えることこそHondaのチャレンジングスピリットであると思っているし、ここで、しっかりチャレンジングスピリットを発揮することが大切なことで、来年のトップ3に加われるところまでのレベルを達成することが我々にとっての目標だ。

Q3:山本さん、あなたが実際にマクラーレンやトロ・ロッソとの交渉を行っていた人だと思うが、どのようなことが実際に起こっていたのかを教えて欲しい。

A3:今シーズン、信頼性とパフォーマンスの改善が目標に届かないなか、シーズン当初から、マクラーレンからはパートナーシップの解消の話が出ていた。ただ、Hondaとしては関係継続を望んでいたが、最終的にはマクラーレンと来年一緒にレースができないことは残念に思っている。
ただ、皆さんもご存知の通り、イタリアGP前後から時期的に厳しい状況になっていったのは事実で、その前後から今回の話が急速に進んだ。ご存知の方も多いかも知れないが、昨年のUS GP以降、レッドブルのヘルムート・マルコ氏とコミュニケーションを取る機会があり、日本でレッドブルカラーのピエール・ガスリー選手がスーパーフォーミュラに参加してくれている。そのような関係でマルコ氏とグランプリの際に時折彼と話す機会があり、イタリアGPの前後でトロ・ロッソの話をいただいた。
トストさんは日本に滞在したこともあり、日本の歴史を理解してくれていると思っており、トロ・ロッソも若手のいいチームであることを認識していて、今後トストさんのチームと一緒に仕事をすることを楽しみにしている。

Q4:山本さん、Hondaはここまでの3年間非常に厳しい時期を送っているが、トロ・ロッソとなら成功できると思うのはどのような背景からか。

A4:これからトロ・ロッソとは時間のない中、パートナーシップとしてはいい関係を築けると感じている。一つは、トロ・ロッソはF1に対して非常にピュアで、Hondaのレーシングスピリットに似ていると思っている。時間のない中、互いにコミュニケーションを良くして、来年に向けた準備を進めていきたい。

■以下、各メディアからの質問

Q5:山本さん、ここまでの3年間で、HondaとしてF1で何を学んだと思うか?

A5:私は昨年4月からこの仕事をしているが、F1を通じて最も思うことが、世界トップレベルのカテゴリーであることで、チームと関係を構築していくことが国内のレースと比べて非常に難しいと感じている。特にマニュファクチャラーとしては、最先端のテクノロジーの部分が非常に難しい、Hondaとして参戦が1年遅れたことで後れを取っているというところで、いま必死で挽回しようとしている。そういったところではテクノロジーも非常に高度で難しいということを感じている。

Q6:山本さん、Hondaは過去3年のF1で成功を収めていないが、どうして次の3年で成功が出来るという自信があるのか?

A6:自信があると言うことではなく、話し合いの中で、トストさんとは、先ほど言ったようにモータースポーツに対する姿勢がHondaと非常に近いというところがあり、そういった関係で今回レギュレーション変更前の2020年までという契約を勧めた。

Q7:森山さん、Hondaはトロ・ロッソをパートナーとして、今後3年を戦うことになるわけだが、日本の他メーカーがF1に参戦してもらうために、F1は何をしなければいけないと思うか?

A7:今、日本ではF1はTVの地上波で放送されていない。衛星放送を通じて有料で見られるという環境なので、そこが一番大きなところだと思う。Hondaとしてもプロモーション活動を強化しながら、しっかりとお客様にリーチしなくてはいけないと思っている。

Q8:山本さん、マクラーレン・アプライド・テクノロジーズ(MAT)がF1チームに対してハイブリッドの一部の技術の提供を行ってきたと思うが、その関係は継続するのか?

A8:MATとは関係が継続する。ただ、現在、Hondaとしてほとんどのパーツを自前で作れるようにしようと動いているので、関係は少し続くが、いずれは自前でできるようにしようと思っている。

Q9:森山さん、Hondaの社長は、かつての位置に戻るためにはもっとリスクをとらなければいけないといっていた。それがF1で抱えているHondaの問題の一つだと思うか?

A9:そんなことはないと思っている。今回のマクラーレンとのコラボレーションは、参戦前の空白期間があって、そのときの遅れを取り戻すことに非常に時間がかかったというのが正直な認識だ。その中で、その遅れを一気に取り戻そうということで、かなり大掛かりに資源を投入したと言うところはあるので、リスクという部分で言えば、かなりF1に投入していると言える。実際に、すばやいキャッチアップはできていると思っているが、さらに努力が必要だと思っている。

Q10:Hondaが多額の資金をマクラーレンに投資していたと言うことはよく知られていることだ。この資金はトロ・ロッソに行くことになるのか?

A10:色々なネットニュースを見ているが、トロ・ロッソとは非常にいい関係を構築できると思っている。多額のお金を払っているとか、そういうことはない。

Q11:山本さん、Hondaはトロ・ロッソを買収するという噂があったが、将来的にそのようなことは起こりうるのか?

A11:私もネットニュースを見て初めて知って驚いたが、Hondaの中でそのようなことを議論したことはないし、検討していることも全くない。トロ・ロッソとは非常にいい関係にあり、彼らの強いところと我々の強いところをうまくコラボレーションして、来年良いスタートが切れるように、いま努力しているところだ。楽しみにしている。

Q12:山本さん、2019年にレッドブルにPUを供給するのか?

A12:まずは2018年にトロ・ロッソと精一杯やりきることを大前提にしている。そういう機会があればいいかなとは思っているが、今はトラック上でベストなパフォーマンスを出すことに集中している。

Q13:山本さん、過去ではHondaのF1は常に技術の実験室だった。だが、2000年代にはマーケティング的な色合いが強くなった。いまのHondaにとっては、マーケティングとエンジニアリング、どちらなのか。

A13:Hondaという会社は、モータースポーツがDNAなので、モータースポーツのウェイトや、製品のウェイトというよりかは、それぞれの部署がそれぞれの役割をレーシングスピリット感覚で仕事をしているというのがHondaだと思っている。その意味では、どこにウェイトをおいているというより、常にチャレンジする目標値を達成するために従業員一人ひとりが力を合わせてやっている。

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