ROUND 01
フランス
ボルドール24時間耐久レース
ポールリカール・サーキット
2016.09.17(土)・18(日)・決勝
2016-2017FIM世界耐久選手権(EWC)シリーズの開幕戦、ボルドール24時間耐久レースが、フランス南部・マルセイユ近郊のポールリカール・サーキットで開催されました。
今シーズンからEWCのフォーマットは大きく変更。この9月の開幕戦を皮切りに、2017年の7月まで全6戦のシーズンが予定されており、その最終戦は日本・鈴鹿サーキットで行われる鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)となります。
今大会にHonda CBR1000RRを駆って参戦するのは、全55チーム中4チーム。優勝争いの中心と目されるのは2チームで、欧州が拠点で2016シーズン総合4位の#111 Honda Endurance Racing(フリアン・ダ・コスタ/セバスティアン・ジンバート/フレディ・フォレイ/ステファン・マーサー)と、鈴鹿8耐で過去3度の優勝を誇り、昨年から新たな挑戦としてEWCへ参戦を開始した#5 F.C.C. TSR Honda(伊藤真一/ダミアン・カドリン/渡辺一馬/アルトゥーロ・ティゾン)。さらにこのほか、プライベーターチームを対象に行われるインディペンデント・トロフィーを争う#41 RAC 41 CBO(シプリアン・シュミット/ピエール・イヴ・ビアン/ガエタン・グージェ)、同トロフィーに参加し改造範囲の狭いレギュレーションのSSTクラスで戦う#26 Zuff Racing Team(ケヴィン・ジュフュレ/ヴァンサン・バックリン/アドリアン・ピテット/バーナード・バリー)という顔ぶれがそろいました。
9月15日(木)から始まったレースウイークでは、木曜日と金曜日の2日間でフリー走行と公式予選、土曜日から日曜日にかけて24時間の決勝レースというスケジュール。予選方式も鈴鹿8耐とは異なり、各ライダーのセッションベストタイムの平均でグリッドが決定するルールが採用されています。フリー走行で入念な準備を行った上で2日間の予選に臨んだ各チームは、順調な仕上がりを見せ、#5 F.C.C. TSR Hondaが4番手、#111 Honda Endurance Racingが5番手と上位グリッドを獲得。#41 RAC 41 CBOは26番手、#26 Zuff Racing Teamは35番手からのスタートとなりました。
9月17日(土)の15時、ライダーがマシンへ駆け寄ってエンジンを始動させるル・マン式スタートで、24時間という長い戦いの火ぶたが切って落とされました。
#111 Honda Endurance Racingのスタートライダーはフォレイ。好スタートをみせ、トップ集団の中でレースを進めます。一方、#5 F.C.C. TSR Hondaの渡辺はマシンの始動で出遅れ、20番手付近までポジションを落としてしまいます。#41 RAC 41 CBO、#26 Zuff Racing Teamは大きな波乱もなく、ともにグリッド順位を守りながら順調なスタートを切りました。
渡辺は遅れを取り戻すべく序盤から積極的に順位を上げ、9番手まで回復して次のカドリンへマシンを託します。そこから伊藤へとバトンが渡り、2人の走行で5番手までポジションアップ。好調な走りをみせた#111 Honda Endurance Racingは、フォレイの次に走行を担当したダ・コスタが2番手までポジションを上げ、それを受け継いだジンバートも3番手をキープします。
スプリントレースと異なり、24時間レースでは、マシンの不具合発生やセーフティカーの導入など、さまざまなトラブルが起こります。今回も4度のセーフティカーが入りましたが、#5 F.C.C. TSR Hondaはそのタイミングを上手く利用し、ピットインして不調のあったパーツの交換を行いながら、6番手を維持して周回。2~3番手を走行していた#111 Honda Endurance Racingは、約7時間が経過したころにダ・コスタが転倒。しかし、幸いにもライダー・マシンともに問題は少なく、すぐにピットへ戻り、修復作業に取り掛かりました。これには約25分を要しましたが、19番手でレースへ復帰します。
レースが進み深夜の時間帯になっても、ゴールを見据えてさまざまな戦略を繰り広げる各チーム。#5 F.C.C. TSR Hondaはあえてピット作業に時間を割いてブレーキキャリパーの交換などを行い、確実に完走できる体制を整えるとともに、ライダーの担当時間も見直しながらレースを進めます。渡辺は自ら志願して2スティント連続で走行すると、他ライダーの負担を軽減するだけでなく、ラップタイムも速いペースを刻み、大きな貢献を見せます。過去にロードレース世界選手権で活躍し、今大会で注目を集めていた伊藤も、49歳という年齢を感じさせない走りを披露し、チームは5番手をキープ。
#111 Honda Endurance Racingは転倒後にプッシュを続け、16時間経過時点で11番手までポジションを回復。トップ10入りをうかがえるところまでばん回しました。しかし、残り約3時間30分というところで、ジンバートがマシンの不調を訴えてピットイン。約30分後にマシンの修復を終えてコースへ戻りますが、再び1周でピットへ。問題はギアボックスにあり、解決が難しいと判断したチームは、ゴールまで3時間となったところでリタイアを決断しました。
ゴール目前にしてトラブルが発生するチームも見られる中、#5 F.C.C. TSR Hondaは、チェッカーまで確実に走りきることを第一に、安定してペースを刻みながら順位をキープ。24時間で674周を記録し、5位入賞を果たしました。その他2チームも無事に完走。#41 RAC 41 CBOは16位、#26 Zuff Racing Teamは19位で、ともにポイント獲得となりました。
藤井正和|#5 F.C.C. TSR Honda 総監督(5位)
「5位という結果ではありますが、『やった』という実感があり、今はすごくうれしいです。生意気に聞こえるかもしれませんが、日本では勝って当たり前というようなイメージがあるくらいなのに、このレースでは5位という結果でも、最後まで走りきれたということが、こんなにうれしいものなのかと感じています。それだけハードなことをやった結果だと思いますし、これからもっと挑戦していきたいと思います」
渡辺一馬|#5 F.C.C. TSR Honda(5位)
