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| ロータスへのエンジン供給を土壇場でキャンセルされ、Hondaはシャシーを自製して独自の道を歩むことに。チャップマンが扱いかねた?横置きエンジンのマシンは、現場でも注目の的だった。
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| (佐野彰一×高木理恵) |
HondaのF1計画は、スタートからさまざまな波乱があった。
な、なんでこんなことになってしまうの〜?と、並みの人間だったらF1参戦を諦めてしまうようなデキゴトさえも……。
――佐野さん、60年代の第一期Hondaは、エンジンも車体も全部自前で……という参戦でしたけど、でも最初Hondaは、エンジン・サプライヤーとしてF1にかかわろうとしていたとも聞いています。どこで、どうプランが変わったのでしょう?
「はじめは、ロータス25の一台にHondaエンジンを載せるはずだったんです。この話は、ロータス・チームを率いるコリン・チャップマンから直接オファーがあり、Hondaとしてもやる気を出していました。この交渉のときチャップマンは、あの名ドライバー、ジム・クラークを連れて来日したと聞いています」
――ロータスといえば名門ですが、それを率いていたというチャップマンさんも、きっとすごい方なんでしょうね?
「そう、チャップマンは、チームの監督として、そして組織全体のマネージャーとして、さらにデザイナーとしても非常に優れているという、希有な人でした。
技術的な意味でもアイデアマンで、斬新なことをいろいろと試み、そして単に試みるだけでなくて成功もしました。F1の進歩にも、大いに貢献しましたね。私も尊敬しています」
――佐野さんもそうおっしゃって、そして当時のHondaのみなさんも張り切っていたのに、でも、ロータスとは結局いっしょにやっていませんよね?
「あのね、私は、チャップマンは『逃げた』と思う!(笑)」
――エッ、逃げた!?
「12気筒、そして横置きというあのHondaエンジンを見て、これは扱えないとして逃げたんじゃないか? 私はいまでも、こう思っています。
もうチャップマンはこの世にいないから、本当のところは聞けません。でも、生きていたとしても、正直には答えないでしょうけど(笑)」
――エンジンを載せることができないから、Hondaから去っていった……?
「ええ。さすがのチャップマンも、あれ(横置き12気筒)には参ったんじゃないか。それと、2カーを走らせるとして、もしHondaエンジンを搭載すると、そのうちの一台のエンジンが、ほかとあまりにも違うことになる。チームの監督として、こういうことも考えたと思います」
――でも、そのエンジンを積んだマシンが、のちに、Honda F1としてサーキットに登場してくるわけですよね?
「これはHondaのメカニックの人から聞いた話なんですが、参戦して一戦目のとき、チャップマンがHondaマシンの前に座り込んで、ジーッと長い間見ていたそうです」
――ウワー、何かすごいお話……!
「Hondaはチャップマンとロータスに、マウントなしの裸の状態で、エンジンのモックアップを送っていました。そしてHondaは、エンジンマウントを取り付けるためのパーツを作ってくれ、とロータス側に頼んでいた。その返事が、結局どうだったのかは、よくわからないんですが。
よし、わかった……ということなら、彼らとしても、Hondaエンジンを搭載する気はあったということになりますよね。
ただ、私が車体を作るという段になって、(Hondaの)エンジン屋さんから、こういうブラケットがあるよという話はまったくありませんでした。最初にブラケットの位置を決めたのは、実は私でしたから。
もしロータスが、あのエンジンを積もうとして、いろいろやってみていて、そのための部品があったなら、Hondaも私に、それを使えとか、こんなものがあるぞといってきたと思う。
でも、私は、ただ裸のエンジンを渡されただけでした。
――佐野さんだけが、あの横置きエンジンをF1マシンに載せることができた? あのロータスが諦めたことを?
「ふふ、エンジンの搭載だけは、(チャップマンに)私が勝ったかな?(笑)」
こうして佐野さんのお話をうかがっていると、ロータスは結局、あのエンジンを積むことに対してのトライさえしなかったように思えます。
現代のF1でいうと“ロン・デニス+ジャン・トッド+ someone ”みたいな(違うかな?)スーパーマンのコリン・チャップマンにとっても、あのエンジンを搭載したF1マシンを作るというのは、不可能に近いことだったのかもしれません。
そして、チャップマン&ロータスから、Hondaエンジンを使えなくなったという電報がHondaに届きます。それは、F1シーズン開幕のたった3ヵ月前のことでした。
でもHondaは、その年のシリーズに、ちゃんと参加しています。
そう、ここからのHondaスピリットがすごいのです!
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