「無事にボルドール24時間を完走できました。5位という結果は正直悔しいです。まず、スタートでトップから大きく遅れてしまったことが敗因の一つかと思います。ただ、ナイトセッションでもいいペースで走ることができましたし、深夜のスティントでは2連続で走るという経験もしました。ラップダウンではあったものの、トップのチームと競ったときにそん色ない走りができたことなど、全体的にはいいレースができたのではないかと思います。勝てなかったのは悔しいですが、次にまたいい走りをしてがんばりたいと思います。本当に応援ありがとうございました」
ダミアン・カドリン|#5 F.C.C. TSR Honda(5位)
「5位という結果が残せて、いいシーズンのスタートが切れたと思います。もちろん表彰台は狙っていましたが、序盤から10以上ポジションを上げられたのはよかったです。ウイークを通して、いいスピードがありましたし、チームはすばらしい仕事をしてくれたと思います。そして、私にとってのレジェンドである伊藤真一さんは、49歳とは思えないものすごい走りをみせてくれました。長いシーズンの開幕戦におけるこの結果に、とても満足しています」
伊藤真一|#5 F.C.C. TSR Honda(5位)
「初めての24時間レースでしたが、すごく楽しめましたし、久々のレースでよく走れたのではないかと思います。渡辺選手ががんばってくれて、なんとか完走することができました。やはりレースは楽しいです。またこういう機会があれば、TSRとともにまたレースをしたいです。今日の5位はみんなでがんばった結果。最終戦の鈴鹿8耐まで、EWCのチャンピオンを目指して、チームにはがんばってほしいと思います」
フレディ・フォレイ|#111 Honda Endurance Racing(34位)
「リタイアという結果は本当に残念です。スタートの段階ではとてもいいフィーリングで、トップグループで戦えるペースがありました。今日は表彰台に上れると確信していたのですが、なにが起きるのか分からないのが耐久レースです。ただ、昨シーズンから大幅に向上できたと思いますし、来年に目を向けて、このペースを維持しながら戦闘力を保っていかなければなりません。今日は完走できなかったことで貴重なポイントを得られなかったので、第2戦ではこの強さを持続させて、なるべく多くのポイントを獲得する必要があります」
フリアン・ダ・コスタ|#111 Honda Endurance Racing(34位)
「完走できなかったのは本当に残念です。少しフロントに課題があり、夜中に大きな転倒を喫してしまいました。幸いにも私は無事でしたが、マシンは多くのダメージを負ってしまいました。チームはなるべく早くコースへ復帰させようと努力してくれたことに感謝しています。終盤で問題が起きてしまったことにはがっかりしていますが、これがレースで、だれにでも起きうることです。それが今日は私たちに起きたのです。EWCのタイトルを獲得するため、来年はさらに強くなって戻ってきます」
セバスティアン・ジンバート|#111 Honda Endurance Racing(34位)
「新シーズンの開幕戦における結果は、私たちが望んでいたものではなく、満足できませんし、本当にがっかりしています。スタートがよく、その後いいペースで走ることができて先頭集団に追いつけそうだったので、フリアンの転倒後でも、マシントラブルがなければ7位にはなれたと思います。来年の第2戦に向けてやるべきことをしっかりとやり、多くのポイントを獲得したいです」
順位 | No. | チーム | ライダー | マシン | 周回数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | Suzuki Endurance Racing Team | V.フィリップ A.デラール E.マッソン | スズキ | 687 |
2 | 11 | SRC Kawasaki | G.ルブラン R.ドゥ・プニエ F.フォーレ | カワサキ | 678 |
3 | 10 | TRICK STAR Racing | E.ニゴン 出口修 井筒仁康 | カワサキ | 676 |
4 | 14 | MACO RACING Team | G.ジュノー A.ドス・サントス M.ジェルマン | ヤマハ | 675 |
5 | 5 | F.C.C. TSR Honda | 伊藤真一 ダミアン・カドリン 渡辺一馬 アルトゥーロ・ティゾン | Honda | 674 |
6 | 96 | MOTO AIN CRT | H.クレール A.マスボー L.ジェラルディ | ヤマハ | 669 |
16 | 41 | RAC 41 CBO | シプリアン・シュミット ピエール・イヴ・ビアン ガエタン・グージェ | Honda | 649 |
19 | 26 | Zuff Racing Team | ケヴィン・ジュフュレ ヴァンサン・バックリン アドリアン・ピテット バーナード・バリー | Honda | 631 |
34 | 111 | Honda Endurance Racing | フリアン・ダ・コスタ セバスティアン・ジンバート フレディ・フォレイ ステファン・マーサー | Honda | 567 |
順位 | チーム | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|
- | 1 | Suzuki Endurance Racing Team | スズキ | 60 |
- | 2 | SRC Kawasaki | カワサキ | 50 |
- | 3 | EVA TRICK STAR Racing | カワサキ | 44 |
- | 4 | MACO RACING Team | ヤマハ | 37 |
- | 5 | F.C.C. TSR Honda | Honda | 32 |
- | 6 | MOTO AIN CRT | ヤマハ | 26 |
- | 18 | RAC 41 CBO | Honda | 5 |
- | 21 | Zuff Racing Team | Honda | 2 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | カワサキ | 61 |
- | 2 | スズキ | 48 |
- | 3 | ヤマハ | 43 |
- | 4 | Honda | 26 |
- | 5 | BMW | 11 |